2020/07/21

AndroidとPHPAとOTGケーブルの試行錯誤やら考察とか

 つい先日、密林でケーブルを一つ買った。


 エレコムのUSB-C to C USB2.0ケーブルである。

 以前、PocophoneとXD-05 Plusの有線接続用にOTGケーブルを探して、アイネックスの「U20CC-LL01T」という両端Type-Cのホストケーブルを買った。しかしPocophoneどころかAP80でも使えないという結果に終わり、それ以降もケーブルを探す中で、一つの可能性に期待したのだ。

 つまり――「USB-IF認証済」であるかどうか。

 USB-OTG規格それ自体、USB-IFが定めたものであることから、USB-IF認証が取れていればOTG規格もクリアしているのではないか、という考えに至ったのである。
 上記したエレコムの両端Type-CケーブルはUSB-IF認証をパスしており、密林を見ると、一つ前の型番だが「スマホとFiiOのBTR5を繋ぐことに成功した」というレビューがあったので、コレならイケる!、と思った次第。


 さて結果は――――――――ダメでした。_| ̄|○ il||li


 やっぱダメだった。PocophoneもAP80もXD-05 Plusを全く認識せず、ものの試しとDACモードにしたAP80とPocophoneを繋いでもみたがうんともすんとも言わない。

 じゃあもういっそLT-TC1買い足すか某店ならポイント値引きでタダに出来るし……、と一瞬ヤケになりかけた所で、xDSDとAP80のペア――厳密に言えば、その二つを結んでいるCオス-AメスのOTGケーブルが目に入った。

「…………よく考えたら、所謂典型的なOTGケーブルの使い方って、

 『スマホ(ホスト端末)→OTGケーブル(C/microオス-Aメス)→USBケーブル(Aオス-C/microオス)→クライアント端末』

 ――って感じだよな?」

 自分はこれまでケーブル一本による直結をずっと試行していたので、「OTGケーブルを噛ませてUSBケーブルの延長ないしは端子変換を行う」という、「リピーターケーブル」的な運用は試したことがなかった。
 だが、iPhoneなんかはUSB-DACを繋ぐ際に「Lightning - USBカメラアダプタ(※所謂「カメラコネクションキット」)」を挟むのが割とフツーだったはず。実用性は兎も角、少なくともコレで相性というか、動作検証的な事は出来るんじゃないか?、と思ったのだ。

 幸い、その為に必要なケーブル類は一通り揃っている。
 そんなワケで、PocophoneとPHPAの接続試験を、ちょいと一捻りしてやってみた。


<Pocophone to XD-05 Plus>

・ホスト:Pocophone F1
・OTGケーブル:Cオス-Aメス、USB2.0(※AudioQuest DragonTail)
・USBケーブル:Aオス-Cオス、USB3.1(Gen2)対応、USB-IF認証済
・クライアント:XD-05 Plus

・結果:
 XD-05 Plusをしっかり認識。UAPPでDSD5.6MHzのネイティブ再生に成功。


<Pocophone to xDSD>

・ホスト:Pocophone F1
・OTGケーブル:Cオス-Aメス、USB3.0(※iFI純正OTGケーブル)
・USBケーブル:Aオス-Aメス、USB3.0延長ケーブル
・クライアント:xDSD

・結果:
 xDSDを認識するものの、UAPPでは一切音が出ない。PCMもダメ。尚、画面上に於いてDSD5.6MHzは88.2kHzへダウンコンバートされていた。
 一方、NeutronはPCMであれば音が出ており、96kHz/24bitまでダウンコンバートされずに再生を確認した。DSDは少なくとも画面上に於いてダウンコンバートされた様子は無かったものの、音が出なかった。


 ……と、まあ概ねこんな感じ。
 大事なのは、XD-05 PlusもxDSDも、USBケーブルを用いてデスクトップPCに繋ぐと十全に機能を発揮出来るというコト。その点を踏まえると、やはりPocophoneとxDSDは相性がかなり悪いと言わざるを得ない。

 また、OTGケーブルは「方向性」がかなり重要な気がする。
 ケーブルを探していた時に、OTG規格そのものの技術的な解説を幾つか見付けて目を通したのだが、両端Type-CのケーブルでOTGを実装する場合は回路設計?がややこしいっぽい。両端がそれぞれ異なる端子であれば、一方をホスト用、もう一方をクライアント用に割り当てて「方向性」を与えてしまうとシンプルなのだが、両端が同端子ではそうもいかず、チップセット等によるホストとクライアントの識別処理が必要になるらしい。
 FiiOのLT-TC1が良い例だが、アレはケーブルに方向性を与えているおかげで「Pocophone - XD-05 Plus」の接続がしっかり成立出来る。その点、前述の「U20CC-LL01T」やエレコムのケーブルは方向性が無い故に接続が上手く行かなかったのではないか?、と。

 尤もソレならソレで、
「じゃあXD-05 Plusに付属する両端Type-CかつL字端子のOTGケーブルで、どちらの端子を繋いでも接続が成立する(=方向性が無い)のは何でなんや????」
 ……という疑問が出てくるのだが。まあコレは当のメーカーなら製品に最適なケーブルの仕様を知ってて当然だし、そもそも付属品が全く使えなかったらマジで洒落にならんけど…
 その辺、情報機器の回路設計に詳しい人なら付属ケーブルの端子の殻割って解析すりゃ詳細分かるんかなあ。誰か人柱オナシャス!

 Cオス-AメスのOTGケーブルはCオスにホスト、Aメスにクライアントを割り当てているのだろうが、先の接続試験を鑑みるに、Aメス端子にUSBケーブルを挿して延長したり端子変換しても、Aメス側のクライアント属性が消えたりはしないっぽい? 或いは、そもそもAオス端子が付いてるUSBケーブルの場合、そっち側が基本的にホストとして認識されるのだろうか? 正直、技術的な詳細は全く分からんのでどう表現すりゃいいか分からん…

 取り敢えず言えるのは、

・OTG対応を謳ってないとXD-05 PlusとPocophoneの接続は出来ない
 (→エレコムのケーブル)
・OTG対応を謳っててもケーブルの仕様如何ではやっぱり出来ない
 (→U20CC-LL01T)
・OTGは方向性が大事っぽいが、それも結局はケーブルの仕様次第?
 (→XD-05 Plus付属ケーブル)
・xDSDはPocophoneと相性悪い

