2021/04/19

ポータブルオーディオ色々雑感

 突然ですが。
 Shanling M3XとUnique Melody 3D Terminator、買いました。


 …………ぶっちゃけ、何時もの如く衝動買いである。ホント懲りねぇなお前

 Shanling M3Xは前々回の記事で話題にする程度には気になっていた機種だから未だ良いとして、Unique Melody 3D Terminator(※以下「UM 3DT」と記述)は何故IYHしてしまったのかというと、先日購入して大変気に入ってしまった「DUNU Studio SA6」とUM 3DTが海外レビューでよく比較されていたからである。
 3Way6BA(Low*2, Mid*2, High*2)機のSA6に対して、UM 3DTは2Way3DD(Low*2, High*1)機と正しく真逆のドライバー構成。そして国内正規流通品の価格はほぼ同額(SA6:60k弱、UM 3DT:55k弱)――――と思いきや、実はグローバル価格だとUM 3DTの方が圧倒的に安い(最安なら何と$319=35k弱!)という罠。えぇ…

 レビューを漁ってみた感じ、SA6と比較されるだけあってUM 3DTも概ね「バランスが良い」御様子で、2Way3DDという変態構成(※褒め言葉です)に反して音作りは手堅く纏まっている模様。
 SA6でフェイスプレートに使われていたスタビライズドウッド(※樹脂化した木材)をUM 3DTは筺体全体に採用し、SA6の赤に対してUM 3DTは青と、見た目も内部構成も対比が利いていて実に面白い。

 ……まあ、そんな訳で気が付けばUM 3DTをうっかりポチってしまったワケである。まる。
 財布の中身は如何ですかって? あーあー聞こえなーい(現実逃避



<DAP雑感:Shanling M3X ファーストインプレッション>
 当初は3/26(日)の発売となっていたが、昨今の時勢の都合で4/9(金)に延期されたM3X。バッテリーの保ちやコスパの良さに心が傾いていた所で、ついったでの入手報告を見ていたら辛抱堪らなくなってしまい、4/9の夜に国内代理店の公式通販で注文してしまった。
 New HiBy R6 2020とは最後まで悩んだが、R6 2020の「純正レザーケース込で凡そ100k」という価格がどうしても受け止めきれず、幾つか懸念はあったものの連続再生時間や価格で圧倒的に勝るShanling M3Xをチョイスした。

 週明けの火曜にブツが届き、就寝前のリスニングで使うために箱出しして最初に思ったのは、「成程、丁度良いサイズだわ」。超小型DAPであるAP80程は小さくなく、かと言ってスマホ程のフットプリントも無く。一方でスマホよりは厚みがあり、掌に収めやすく握りやすいサイズ感。
 筺体は殆どが金属で、握るとヒヤリとするのが何とも心地良い。特別安っぽい感じは無く、値段を考えれば十分なクオリティ。
 そして中国製DAPの嬉しいトコである「ガラス面の保護フィルムは予め貼付け済、しかも予備まで同梱」。AP80でも思ったがコレはホントに有難い限り。流石にサード品の上等なフィルム程良いモノでは無いが、元々フィルムを何の為に貼り付けているかを考えれば、この対応は十分過ぎると言えるだろう。

 取り敢えず起動を兼ねて先ずは充電するか、と充電器を繋いでみたら既にバッテリーがほぼ満タン近かったので、そのままセットアップ開始。一通り終わった所で、ATH-WP900と同附属4.4mmバランスケーブルを準備。……嗚呼、やっとバランス接続デビュー出来る……(遠目
 接点復活剤でケーブル側の端子をメンテナンス後、M3Xの4.4mmジャックに繋いで、SDカード内のライブラリから御馴染みの曲をセレクト。ボリュームをローゲインの50/100に合わせて再生開始。


「――!! ぅわ音量デカっ!?」
 いきなり相当な音量で鳴り出してめっちゃビビった。何じゃこの出力の強さ……?!

 正直、ローゲインの50/100程度ならもっと小さい音量だろうと高を括っていたので、初っ端からかなりの大音量が鼓膜を揺らしてきて心臓に悪いの何のって。……尤も最終的にはもうプラス10して60/100で聞いてたワケだが。
 しかし……WP900は比較的鳴りやすい機種とは言え、オーバーヘッドにハイゲインではなくローゲインで十分音量取れるのは意外。想像以上に高出力で驚かされた。

 音質については、……………………ちょっと後日改めて本腰入れて聴き比べんと多分M3X自体の音質とかは掴めんなコレ。我乍らホント馬鹿耳極まってるっつーか。(ぇ
 まー逆に言えば、一聴して「悪い」と思わない程度には確りした音とも言えるだろうか? 記憶の中でぼんやり比較すると、ADI-2 DAC FSのIEM端子未満で、XD-05 Plusとは同等って感じ。価格考えれば妥当な線だろう。

