2021/08/16

PCメンテナンス雑記:簡易水冷の冷却液交換補充

 先日、毎度毎度一年以上サボっていたBTOデスクトップPCの内部清掃を決行した。
 グラボ外したらヒートシンクにホコリがめっちゃ沈着していて泣く泣くファンまで外す羽目になったものの、ノウハウは以前の清掃時に得ていたので、清掃自体は割りかしテキパキ進められた。
 仕上げにホコリ予防として、予め散々ストックしておいたエアコンや換気扇用の外付けフィルターの切れっ端をケースの穴やらスリットやらに貼り付け、その後ケーブル類を再接続。取り敢えずファンが正常に回るか確認する為に、パネルを一枚外したまま電源を投入。……ファンの回転を確認。よっしゃ清掃終了――――

 ――――とは行かなかったんだなぁ、コレが。

 よーく動作音を聴いていると、ファンの回り方が妙に速過ぎる。しかも今まで聞いた事が無い音が混じっている。
 何じゃコレ?と思いつつWindowsを起動し、デスクトップ右上に固定してあるハードウェアモニターのウィジェットを見ると、

「――ちょ、何やこのクソ高いCPU温度……!?」

 平時、高くても60℃未満には収まるはずのCPU温度が80℃オーバーまで上昇していて滅茶苦茶ビビりまくる。慌ててPCをシャットダウン。
 何が起きた?!、とむっちゃ焦りながらUEFI画面を起動すると、……今度はCPU温度が100℃まで一気に上昇していってしまい、再び急いでシャットダウン。

「(CPUクーラーがマトモに機能しなくなってるのか?? いやファンはちゃんと回ってるしUEFI画面でもちゃんと回転数出てたよな? ……………………何で????(憔悴))」

 流石にこのままデスクトップPCを使うことはとても出来ないので、ノートPCとスマホを用いてトラブルシューティング。
 CPUクーラー、それも我がBTOデスクトップPCに使用されている「簡易水冷(若しくは一体型水冷)」をキーワードに、冷えない原因を調べてみた。

 ……原因はすぐにアタリが付いた。
 「冷却液(クーラント)の不足」である。

 簡易水冷は基本的に密閉されたパッケージで提供される「メンテナンスフリー」のパーツだが、それでも長期間の使用によって、封入された冷却液が徐々に揮発して減少していくものらしい。そんで揮発による冷却液減少でCPUをちゃんと冷やせなくなったら製品寿命で御役御免、と。
 ……言われてみれば先の内部清掃時、水冷のラジエーターをケースから外したり付け直したりする際、内部からやたらじゃぶじゃぶ音がしていたような。満杯ギリギリ、とまでは言わないが、冷却液をそれなりの量しっかり充填出来ているならもうちょっと音が大人しくても良さそうな風情ではあった。
 因みに簡易水冷の寿命は凡そ五年前後だとか。……そして自分のデスクトップPCは購入から丸五年が経過し既に六年目に突入している。…………嗚呼、成程ね…………(溜息

 尚、冷却液の不足以外だと「CPUグリスの劣化」という原因も考えられたが、実際にグリスの塗り直しを行っても症状の好転が見られなかったので、この線は無しに。

 異常の原因に思い当たるフシがあるとは言え、何分初めて体験する事例である。このまま即座に必要な物々を買い揃え始めるのは勇み足過ぎんか?と躊躇われたので、一度マシンの購入店にHP上のフォームから問い合わせてみた。……そして後日来た返事に曰く「その様子だと恐らく冷却液不足っぽい」。つまり此方の予想通りらしい。さいでっか…
 そんな訳で購入店からめでたく御墨付?を貰えたので、改めてメンテナンスに必要な物品の買い揃えを開始。