 ……この四点くらいか。
 チクショウ何も分かってないようなもんじゃねえか!(頭痛

 因みにOTG規格の技術的な詳細が書かれてたのはこれらのページ。
 特に最初んトコは大変興味深い内容だった。

 ttps://lab.fujiele.co.jp/articles/9418/
 ttps://www.uquest.co.jp/embedded/3minutes/3otg.html

 いやはや、コンピューターってのは奥が深いねえ……(遠目

2020/07/12

イヤフォン雑感:AZLA MK2 (AZLA-02R) ファーストインプレッション

 最近、巷で「AZLA SednaEarfit XELASTEC」なるイヤーピースが人気らしい。ドイツ製の高品位TPE(熱可塑性エラストマー)を使用しており、耳の中で形が変わってぴったりフィットするんだとか。
 このAZLAというメーカー、「SednaEarfit」というシリーズで他にも多種多様なシリコン製イヤーピースを販売しており、かく言う自分もSednaEarfitの無印M/MLサイズを購入して使用中だったり。しっかりした装着感が中々にベネ。

 ここまで読むと「AZLAはイヤーピース専門のメーカーなの?」と思うかもしれないが、それは間違いである。日本国内の正規代理店であるアユートのHPを見てもらえば分かるが、AZLAの販売ラインアップにはちゃんとイヤフォンが並んでいる。
 ……しかし悲しいかな、ユーザーの間では既に「AZLAと言えばイヤーピース」というイメージが定着してしまっているのが実情。何故そんな事になってしまったのか?

 …………恐らくは、その原因となってしまったイヤフォン(のマイナーチェンジ版)が、今回紹介する「AZLA MK2 (AZLA-02R)」である。


 AZLAは元々韓国のメーカーで、数年前に鳴り物入りで日本へ乗り込んできた際は「AZLA (AZLA-01R)」という正にブランド名そのものを冠したイヤフォンを引っ提げていた。
 ……が、このAZLA-01Rが大変なクセモノで、

「……音は良いのだが、如何せん装着感が…………」

 ……と、何とも微妙な評価を食らってしまい、ちょっとコケてしまったっぽいのだ。

 詳しいことは軽くググればすぐ分かるが、「同軸ハイブリッドドライバー」「有名メーカーとコラボしたケーブル」など、結構セールスポイントはあった。
 だがそれでも、こういう音響機器に絶対欠かせない「装着性」があんまり宜しくないのは流石に拙かった。終いには、ケーブルだけ取って本体は売却する、なんて悲惨な状況になっていたとか…

 そんなAZLA-01Rだが、後にケーブルやステムのフィルタ、付属するイヤーピース等に少しマイナーチェンジを加えたバージョンが販売された。それが「AZLA MK2 (AZLA-02R)」で、今回自分が買ってしまった機種である。
 ……XD-05 PlusやT60RP買ったばっかなのにこの期に及んで何をまた衝動買いやらかしてんだ、と我ながら自己嫌悪モノではあるが、まあちょっと言い訳がありまして。

 というのも、先述のXELASTECがオーオタ界隈で話題になっていた折、ひょんな事からAZLA-02Rが某有名オーディオ店で在庫処分の格安価格で捌けているのを偶然目撃してしまったのだ。
 AZLA-01Rは当初45k前後で発売されたのに対し、AZLA-02Rはそれより10k程値下げして発売開始。では本記事記述時点での価格はと言うと、


 ――――僅か、たったの12.8kである。


 なんともはや、最早大暴落でしか無い。哀れというか、何というか……

(※補足追記[200830]:
 その後更に値下がった(12.8k9.98k)模様。えぇ…………
 此処迄来るとコスパは非常に良いと思うので、余裕が有る方は是非買ってあげよう!(慈悲の心))


 ……まあそんな感じで、大安売りしていたのを良いコトに、ちょっと怖いもの見たさでつい注文してしまったのである。まる。
 お財布の中身は如何程ですか……?(死魚目



 さて。
 今回は音質の前に、装着感について先に言及しようかと。


 率直に言わせて貰おう――――――――かなりシビアで面倒臭い。


 考えられる一番の原因は、筐体のサイズが大きく、それでいて外耳孔周辺に最適化された形状をしていないこと。そのせいで、筐体が上手く耳に嵌まらないのだ。
 こうなると頼みの綱はイヤーピースをしっかり耳にフィットさせることだが、…………かつてのAZLA-01Rの場合、よりによって何の取り柄も無さそうなフツーの半透明シリコン製イヤピしか付属していなかったのが拙すぎた。上手く密閉出来ないと音がスッカスカになってしまうのに、山とあるサード品から最適なイヤピを見つけ出すことを強いられる……そりゃ、客が離れるのも致し方無いっつーか。さもありなん。

 一方、AZLA-02Rには前述した「SednaEarfit」の無印が付属するようになっている。デフォはMサイズ。取り敢えずそのまま着けてみるが――――ダメ。全然キチッと嵌らん。密閉出来ん。普段ならMサイズ辺りで全く問題ないんだがねえ…
 そこで以前購入していたSednaEarfit無印のMLサイズへ交換。着用してみると――――良い具合に外音が遮断されて、筐体がポロリしそうな感じが無くなった。お? おお? コレ上手くいったんじゃね?
 着用時だが、先ず最初はケーブルのコネクタ部を真正面に向けると良さ気。その状態で耳へ突っ込み、ちゃんと穴塞がったのを確認した上で筐体をくいっと回し、御馴染みShure掛けポジションへ移行するとしっかり装着しやすい。目安として、筐体表面の「AZLA」と書いてある金属部を軽く押し込んだ時に、圧が掛かって空気が逃げるような音がすればほぼ密閉出来ているハズ。


 そんなこんなで何とかきちんと装着できた所で、AP80に直挿しで音出してみた。
 ソースは色々。FLAC44.1kHz/16bit~96kHz/24bitまで。

 一聴してすぐに思ったのは「へえ、クリアじゃん!」。曇り籠もりはほぼ感じない。高域は繊細でシャープ。中域はハッキリくっきりしてるし、低域はしっかり圧を伴って響く。総じてバランス良好。何だよ、結構良い音してんじゃねえか…
 感心したのは「高域の繊細さ」と「低域の迫力」をしっかり両立しているところ。この辺はやはりBAとダイナミックのハイブリッドドライバーならではだろう。分離感も悪くないし、中々使い出のある音をしている。良いね、気に入った!