(※補足:
 後述のUM 3DTをM3Xの3.5mmシングルエンドに繋いで、デュアルDACモードで聴いてみた所、最初にUM 3DTの再生に用いたAP80と比較して「音がはっきりくっきりする、もとい音像?が明確になる」感覚を得られた。少なくともAP80よりは良さ気かな?、と)

 システムのレスポンスなんかは正直予想以上。試しに入れてみたAmazon Musicで多少もたつくくらいで、基本的には至って快適そのもの。……率直な話Amazon Musicはアプリの出来が余り良く無い気がするので、アレがそこそこ動いてくれるだけでもかなり上出来だと思われ。
 OSはほぼ素のAndroidで、風情が違うトコがあるとすればGoogle Playストアがプリインストールされていないコトか。その代わりApkPureというアプリが入っており、此奴でパッケージファイル(.apk)を直接落としてインストールすることになる。
 ……尚、実はこのApkPureでGoogle Playストアそのものを直接ダウンロードできるので、「Google Playストアがプリインストールされていない」って部分が何の意味を成していなかったりする。おいおい…

 デフォルトのミュージックアプリはShanlingのオリジナル。……だがコレ、厳密に言えば恐らくは「HiBy Music」のメーカーカスタム版と思われる。その前提で言えば、音質チューニング機能のMSEBや、HiBy Link機能が省かれており、純粋に端末内ファイルを再生することに特化した潔い作りに変わっている。高音質CDプレーヤー等を作っていた、元々本格的なオーディオメーカーであるShanlingらしいっちゃらしい、かね?

 現在、密林でサード品のTPUジャケットを注文して到着を待っているトコ。純正のレザーケースはマジモンの牛革ではなくあくまでもフェイクレザー(PUレザー)で手汗等による経年劣化が懸念される故、気楽に使えるTPUジャケットにした。
 ……が、コイツどうも中国の業者がマケプレで出品しているモノらしく、到着まで結構時間掛かるっぽい。ぐぬぬ……UM 3DTは一週間程度でちゃんと届いたというのに……



<イヤフォン雑感:Unique Melody 3D Terminator ファーストインプレッション>
 国内正規流通品がグローバル価格よりも大分ぼったくってることが分かったので、海外版の購入を決意したUM 3DTだが、ショップを色々調べている内に「購入先によって商品の仕様が色々ある」事が分かってきた。
 具体的には、

――――――――――――――――――――――――――――――
・日本版(国内代理店のMixWaveが販売):
 ケーブルコネクタが一般的な2pin(0.78mm?)
 筺体が青
 価格は¥54,890(税込)

・グローバル版(米国のショップMusicTeckが販売):
 ケーブルコネクタが一般的な2pin(0.78mm?)
 筺体が濃青とブラウンのハイブリッド
 価格は$319.00(日本に送る場合は+$50掛かる模様?)

・中国版?(中国のショップHiFiGoが販売):
 ケーブルコネクタがqdc型(ケーブル側がカバーになっているタイプ)の2pin(0.78mm?)
 筺体が淡青
 価格は$349.99(クーポンで$10程値下げ可能)

※以上、価格は全て記事公開時点でのもの
――――――――――――――――――――――――――――――

 ――と、3パターン程あるらしい。
 三つ目の中国版だが、Unique Melodyの中国公式サイトでUM 3DTの写真を見るとこのタイプの画像が貼られていたので、そう判断した次第。

 この中で日本版は価格から却下。後はグローバル版と中国版だが、個人的に接続面がフラットになっている一般的な2pinコネクタは、何かの拍子に端子がグニッと折れてしまわないか不安なので、より確実に接続出来る(気がする)qdc型にしたいと思い中国版を選ぶことに。
 それにグローバル版より中国版の方が若干安かったしね! ……実を言えば色的には日本版が一番好みではあったのだが……(遠目

 つーワケで、UM 3DT中国版を国内でも利用者が多そうな中国のオーディオショップ「HiFiGo」で注文。詳しくは店名でググると情報がたっぷり出てくるのでそっちの参照を強く推奨。自分が文章連ねるよりずっと分かりやすいし。(ぉ
 注文から到着までの流れはこんな感じ。

――――――――――――――――――――――――――――――
某日 ショップに注文
3日後 出荷
4日後 深センの仕分け施設に到着
5日後 深センを出発、国際空港へ到着
6日後 中国を出発、日本着
7日後 通関手続完了、泉佐野郵便局で引受、新大阪郵便局南港分室に引継
8日後 最寄の郵便局に到着、配達完了
――――――――――――――――――――――――――――――