 先ずは交換用の冷却液だが、

・CORSAIR Hydro X Series XL8 Performance Coolant Clear

 ……コレを使うことに決めた。

 今回冷却液の補充を試みた簡易水冷「Fractal Design Kelvin S24」だが、補充用冷却液の指定が全く無く、メーカーHPを見ても冷却液を扱っている様子は無かった。
 Kelvin S24の場合、所謂「本格水冷」のメーカーとして有名な「Alphacool」と組んで作られた製品らしいので、Alphacoolの冷却液が手に入れば間違いないか?と考えたものの、在庫が無かったり適正価格で買えなかったりしたので流石に断念。

 何か良さ気な冷却液はないか、と色々探して見付かったのが上述したCORSAIRの製品。銅・真鍮製パーツが使用された水冷システムに最適化された冷却液なんだとか。

 簡易水冷はCPUと直接熱を遣り取りする「水枕(ウォーターブロック)」こそ銅製の機種が殆どだが、その一方で温められた冷却液を冷やす為のラジエーターはアルミ製であることが多い。そしてこの「銅とアルミ」という組み合わせは二種の金属間の電位差による「電蝕」が生じやすいのが玉に瑕だったりする。(※高校化学の「イオン化傾向」や「電池の原理」を参照)
 しかし、Kelvin S24は簡易水冷にしては珍しくラジエーターが銅製で、更に水枕/ポンプ部とラジエーターを繋ぐチューブの末端に本格水冷と同規格の真鍮製フィッティングを用いるなど、やや本格水冷寄りの作りをしている。更に言えば、そもそも冷却液の交換を考慮していない設計であることが普通の簡易水冷にあって、冷却液の補充/排出口があるという「メンテナンス可能」な構造を採っているのが大変珍しい。

 上述のCORSAIR製冷却液をチョイスした最大の理由がコレ。「銅・真鍮製パーツ向け」なら、ラジエーターが銅製のKelvin S24には正にうってつけじゃん、と。

 他に買い揃えたモノは、

・200mLビーカー
・漏斗
・洗浄びん:マシンのメーカーから冷却液補充時に使う事をオススメされた
・シリンジ
・CPUグリス:PC購入時に付属していたものが足りなくなった時の保険
・精製水:古い冷却液の排出後に内部をすすぐ為

 ……こんなトコ。
 冷却液も込で大体7k強のお買い物と相成り申した。

 生憎と平日は作業時間を確保出来そうに無く、週末の土曜におっ始めることを決めて、それまでに上述の物々を通販で発注し受取。
 そして迎えた土曜。予め部屋を掃除し、作業スペースを確保してから、作業開始。

 マシンからケーブルを全部引っこ抜いて作業台に置き、先ずはCPUクーラー固定用のバックプレートをガムテでしっかり固定。……コレやっとかんと後で水枕/ポンプ部を再び取り付ける際にプレートが脱落してややこしいことになっちまうからなー……
 バックプレートを固定したらケースを横向きに寝かせて、CPUクーラーを水枕/ポンプ部→ラジエーターとケースから外していく。ついでに作業スペースの確保としてグラボも外す。
 適当な容器(使わなくなって死蔵していた古い大きめのタッパーを使用)にポリ袋を被せて、ティッシュやらキッチンペーパーやらを丸めてポイポイ放り込み、廃液処理の準備。
 CPUクーラーの水枕に付着しているグリスを一度全て拭い綺麗にして、M/B接続用ケーブルが作業時の邪魔にならないよう束ねてテープで固定。
 作業台に新聞紙を敷き、廃液用容器を置いて、補充用冷却液とすすぎ用精製水、洗浄びんをスタンバイ。液が垂れたり溢れたりした時の対策として適当な大きさにカットしたキッチンペーパーを適量準備。