 帯域バランス的にはちょいと低域が強めかね? そのせいか、閉塞感や聞き疲れ易さが全く無いわけではない。まあこの頃はすっかりT60RPがリファレンスになってしまって、些か評点厳しいかもしれんけど……それに、聞き疲れに関して言えばコレはむしろ、音よりも装着感の窮屈さに起因している気がしないでもない。デカい筐体を耳へ押し込んで、イヤピの力で少し強引に固定している感が拭えんしなあ…
 とは言え、筐体デカいのは装着感という意味ではかなりのデメリットなんだが、そのおかげか本機の鳴り方は何処か「密閉型オーバーヘッド」めいてるのが個人的にちょっとツボ。解像感がイヤフォンよりもヘッドフォン的な調子で面白い。元々オーバーヘッドからオーディオにハマってったクチなので、こういう鳴りの方がどうも馴染み深いのよなあ。



 ――と、案の定前評判通りに「装着さえ上手く出来れば良い音」ってな塩梅。
 取り敢えず暫く鳴らし込んでみるが、既に「音そのもの」は比較的気に入ってるので、あくまでも気休めかねえ。低域が僅かに落ち着くと嬉しくはあるけど。

 それより何より、問題は何と言っても装着感だろう。繰り返しになるがコレはホントかなりのクセモノだった…
 何か噂じゃわざわざカスタムイヤピを発注したケースもあるらしいが、そこまでせんと使い物にならんと見るべきなのか、或いはそれくらい惚れ込んでしまう音と思うべきなのか、判断付かねえ…

 何はともあれ、12.8kでこの音なら満足かなー。割と良い買い物だった。
 装着性の難儀さに付き合う気概が有るなら、まあ、オススメ出来るかなー…?(遠目



※追記:イヤーピース取っ替え引っ替え

 低域を中心に音の圧がちょいキツいように感じたので、イヤピをSednaEarfit無印のMLサイズからスパイラルドットのLサイズに替えてみた。
 コレが思いの外良い感じ。音圧が緩んでキツさが解れ、若干カラッとした調子に変わった。おかげで少し聞きやすく聞き疲れ難くなった。

 恐らくだが、この変化はSednaEarfit無印とスパイラルドットの作りっつーか素材っつーか、その辺の差異がかなり作用しているんだと思う。前者は傘の部分までそこそこ厚みがあってしっかりかっちりした作りなのに対し、スパイラルドットはちょっとペラっとした薄く柔らかめな作りなので、適度に振動が抜けてるんじゃないかなー。

 んで、外したSednaEarfit無印のMLサイズはそれまでSpinFit(※旧パッケージ版。現行ならCP100が一番近い)のMサイズを使ってたMDR-EX800STに、そんであぶれてしまったSpinFitを純正のMサイズを付けてたIE8に充てがってみた。宛ら玉突き事故である。
 全てイヤピ交換後にそれぞれ音出して装着感や音の具合を確かめたが、何れも中々良さ気。特にMDR-EX800STは以前「独特のクセがあってあんま好きになれんわコイツ」なんて扱き下ろしてたのが悪くない風情に変わってくれて、「おろ? コレなら十分使えるんじゃね?」と手のひらを返す羽目になった。有難や~。

 しかしその過程で、AZLA MK2の音のクリアさに改めて感心してしまった。解像感がイヤフォンよりもヘッドフォン的な調子、と前述したが、実際に他のイヤフォンと鳴り方を比較してより強く実感したっつーか。
 ……後はこれで装着性にもうちょっと気を配ってりゃあねえ……(溜息



※追記[200713]:イヤピ更に取っ替え引っ替え

 IE8にSpinFitを充てがってたのを更に変更。IE8にはSednaEarfit無印のMサイズを付けて、SpinFitはものの試しとしてTripleFi 10に使ってみた。
 音自体はぶっちゃけそんな変わってないが、コレは装着感を考えたチョイスなんであんまその辺は気にしてなかったり。IE8+SpinFitだと何だかいまいちビシッと耳に嵌まらなかった感あったので、安定感強いSednaEarfit無印にしてみた次第。逆にTripleFi 10は気持ち奥へ突っ込めるようになったか?

(※補足追記[200716]:
 結局IE8のイヤピはSpinFitに戻しました(汗)。SednaEarfit無印はしっかり密閉出来るんだけど、奥まで突っ込めなくなってしまうのがIE8相手だとビミョ~に違和感あってダメだった…
 代わりにTripleFi 10へSednaEarfit無印を付けといた。TF10は耳から出っ張るタイプなので、安定感強いSednaEarfit無印と相性が良いのではないかと思った次第。)

 イヤピも中々沼の深いシロモノだが、アレコレ揃えまくっても金が掛かって仕方無いしねえ……スパイラルドット++とかXELASTECとか、興味はあるが単価高過ぎてそうそう気軽にポイポイ買っとれん。どのサイズが合うかも正直バクチだし。

 因みに、メインで使ってる手持ちのサード品イヤピはこんな感じ↓
・AZLA SednaEarfit(無印) M/MLサイズ
・SpinFit(茶楽音人名義旧パッケージ) 通常径(※現行のCP100相当) Mサイズ
・SpinFit(茶楽音人名義旧パッケージ) 細径(※現行のCP800相当) Mサイズ
・JVC スパイラルドット M/Lサイズ

 各イヤピの個人的な感触として、

・SednaEarfit無印:
 Mでもかなり密閉感強め。しっかりした作りで装着時の安定感は大変良好。音がシャープになって圧がハッキリするっぽい。MLの密閉感は凄まじいがちょい外耳道が痛くなりやすいか?

・SpinFit:
 あんまり音の違い分からず。装着感も良いんだか悪いんだか。自分の耳だとMよりLの方が良かったかもしれない。一応、細径は使い心地良し(※W4Rに使用中)。

・スパイラルドット:
 Mの密閉感は程々で普通な感じ。LはSednaEarfitのMLとほぼ同等の密閉感を得られるが、外耳道への負担は少なめ。圧が減って聞き疲れし難い塩梅になる?