 注文から出荷までに少しラグあったのは土日を挟んだのが大きいと思われ。
 ソレ込みでもほぼ一週間程度で中国から届いてんだから大したもんだ…

 到着した荷物を見てみると、案の定というかダンボールの上からガムテぐるぐる巻状態。テープをさくさくとカッターで切ってダンボールを開けると、Unique Melodyのロゴが入った化粧箱をプチプチに包んだだけの超シンプル梱包が出てきて苦笑。
 化粧箱を開くと、最初にお目見えしたのは韓国Dignis製ケース。AZLA MK2に付属していたもののデザイン違いなので御馴染みのブツ。ケースの中を見れば、そこには白いケーブルと淡青に染まった一対の筺体が収められていた。

 UM 3DT本体を出してしげしげと眺めてみる。……うん、日本版とは全く異なる水色のシェルが面白い。中々悪くない見た目。コネクタはちゃんとqdcタイプ。思ってた通りの仕様が届いて一安心。
 3.5mm端子を接点復活剤でメンテナンス後、M3X購入に伴うmicroSDカードの挿し替えでADI-2 DAC FSから外していたAP80に繋いで音出ししてみた。因みにイヤピはデフォのまま。


「……おー、成程確かにバランス良いな、コレは」

 海外レビューでよく比較されているSA6もそうだったが、上から下まで満遍なくバランス良く鳴っているのが実に好み。決して極端なドンシャリやカマボコではなく、高域・低域過多でもなく、全帯域過不足無く鳴らしている感じが大変宜しい。オールジャンルイケそうで思わずニヤリ。
 とは言えコレだけではSA6とモロにキャラ被りしてしまうトコだが、聞き込むとやはりSA6とは違うなあと思う点が幾つか散見された。

 先ず「分離感がSA6程強くない」。SA6は明瞭感と分離感が非常に優れていたのだが、UM 3DTはもうちょっとその辺大人しめ。勿論、UM 3DTにも曇り籠もりは殆ど無く、意識向ければ特定の音を拾えるレベルの分解能は備わっているが、時折「スタジオモニターに使えるかも?」とまでレビューされていたSA6程ではない。
 じゃあソレがマイナスに働くかと言えばそうではなく、むしろ絶妙な塩梅で「聞き易い音」に仕上げられているのが中々どうして巧いトコロ。Unique Melodyのチューニングの妙と評すべきだろうか、2Way3DDという特徴的な構成に反してとても聞き心地の良い、聞き疲れ難い音に纏められているのには素直に舌を巻く。

 次いで「高音域がやや伸びない?」点。特に大編成のダイナミックレンジ広いオーケストラなんかで顕著だが、高域にやや頭打ち感を感じるコトがしばしば。まあ再生可能周波数帯域はSA6の方が上にも下にも大分広い(SA6:5Hz~40kHz、UM 3DT:20Hz~20kHz)ので、スペックの差がそのまま出てるのかも。

 そして案の定「音の感触が違う」。そりゃ6BAと3DDでは違ってて当たり前なのだが、その違いが何とも面白く思えてしまうのだから仕方無い。
 上手く表現し難いが、手持ちのオーバーヘッドで言えば「モニター機(DT1990PRO)とリスニング機(ATH-WP900)の差異」的な? 音楽の構成要素をバラしに掛かるようなシビアさがUM 3DTには薄く、それよりも全体的な纏まりや鳴りの元気さを重視している印象を受ける。
 中でも低域は顕著で、SA6の鳴りっぷりも十分上等だったが、UM 3DTの低域には「そうそう、コレだよコレ!」と思わせられる説得力――「低音の響き」が十二分に感じられた点は見逃せない。

(※追記[210420]:
 UE 3DTのイヤーピースをSednaEarfit Light MSサイズに変更し、M3XからADI-2 DAC FSにUSB入力、IEM出力を用いてSA6(※此方も同じイヤピ)と本格的に聴き比べてみたら、当初とはやや異なる感想を得られた。つーかUE 3DT、付属のイヤピだと全然密閉出来てなくて鳴りがめっちゃ軽い状態だった事が発覚。バカ耳ェ……orz

 同じ曲をリピートしながらUE 3DTとSA6を往復している内に分かってきたが、「UE 3DTの方が鳴りが軽い」。或いは「SA6の方が音の量が多い」。特に中域以下で明確。UE 3DTからSA6にスイッチするとその濃密さに驚く。逆にSA6からUE 3DTへ移るとスッキリした聞き心地になる。恐ろしいのはSA6で、それだけ濃ゆい鳴り方しといて音が全くゴチャ付かんのは一体どうなってるの…
 更に高域の出方もSA6の方が容赦無く、UE 3DTはマイルド。それ故「UE 3DTの方が耳に優しい」。SA6はとかく音の厚みが半端無く、それでいてキッチリ各音をバラせる分離感を持ち合わせてるので情報量がヤバい。要は聞き疲れやすい。その点、UE 3DTはあっさりしており、SA6より肩の力を抜いて聞き流せるユルさがある。
 かなりざっくりした言い方になるが、UE 3DTはSA6よりも「コンパクトな鳴り方」だと感じた。スッキリ軽い風情がそう思わせるというか。手持ちの他の機材で例えるなら「DT1990PROとT60RPの差」が近いか。情報量のDT1990PROとSA6に対して、もう少しイージーリスニング気味に楽しめるT60RPとUE 3DT、みたいな)


