2014/08/08

イヤフォン雑感:SONY MDR-EX800ST ファーストインプレッション

 臨時収入があったのをいいことに、前々から気になっていた本機を購入してみた。今年になってめでたく再販されたKlipschのX10とはかなり迷ったのだが、兄弟機のX5を持っているということでパス。オーバーヘッドも嵩張るということでパス。(ぇ
 折角ヘッドフォン・イヤフォンを趣味にしてるんだから、日本のスタンダード・モニターであるMDR-CD900STの精神を受け継ぐ音を味わってみようと思った次第。再生環境は親のNW-A856を借用。



 率直に感想を言うと――――御免なさい、この音あんまり好きじゃないかもorz

 パッと聞いてみた感じでは、取り敢えず普通。音のバランスは多分フラットで、ドンシャリだとかカマボコだとか、低域がヤバいとか高域がキツいってことは特に無い。この辺は流石にモニター機と言えよう。
 ただどーしても気になったのが、いまいち正体不明の「クセ」。手持ちのイヤフォンを全て引っ張り出して聞き比べても、EX800STだけ若干他とは違う聞こえ方がする。「音源と此方の間に薄い何かを挟んだような」、或いは「極薄のシェードを被せたような」感じというか…
 他のイヤフォンだと、音の線……とでも表現すれば良いのだろうか、それが結構シャープで輪郭がはっきりしているのだが、EX800STは線が余りシャープじゃなくて、輪郭が微妙にぼけている。それも、元々シャープでくっきりしていた線を、わざとフィルターを掛けて輪郭を僅かにぼかしてしまっている感じ。
 じゃあ曇ってたり籠もってたりしてるかと言えばそうではなく、更に言えば音の分離感が特別悪いわけでもない。むしろ分離感に関して言えば、個々の音を意識向ければそれだけクローズアップできる点から考えて、十分なレベルを確保している。

 どうにもちぐはぐというか、何故にこんな違和感のある音なのかと悩んだのだが、……そこでふと思い出したのが、EX800STのコンセプトが「レコーディングスタジオのモニタースピーカーの音」であること。これを踏まえてEX800STの音をよく聴いてみると、…………似てる。確かにスピーカー的な音がする。成程、前述した「クセ」、「音源と此方の間に薄い何かを挟んだような」、或いは「極薄のシェードを被せたような」感じの正体はこれだったのか…
 確かにコンセプトから考えれば、確かにEX800STは正しく製作者の意図した通りの音なのだろう。……ただ、個人的にこの音は「全く生っぽくない」。「モニタースピーカーの音」の再現としては非常に優秀だと思うが、その代わりに「生の音」は再現できていると思えない。他の機種は方向性の違いこそあれど、それぞれのやり方で「生の音」の感触をどうにか再現しようとしているのが分かるのに対し、EX800STはそれがない。それも当然で、生の音ではなくてモニタースピーカーの音を再現しようとしている以上、どうしたって生の音の再現にはなり得ないだろう。
 だからなのかは分からないが、このEX800ST、テクノなど電子音を多用した音楽とは非常に相性が良い。電子音が元々「作られた音」故に、モニタースピーカーの音という「人工的な音」を再現したEX800STとマッチするのだろう。……何とも皮肉というか。

 まあ未だロクにブレークインも済んでいないので、適当に鳴らし込みつつもうちょい様子を見てみるつもり。
 折角二万近くも金出したんだし、使い込まなきゃ勿体ないしなー。