 SednaEarfit無印は音にシャープさを加えたい時、スパイラルドットは音圧を少し逃したい時に有効な印象。SpinFitはよく分からん。多分適正サイズで嵌まってない気がする。先細りのおかげで奥に突っ込めてる気はするけど。

2020/07/05

手持ちのオーバーヘッド簡単に聴き比べ

 現在XD-05 Plusでガンガン鳴らし込んでいるT60RPだが、手持ちのオーバーヘッドとどう音質が異なるのか、この際だからちゃんと聴き比べしてみようと思い立ったり。
 T60RPをリファレンスとして、手持ちのオーバーヘッドとの印象の差をごく簡単に羅列してみようかと。


 先ずは概要的なモノをば。

・比較対象
 K701・HD25 Originals・SRH440・DT990PRO・ATH-ESW9

・使用機器
 Pocophone F1(LDAC音質優先で出力)→XD-05 Plus(with MUSES03*2&05BL Pro)
 XD-05 PlusはBOOSTスイッチ切、バスブースト切、ゲイン小の状態で使用。

・使用アプリ
 Neutron Music Player

・使用ファイル
 Mili「String Theocracy」(FLAC96kHz/24bit)
 「Isn't It Lupintic?」収録「THEME FROM LUPIN Ⅲ '97(ルパン三世のテーマ'97)」(FLAC48kHz/24bit)

 音量はT60RP使用時にボリュームを1時辺りまで回した際の感覚を基準とした。



※御注意:

 人物解説のページでも触れていますが、以下、各ヘッドフォンの音に関する記述は全てあくまでも私の主観に基づくものであり、間違っても客観的事実では無い事を予め御了承下さい。
 ソレを了承した上で、記述の剽窃などする事は無いと確約出来る方のみ、続きをどうぞ。先ず間違いなくこんな駄文をパクろうとする酔狂者居ないだろうけど



<vs K701>
 若干遠くから音が聞こえる感じ。特に低域の音圧は減る。全体的にサラサラした音で、悪く言えばちょっと粉っぽい。と言うか、T60RPに比べて少し解像感・分離感が鈍い。但し鳴らし方に粗さは無く、いたって聞きやすい。
 帯域バランスはT60RPと大体同じような印象。恐らくフラット。特定の音域を殊更強調するような印象は無い。
 音量の取り易さ、もとい取り難さもT60RPと大体同じ。12時辺りだとかなり小音量。
 イヤーパッドは布製で厚みがあり、側圧は問題無いが、頭頂部は圧が気になる。特にヘッドバンドの凸凹は長時間だと痛い。
 思い切ってボリュームを時計方向へぐいっと捻ると少しキャラが変わってくる。粗が無く聞きやすい調子はそのまま、音圧は割と稼げるようになる。大音量でも鳴り方が破綻せず、ちゃんと整ったままな辺りはホント優等生的。

<vs HD25 Originals(※イヤーパッドにYAXI HD25 TypeBを使用)>
 低域と高域がドカンと来る。特に低域の音圧は凄まじい。モニターを謳うだけあって解像感は中々だが、それにしてはちょっと鳴り方が粗すぎるか。
 帯域バランスはドンシャリ。とは言え中域も割とハッキリ聞こえる。
 音量はかなり取りやすい。1時辺りでは爆音。12時でようやく普通の大音量。
 デフォルトは薄っぺらく安っぽいイヤーパッドだが、サード品のYAXI HD25 TypeBはふかふかで厚みがあり、側圧が相当マシになる。合成皮革の質感も良い。頭頂部は元々軽いため負荷はキツくない。
 とかく低域の音圧が凄い。高域もエッジが立っていて全体的に刺激的。おかげで大変ノリの良い鳴りっぷり。

<vs SRH440
 解像感や分離感は思った以上にちゃんと確保してるっぽい。ただ音が微妙に荒いと言うか、高域を中心に少しシャリシャリした調子なのが気になる。
 帯域バランスはほぼフラットだが、高域が若干強調されているかも。
 音量はかなり取りやすい。1時辺りでは爆音。12時でようやく普通の大音量。
 イヤーパッドは安っぽいペラペラの合成皮革ではないが、あまり厚みはない。側圧は長時間だと少し気になる。頭頂部は一点で支えてしまうため痛くなりやすい。
 本機はオンイヤーではなくアラウンドイヤーだが、T60RPやK701辺りと比較してイヤーパッドが薄い為か、耳の近くで鳴っている感が結構強い。また低域の響き方に若干の閉塞感を覚えた。とは言え密閉型モニター、更に価格が手頃(記述時点で10k未満)って事考えると、十分なクオリティではなかろうか。

<vs DT990PRO>
 一聴してすぐ、その重い音にびっくりした。HD25が高め~中ほどの低域が強いとするなら、こちらはより低い辺りから鳴っている模様。解像感は悪くなく、粗い鳴らし方ではない。むしろ高域は非常に細い響きで、ギャップが面白い。
 帯域バランスは低域が強め。ただ、低域の重さを除けば比較的中庸っぽい気もする。
 音量の取り難さはT60RPやK701と同程度。12時辺りだと小音量。
 イヤーパッドは布製でそこそこの厚み。ベロア素材?で肌触り良好。側圧は問題無し。頭頂部は地味にヘッドバンドのカーブが上手く出来ているのか、負荷は少ない。但しスライダーにクリック感が無いので位置決めが少し手間。
 鳴りが重い割に音圧はそこまででもなく、重厚な低域と繊細な高域が独特の感触。無骨な見た目と作りの一方で装着感は良く、疲れにくい。色々とアンビバレンスな機種。

<vs ATH-ESW9>
 高域が引っ込んで、中低域以下がグッと膨らむ。密閉型オンイヤー故か、音の広がり方が些か狭い感じ。音圧と音の重さがHD25とDT990PROのちょうど中間程度。解像感はそこそこ。悪くはないが、微妙にスモーキーな鳴り方。
 帯域バランスは高域が少し弱め。弱めと言っても聞こえ方はハッキリしている。殆ど刺さらないが、その分シャープさには劣る。
 音量はかなり取りやすい。1時辺りでは爆音。12時でようやく普通の大音量。
 イヤーパッドはそんなに厚みはないが、シープスキンを採用しているだけあって肌触りは良い。ただ縫製というか形がちと雑な気がする。側圧は長時間だと少し気になる。頭頂部も同じく。
 同じ密閉型オンイヤーのHD25とは鳴らし方がまるで異なる。解像感はあるものの鳴り方がやや粗いHD25に対して、本機の鳴りは粗く無い代わりにスモーキー。高域がマイルドかつ中低域以下の量感が豊かなので、ジャズなんかにはかなり合いそう。