 此処迄御膳立てしたところで、ようやく水枕/ポンプ部の冷却液補充/排出口を開封。
 垂れた液が水枕に付着しないよう向きを考慮しつつ、廃液用容器の上でひっくり返し、古い冷却液を排出(※1)。ラジエーターも持ち上げてよく揺すり、しっかり出し切る。
 古い冷却液が出切った所で、補充/排出口周辺の液垂れを拭って綺麗にし、先ずは洗浄びんに精製水を150mL程(※2)入れて、ゆっくりと少しずつ、こぼさないよう慎重に丁寧にCPUクーラーへ注いでゆく。注ぎきったら補充/排出口を閉じ、水枕/ポンプ部とラジエーターを持ち上げて動かし、精製水をよく馴染ませてすすぐ。終わったら先程と同様に排出。
 すすいだ精製水を排出したら、洗浄びんに補充用冷却液を180mL(※3)程入れて、再び注いでゆく。洗浄びんの構造上しっかり最後まで注ぎきれなかった(吸い上げきれなかった)ので、残りはビーカーに移して慎重に注ぐ。注ぎ終わったら補充/排出口をしっかり閉じる。

(※1:冷却液には不凍・防腐対策としてエチレングリコールやプロピレングリコールといった有機溶媒(しかも有毒!)が添加されており、絶対にそのまま水道に流してしまわないように!
 ペーパー等に吸わせて可燃ゴミとして廃棄するのが鉄則!

(※2:マシンのメーカー曰く、Kelvin S24に必要な冷却液は約200mLとのこと)

(※3:ブログ等で、熱膨張による冷却液の体積増加を加味して若干少なめに充填する方が良い、との記述有り。ギリギリを攻め過ぎると液漏れの危険性が高いとか)

 ……以上で冷却液の補充は終了。後は水枕を拭って取っ払った分のCPUグリスを補った上で、CPUクーラーをM/Bとケースにセッティングし直し、並行して使用した器具を後始末。残った液滴をペーパーで吸ってゴミ箱へブチ込み、その後水道水で何回もよーくすすいでからひっくり返して乾燥。
 マシンを元通り戻し終えたらケーブル類を再接続し、ドキドキしながら電源を投入。UEFI画面を起動。
 すると――――

「――――嗚呼、ちゃんと冷えとる…………(安堵の溜息と脱力」

 補充前はあっという間に100℃まで跳ね上がっていたUEFI画面でのCPU温度が、補充後は50℃を少し下回る辺りで落ち着くようになった。
 そのままWindowsを起動して様子を見ると、こっちでは無負荷なら35℃前後で安定している。正にバッチリ。
 ……よ、良かったああぁぁ~~~~…………(疲弊

 側面パネルを外して様子見た限り、水漏れは大丈夫そう。まあ大分マージン取って充填したしな…
 また、補充前に聞こえていた覚えの無い異音も収まった。どうやら水枕/ポンプ部が冷却液不足で鳴くようになってたっぽい?


 異常の発見から解決まで一週間程掛かった訳だが、……いやー普段散々使い込んでるモノが一週間も使用不能に陥るのってやっぱしんどいモノがありますな。しっかり直ってくれて心底ホッとした。

 意外だったのは古い冷却液も補充用冷却液も殆ど水と変わらないサラサラの液体だったこと。前者は緑青のせいか若干青みがかってたが、後者はクリアカラー買ったからホントに水と変わらん質感だった。
 此処で件のCORSAIR製冷却液の成分を見ると、

・プロパンジオールグリコール(恐らくプロピレングリコールのこと)
・純水(精製水)
・殺菌剤

 となっており、成程基本的には水で出来ていると考えてよさそうである。
 確かに、有志による水冷PCについてのWikiを見ると、

「冷却性能だけを考えるならば、水だけを使用するのが最も冷却効果が高い」

 ……なんて書かれている。
 まあ実際、化学的な話するなら水って比熱(熱容量)高いしね…、というか。熱をたっぷり蓄えられますからなー。


 そんなこんなで思わぬアクシデントにてんてこ舞いさせられたが、コレも一つの経験ってことで。
 無事に終わったってのもあるが、中々楽しい時間っちゃ時間だったかもねー?(苦笑