 最後に、リファレンスとしたT60RPの感想を同じような調子で。

T60RP
 解像感と分離感の良さが抜群。音の広がりや音圧もしっかりしている。声や楽器のディテールが細かく、「裏にある音」を容易く探せるのは単純に凄い。丁寧な鳴らし方なのに迫力が確か。ぶっちゃけ、上記の機種達とは基本的なスペックが段違いな印象。
 帯域バランスは恐らくフラット。特定の音域を殊更強調するような印象は無い。
 比較時の音量は取り敢えず1時辺りを基準としたが、どうせならもうちょっとぐいっと捻って2時辺りまで回すと迫力マシマシで大変ベネ。耐入力値がマジで桁違いなので安心して爆音化出来るぞ!
 イヤーパッドは厚みがしっかりしており、合成皮革の質感も良い。側圧は問題無し。頭頂部はヘッドバンドが広く当たって荷重が分散しやすいものの、そもそも重めなのでちょい痛くなりやすい。その場合は一度軽く嵌め直すと痛みが和らぐ。
 比較したヘッドフォン達よりも圧倒的に新しいモデルなので、同列に語るのは少々野暮かもしれないが、やはり抜群に良い音。ウチのリファレンス・サウンドの座をあっさり奪ってしまった。この良さがFOSTEX御家芸のRP振動板に依るものだとすれば、成程そりゃあ平面駆動機が人気を呼ぶワケだわ…



 以上、ごく簡単に聴き比べ。
 HD595とAurvana Live!が入っていないのは、今回の聴き比べの趣旨が「モニター機と木製ハウジング」だったから。どうせならT60RPと共通項が有るモノを比較してみたかったのだ。HD595は開放型じゃんって? あーあー聞こえなーい(遠目
 結果は御覧の通り。案の定、T60RPの良さが際立つ格好になってしまった。尤も、T60RPの音に衝撃を受けた時からこうなると分かってはいたが…

 しかし改めて聴き直すと、帯域バランスがマトモで大音量にしても破綻無く迫力を増してくれる機種が、T60RP以外だとK701しか無かったってのは驚きだった。やっぱ偶にはしっかり比較して耳を鍛えとかなきゃダメですねえ…
 上述したように、K701はT60RPよりも解像感や分離感は鈍いものの、イージーリスニング的な聞きやすさと言うか、何となく耳触りの良い鳴らし方なのが面白いのよなあ。だからぼーっと聞き流すのに向いてる――かと思えば音量上げると一気に迫力出てきて、しっかり耳に届くようになる辺りがまたホント優等生。
 一方T60RPは音量を絞っててもクリアで、音量を上げると更に描写がハッキリしてくる。まあこっちは素性がガチのモニター(T50RP系列)で、しかも平面駆動機だから色々差があるのはしゃーないっちゃしゃーないのかもしれんが。

 此処迄やってしまうと、どうせならこのままHD595とAurvana Live!も聴き比べしときたいなー、と思わなくもないので、まあ実施したら追記しとこうかと。でも近日中に出来るかどうかは保証しない



※追記[200706]:HD595・ER-4Bとの比較

 我がファースト・ヘッドフォンであるHD595と、その特性故に使い所が中々難しいER-4Bを引っ張り出して、上述したようにT60RPと比較してみた。
 ……中々面白い結果になったよ!


<vs HD595>
 かなり前、このブログを始めて間も無い頃にK701と比較した時は、K701と似てるだのやっぱ違うだの言ってたが、…………むしろT60RPと似てないか、コレ?(ぇ
 解像感や分離感はK701よりも良い気がする。尤も鳴らし方が多少荒く、やや調子が軽いため、描写の細かさや重厚感はT60RP程しっかりしていない。
 帯域バランスは凡そフラットっぽい。ただ低域の特により低い辺りの鳴りが弱め。
 音量はHD25やSRH440、ATH-ESW9よりは取り難いが、T60RPやK701、DT990PROよりは取りやすい。
 イヤーパッドは布製で厚みは程々。側圧は問題無し。余裕を持ってすっぽり耳を覆ってくれるので大変快適。頭頂部は厚みのあるクッションが備わっているため当たりがとてもソフト。長時間でも全然イケる。
 全体的に、T60RPの鳴りを若干軽めにしたような印象を受けた。ディテール感や迫力の差は、「平面駆動ドライバーのセミオープン型」であるT60RPと、「ダイナミックドライバーの開放型」であるHD595、というドライバーとハウジングの違いが出ていたっぽい?

<vs ER-4B>
 初っ端はそのまま音出しして「う~むやっぱ低域弱いなあ」と思っていたが、試しにXD-05 Plusのバスブーストをオンにしてみたら、…………化けた。めっちゃ化けよった。
 解像感や分離感はT60RPにかなり近いモノを感じた。更に、鳴らし方が滑らかで粗が無い。迫力は流石にそう感じられないが、描写は細かくディテールはしっかりしている。
 帯域バランスはバスブースト有りならフラットと言える。逆にオフなら低域弱め。
 音量はHD25やSRH440、ATH-ESW9よりは取り難いが、T60RPやK701、DT990PROよりは取りやすい。
 イヤーピースは付属の三段フランジの大きい方。白っぽいの。耳の後ろを引っ張ってしっかり奥まで装着した。痛みは無いがそれより深刻なのはむしろケーブルのタッチノイズで、分岐部に付属のクリップを付けて胸ポケ辺りにでも固定しないと大変五月蝿い。
 イヤフォンであるためヘッドフォン程の音圧は無いものの、クリアさや分離の良さ、鳴りの繊細さは優秀。正直相当驚かされた。多分ER-4Sはデフォルトでこういう風情の音なんだろうな、と。まあ本機は元々バイノーラル音源用のイヤフォンなので、低域弱いことが一概にデメリットとは言えないのだが。


 どちらも思ってた以上に良好な感触を得られて面食らったが、同時にとっても満足。何だかんだ言って愛着のある機種なので。
 後は聴き比べするならオーバーヘッドのAurvana Live!と、その他のイヤフォン達だが、…………イヤフォンは結構数多いし、まあ、やる気が起きたら、かなあ…………(遠目

2020/07/03

平面駆動ヘッドフォン雑感:FOSTEX T60RP ファーストインプレッション

 XD-05 Plusの導入によりオーディオ環境、特に上流部のクオリティアップが為されたのを機に、
「何か新しく、今までは購入をあんま考えてなかった、如何にも『鳴らし難そうな』ヘッドフォンとか欲しいなあ…」
 と、物欲が沸々と湧き上がってきてしまった。最早病気である

 先日XD-05 Plusの感想を記述した際「DT1990PROとか、或いはエントリーでいいからHiFiMANの平面駆動ヘッドフォンとか欲しい」なんて我ながら宣っていた。
 が、DT1990PROは50kを軽々超える高級機で到底手が出せず、HiFiMANのエントリーモデルであるHE400番台は型番の一新により旧型が大幅値下げされていたものの既に在庫が枯渇しており、理由は違えど何れにしろ入手困難という有様だった。

 何か手頃な機種はないものか…、と価格.comや某有名店の通販で平面駆動ヘッドフォンのリストを眺めていたのだが、偶々(安い方の)価格順でソートし直した折に、目に留まった機種があった。
 ソレが今回取り上げる、FOSTEX T60RPである。


 FOSTEX自体はHP-A3を買った時から知っているメーカーだったが、同社のヘッドフォン/イヤフォンを購入するのは今回が初。
 RP振動板なる独自技術を用いた平面駆動機をモデルチェンジしながらリリースしていることも知っていたが、ぶっちゃけT60RPのことはまるで何も知らず、全く意識していなかった機種である。
 しかし気になって評判を調べてみるとコレが中々高評価で、しかも値段が25k(※記事執筆時点)とかなり手頃で入手しやすいと来た。原型機のT50RPと違ってハウジングに木材を使っている為か、写真越しでも中々洒落た雰囲気を漂わせており、また意外な事にT50RPは海外で相当な人気があるらしい。

 ……此処迄調べた所で、最安で捌けているのが毎度御馴染み密林、しかも公式発送なのを良いことに、またもIYHしてしまったのであった。まる。
 御財布の中身は大丈夫ですか……?(震声


 感想を記述する前に、環境等を少々。

・再生環境
 初っ端:デスクトップPC→(S/PDIF→)HP-A3(with MUSES8920D)
 聴き込み:AP80→(USB→)XD-05 Plus(with MUSES03*2)

・再生ファイル
 FLAC44.1kHz/16bit~96kHz/24bit


 さて、人生初となる平面駆動型ヘッドフォンの感想だが――――雑な表現で大変申し訳無いが、取り敢えず一言言わせて欲しい。びっくりするくらい良い音。

 初っ端、HP-A3で試し聴きした時点でめっちゃ驚かされた。所謂解像感と分離感がとんでもない。
 にも関わらず低音が気持ち良く響く。それでいて密閉型っぽい閉塞感が感じられない。高音は軽く刺さるくらいシャープ。中音域もハッキリくっきり聞こえてくる。どうなってんだこのヘッドフォン。

 そんで上流を本命であるXD-05 Plusに変更。…………うわあ何やねんこの鳴りっぷり。表現力がやっばい。多分現時点に於ける自分の手持ちの組み合わせでは最高クラスの鳴り方してる。
 意味分かんない(※褒め言葉です)のは聞こえ方が極めてニュートラルなこと。モニターヘッドフォンであるT50RPを、木製ハウジングの使用等でリスニング寄りにチューニングしたモノがT60RPらしいが、やはりこのニュートラルさはその出自に拠るモノだろうか。
 尤も、手持ちで「モニター」を標榜するヘッドフォンやイヤフォンにはK701やSRH440、HD25 Originals、MDR-EX800ST等があるが、どれを聴いてもT60RP程ニュートラルな鳴り方ではない。上手く表現する事が難しいのだが、T60RPを初聞きした時の衝撃は「音源や上流機器のグレードを上げた時に覚える感覚」のソレに近かった。一皮剥けた音、と言うか。

 アニメやゲームのサントラを中心にクラシック、テクノ、ロック、ジャズ、ポップスなど色々再生してみたが、このジャンルはダメ、ってのは無さそう。只々ド真ん中の良い音で鳴ってくれるので聞いていてとても楽しい。
 だが、特にギョッとしたのはXD-05 Plusの初聴きで使った「String Theocracy」を再生した時。音の生々しさがホント凄く、96kHz/24bitという真っ当なハイレゾ音源と組み合わせると此処迄リアルになるのかと舌を巻いた。

 ……音の感想が大分熱入り過ぎてるので、ここらで一回コーヒーブレイク。

 差し当たっては装着感について。
 T60RPの重量はコード抜きで380gと結構重め。HD25なんかはケーブルとプラグまで含んで166g程しかないことを考えると、コードまで含めて400g以上あるのは結構重量級だろう。
 だがその実、T60RPの装着感は割と良い方だと思う。手持ちのオーバーヘッドで装着感ダントツNo.1は我がファースト・ヘッドフォンであるHD595だと断言出来るが、T60RPはそれに次ぐくらいには付け心地良好。パッドが厚めなおかげで側圧は全く問題無し。眼鏡でも全然大丈夫。
 むしろ気になるのは頭頂部。そこそこ広く当たる為荷重が分散されはするものの、長時間だとちと痛くなってくるかも。……それでもいっぺん付け直すだけでそこそこマシになる辺り、悪名高きK701の凸凹ヘッドバンドなんかと比べたら格段に上等である。(遠目

 見た目や質感。
 ぶっちゃけT50RPのデザインは無骨過ぎるというか正直野暮いというか、そんな好きでは無かったのだが、それがハウジングを木製にするだけでこうも風情良くなるものかと。端的に言って好みの部類。
 付属ケーブルは布巻きの1.5m。かなりクセが付きにくいタイプで中々上等な雰囲気。公式曰く導体はOFCらしい。端子形状は両端共にシンプルなストレート。人によってはリケーブルが捗りそうである。

 付属品。
 3.5mm三極アンバランスケーブルと6.3mm標準プラグ変換アダプター、サラサラした手触りの布製ポーチ。以上。シンプルですな。
 別売品として、交換用イヤーパッドの他、2.5mm・4.4mm・XLRの四極バランスケーブルが存在。当方はバランス出力環境皆無なので当分無関係かな…



 あんま長々書いてもクドくなるんで、取り敢えずファーストインプレとしては此処迄。
 現在XD-05 Plusで鳴らし込み中。エージングで音変わるって声そこそこあるしね。大方ただのプラシーボだろうけど



※追記[200714]:ヘッドフォンカバー「mimimamo」を使ってみた

 季節柄、合皮系のイヤーパッドはどーしても汗ムレっつーか、いやむしろ合皮素材そのものへ汗が侵蝕することによる劣化が気になってしまうワケで。
 替えのイヤーパッド買うのが手堅いっちゃ手堅いが、しかし随分前に買ったSRH440ですら一度もパッド交換せず使い続けてるのに、ついこの間買ったばっかのT60RPで早速スペア手配するのはちょっと…、と躊躇してしまうのは、まあ当然な話っつーか。

 そこで買ったのが、コレ。


 スーパーストレッチヘッドホンカバー「mimimamo」である。

 実は既に家族のヘッドフォン(Fidelio M1)でMサイズを使っているのだが、今回はT60RP用にLサイズを調達した次第。SRH440辺りにも使えるので使い回し利くし、損はせんだろうと。


 んで実際に使ってみた。

 ……………………あ、やべえT60RPとは相性悪いわコレ。


 布地を一枚隔てる影響がモロに出ており、特に低域がブーミー気味になってしまった。素だとかなりタイトで制動利いてるだけに、変化が露骨過ぎて思わず苦笑。
 そんで高域から中域は一応ハッキリ聞こえはするが、伸びっつーか響き方が寸詰まっちまうというか、イマイチもう一歩足らない調子になってしまった。

 特に低域の影響はほんとデカく、カバーの有無でこうも音が変わるなんぞ想像していなかった。ぶっちゃけ誤算もいいトコ。
 夏場の汗ムレを予防するには間違いなく良いだろうが、音の変化が思った以上に大きいので、コスパ的にはちょっと微妙かもしれない…

 しかしこんな薄い布切れ挟むだけで音が激変する辺り、ヘッドフォンってやっぱ繊細に出来てんだなあ…
 だからこそ大切に使い続けたいのに、丁重に保護しようとすると魅力が薄れてしまいかねないという。いやはや、中々ジレンマですねえ……(溜息

(※補足追記[200716]:
 公式のT60RP装着例を見ると、カバーの縁をハウジングとイヤーパッドの間の溝に埋め込んでいる(公式で言う所の「ステルス装着」か?)のだが、それを敢えて止めて、思い切ってハウジングの外縁部辺りまでがぼっと包んでしまった。
 すると生地の張りが強くなったおかげか、低音のブーミーさが随分と治まって高域から中域が大分キレイに聞こえるようになってくれた。ナイスゥ!)

2020/07/01

Pocophone F1とUSB-DACとの接続について

 以前xDSDを繋いでビットパーフェクト再生が全然上手く行かず、その後音楽用途は完全に捨てていたPocophone F1。
 USB-DACの直結はダメでもLDACが使えるならXD-05 Plusとペアで利用する価値有るな、と考えて、適当なmicroSDに楽曲を叩き込んで再びDAPライクに使い始めた。

 んで、再び使い始めたついでに、もう一度USB-DACと直結してビットパーフェクト再生出来るか実験してみようと思った次第。
 Pixel ExperienceもAndroid 10にバージョンアップしたし、ひょっとするとひょっとするかも?と淡い期待を抱いてしまったのである。


・ホスト端末
 Xiaomi Pocophone F1
 (Pixel Experience(Plus edition, ver.20200609-0858)導入済)

・クライアント端末
 iFi xDSD(Firmware v5.20)
 xDuoo XD-05 Plus

・使用プレーヤーアプリ ※全て最新版
 USB Audio Player PRO(UAPP)
 Neutron Music Player
 海貝音楽(Hiby Music Player)

・使用ケーブル
 xDSD:Apple USB-C - USBアダプタ
 XD-05 Plus:FiiO LT-TC1 or XD-05 Plus付属USB-C to Cケーブル


 実験対象の概要はこんな感じ。
 では結果をば。


<Pocophone F1 to iFI xDSD>

・UAPP and Neutron
 ネイティブ再生はPCM96kHzまで。DSDは5.6MHzなら96kHz(Neutron)/88.2kHz(UAPP)へ強制ダウンコンバート。

・海貝音楽
 DSDはおろか、PCM96kHzすら再生不可。そもUSB-DACが正常に認識されていない?


 あー、やっぱダメかー……Pixel Experienceがバージョンアップしてもやはり無理なもんは無理らしい。
 でも折角始めたんだし、取り敢えずダメ元でXD-05 Plusも実験してみようと。


<Pocophone F1 to xDuoo XD-05 Plus>

・UAPP and Neutron, 海貝音楽
 DSDのネイティブ再生可能を確認。異常無し。ビットパーフェクト再生成功。


 ……………………んんんんんん゛ん゛ん゛ん゛ん゛??!!?!!??!


 あれーおっかしいなー、フツーに再生出来てるけど何でかなー……


 …………いやホントに何でやねん!!?? 嘘ぉ?! 何で出来んの!?



 ――そう、結果はまさかの「ビットパーフェクト再生可能」
 XD-05 Plusが相手なら、Pocophoneで何の問題も無くビットパーフェクト再生出来てしまったのだ……!





 ……正直、アタマが混乱してしまってどうしたもんか。
 まさかPocophoneでこんなすんなりビットパーフェクト再生出来るとか思っても見なかったので、怒りとか悲しみとか喜びより、今はただ純粋に疑問しか浮かばねえ…

 当初、LT-TC1使って成功して、ケーブルのおかげかと邪推してXD-05 Plus付属のケーブルに切り替えたら、そっちでも成功するもんだから呆気に取られた。要は「ケーブル依存の成功ではない」という事である。
 しかし現に、xDSDではうんともすんとも言わない事を自ら確認しているので、じゃあxDSDとXD-05 Plusの違いは一体何なのだろうと。……勿論、専門家でも何でも無い身ではその辺詳しく分かるハズ無いのだが。

 参考までに、AP80はxDSDでもXD-05 Plusでも、何方も確りUSBオーディオデバイスと認識して出力してくれる。故に何方でもビットパーフェクト再生が可能である。
 また、以前UAPPの作者の方とメールでやり取りした際、PocophoneからxDSDはUSB Audio Class 1.0で接続されてしまっているようだ、と聞いた。逆に言えば、XD-05 PlusはPocophoneからUSB Audio Class 2.0で接続出来ている事になる。

 この場合、「ボトルネックになっているのは何なのか?」がホント謎よなあ……PocophoneはxDSDに対して有効なドライバを持ってないのに、XD-05 Plusが相手なら持っていると言う訳やろ? どういうこっちゃい。
 例えば、Pocophoneは実際にUSB-DACの認識に難があるのを、XD-05 Plus側が何らかの理由で解消しているとか? ……いやしかしクライアント側でそんな制御出来るんか??
 または、挙動としてはxDSDが最もおかしくて、酷くホスト側を選別してくるとか? ……それこそどんな設計してんねんという話で。
 う~~~~~む、分からん…


 ……分からんが、兎に角一応「PocophoneとXD-05 Plusとならオーディオ環境としてマトモな運用が出来る」事は分かった。
 AP80と違って「ネットワーク経由でファイルダウンロードしてmicroSDに移す」ってフレキシブルな真似出来るし、丁度サイズ感合うし、便利に使えそうでコレは助かる。
 選択肢が増えるのは良い事だ、うん。


 取り敢えず念の為、XD-05 Plus接続時のログファイルをUAPPで出力して、またUAPPの作者の方に送信しておこうかな…



※追記[200702]:USB-C to Cホストケーブルについて

 PocophoneとXD-05 Plusを繋ぐ場合、ストレートケーブルであるLT-TC1よりも端子が両端共にL字になっているXD-05 Plus付属のケーブルの方がコンパクトに纏められるのだが、如何せん短過ぎて(10cm程度)やや使いづらいのが難点。つーかちょっと大きくズレるだけで接続不良起きてしまうのがかなりストレス。流石に断線ではないだろうが…
 「両端がUSB-CのマトモなOTGケーブルなんてLT-TC1以外じゃ先ず見つからんよなあ…」と以前書いたように考えつつも、一縷の望みを託して密林を捜索してみたところ――


 あったーーーーー!!!!!
 何だよあるじゃんナイス密林いやアイネックス……!!

 調べてみるとコンセプトが「スマホとポタアンのOTG接続用」という正にドンピシャなシロモノで、昨年末から販売され始めたものらしい。端子の端から端までだと16cm在るらしいので、コレなら余裕持って繋げられる。05BL Proの充電端子用に、と思って既にカートに入れてあったUSB-Cホコリ防止キャップ共々速攻で注文。いやあ探してみるもんだ…
 よくよく考えたら最近は「有線で繋げばUSB-DACとして使えるBluetoothレシーバー」とか結構出て来てるもんなあ。最近の売れ筋だとFiiO BTR5とか。全くニーズが無いわけじゃなくなってきてる、ってことかねえ。


(※補足追記[200703]:
 密林から届いた上記Type-Cホストケーブルを早速使ってみたのだが、PocophoneとXD-05 PlusではPocophoneがXD-05 Plusを一切認識せず、XD-05 Plus背面のLINKランプ(青色LED)が全く点灯しなかった。
 ではAP80はどうかと挿してみたら、いきなりAP80の電源がぶった切れるという珍事が発生。どういうことなの……

 こんな状態ではとても使えそうにないので、直ぐに返品手続きを開始した次第。
 何だよダメじゃんアイネックス……orz)



※追記[200703]:Bluetooth使用時のNeutron Music Playerの設定について

 PocophoneとXD-05 PlusをLT-TC1使ってUSBで有線接続、或いは05BL Pro交えてBluetoothで無線接続、と色々繋ぎ方を実験していたのだが、Bluetooth接続中にNeutron Music Playerを使っていた際、LDACを使っているにも関わらず96kHz/24bitの音源が何故か48kHz/16bitにダウンサンプリングされてしまうという現象に出会した。
 ……さっさと結論をぶっちゃけると、コレはNeutronの設定で「オーディオハードウェア→一般的なドライバー」がオフになっていたせい。有線接続する際にOS標準ドライバーを回避するため切っていたのだが、そもそもLDACに関してはAndroidがデフォルトでサポートしているモノなので、LDAC使うならむしろ「オーディオハードウェア→一般的なドライバー」をオンにした方が良い御様子。盲点と言えば盲点だった。
 因みにLDACがちゃんと機能している場合、副次的な効果として、44.1kHz/16bitは44.1kHz/24bitにちょこっとだけアップサンプリングされる模様。まあ、多分誤差の範疇だと思うが…



※追記[200718]:xDSDの挙動について

 AZLA MK2の鳴らし込みにAP80とxDSDのペアを使っているのだが、…………xDSDの挙動が余りにもアレ過ぎると言うか、少々うんざりしてしまった。
 一応言っておくと、音が悪いというわけではない。その点は問題無い。問題はむしろそれ以前――――xDSDをDAPやスマホと接続した際の挙動の安定性、である。

 恐らくxDSD側のドライバ或いはホスト認識辺りの問題だと思うが、ちょっとしたことで音が出なくなってしまいがちなのよなあ…
 AP80との接続中にAP80が休止入って電源切れたりすると音出なくなって。
 Pocophoneとの接続試験やって音出ないのを確認後にAP80へ戻すとやっぱり音が出なくなって。
 ファームウェアがv5.30の時にFLAC192kHz/24bitを再生しようとすると失敗してその後うんともすんとも言わなくなって…………orz

 なまじ後から仕入れたXD-05 Plusが非常に安定して動く分、余計にxDSDの安定性の悪さが際立つのがねえ……しかもXD-05 Plusなら有線でもPocophoneがフツーに認識してくれるし。尤もXD-05 Plusにも「Type-C to CのOTG対応ケーブルが大変希少」という欠点はあるけど。
 またずっと気になっていたのが、「AP80とxDSDの組み合わせだと、何かしら曲を再生する際に冒頭がほんの僅か切れてしまう」こと。少なくともAP80単体やXD-05 Plusと組み合わせた時には確認されなかったことなので、xDSD固有の現象と思われる。

 音が出なくなると曲を再生させても「ジーッ」というノイズがずっと鳴りっぱなしになってしまうのだが、コレ、何故かファームウェアの書き替えをやると直る。内部の処理というかキャッシュというか、その辺が一旦リセットでもされてキレイになってんだろーか。でもホントはファーム書き替えなんぞ頻繁にやりたかないんだけどなあ…

 対応フォーマットの幅広さやサイズ感、肝心の音質は優れているものの、DAPやスマホと接続する際の安定性がイマイチ宜しくないのはぶっちゃけフラスト溜まる。トイレ行ったり電話したりでちょっと曲止めてイヤフォン外したい場合は必ずxDSDの電源を落としておくなど、気を使う必要あるし。

 しかし何だかんだ言って、散々愚痴ってても当分は手放す気無かったり。
 サイズがAP80と組み合わせやすいし、XD-05 Plusはイヤフォンにはパワフル過ぎるしなー。それにPHPAが二台くらいあっても全然困らんどころか、用途毎に使い分け効いて中々乙なモンだって分かったし。まだまだ使い倒すぞー、xDSD!