 ……とまあ、バランスに優れた鳴り方、という大まかなキャラクターはSA6とよく似ているUM 3DTだが、何だかんだ言ってメーカーやらドライバ構成やらスペックやら色々違ってるだけあって、コレなら両方使い分けるのも十分アリだな、と。何よりSA6より安いおかげでちっとばかし気楽に使えるのが有難い。(ぇ
 一見イロモノなドライバ構成に面食らいやすいが、実際は極めて聞き易く纏まりの良い、角が取れた穏やかな鳴らし方、ってのが正に「Unique」。国内レビューに見られた「BA型のような音」なんて評も聞いてみれば何となく分からんでもなく思えたり。低音の質感で「あーやっぱD型だわ」ってなるけど。

 しっかし、国内価格の55k弱は大分ぼったくりよなー。SA6と比較してケーブルや付属品が随分とチープで簡素だし、40k未満とは言わんからせめて45k前後辺りまで値を落とすべきと思うがねえ。MixWaveはSA6を海外価格よりも実質安く国内で売ってるDUNU代理店のサウンドアースや、Shanling M3Xを海外価格とほぼ同程度で捌いてる国内代理店のMUSINなんかを見習うべき。



 それにしても、僅か二ヶ月足らずでDUNU Studio SA6にShanling M3X、Unique Melody 3D Terminatorと、随分とポータブルオーディオ環境が充実しちゃってまあ……どれも買って良かったと思えるものばっかだから、妥当な買い物ではあったのだけれども。
 これで当分は音響関連で出費することも無かろうて。…………無い、よね??(乾笑

2021/04/03

イヤフォン雑感:DUNU-TOPSOUND Studio SA6 ファーストインプレッション

 目星付けてるDAPについて調べていたハズが、気が付けば凡そ60kする高級イヤフォンをIYHしていた。
 な、何を言っt(以下略



 ……取り敢えず、毎度の如く弁解から。

 元々は海外の有名な某音響系フォーラムにShanling M3Xのレビューが上がっていたのを見付けて、ソレをざっくり読んでいたのだが、レビュアーがM3Xに繋いだイヤフォンとして本機が記述されていたのである。
 イヤフォンメーカーとしてのDUNUを一応知ってはいたのもあり、偶々、そうホントにマジで何の気無しに、本機がどういう機種かググって調べてみて、…………正にそのフォーラム内で、かなりの高評価を食らっているのを目撃してしまったのが運の尽き。

 一頻りレビューを翻訳機能を駆使しまくって読み込んでみると、
「ダイナミック型に定評のあるDUNUがリリースした、流行りのハイブリッドではなく純粋なマルチBA機で、ダイナミックドライバは含まれていないが低音は十分出ており、上から下までしっかりバランス良く鳴らしてくれる」
 ――概ねこんな雰囲気で、何れのレビューもかなりの好感触。しかも一部では「レファレンスモニターとして使える程バランス良好」とまで書かれていて非常に驚いた。
 ……つーか此処のフォーラムのレビューで、酷評らしい酷評が見当たらないって一体どういうことなの……?(驚愕

 値段を調べてみると、代理店を通した国内正規流通価格で60k弱。海外通販で直輸入すると$550くらいなので日本円換算で60k強――って海外価格よりも国内価格の方が安いんかい!? しかも直輸入は関税乗っかかる懸念を踏まえれば更に値打ち度が上がるワケで…………幾ら何でも代理店頑張り過ぎちゃう????(困惑
 それに60k弱で済むなら約65kで買ったATH-WP900よりも値打ちじゃん? もうこれは買いじゃね??(感覚麻痺

 樹脂化した木材をフェイスプレートに使用した小洒落たデザイン、カスタムIEMライクなシェル形状、モジュラープラグにより2.5/4.4mmバランスと3.5mmシングルエンドを自在に切り替えられるケーブル、音質の切り替えギミック、兎に角バランスに優れた鳴り方――――と、個人的にストライクを多数食らいまくってしまい、…………気が付けば、衝動的に某店で注文してしまった次第である。
 ……………………何と言うか、我ながら毎度毎度懲りねえなぁ??(諦観


 そんなワケで、遂に手を出してしまった高級イヤフォン。やっちまったなぁ!
 いやしかしまあ冗談抜きに青天井の世界なので、コレでもかなり安いっつーか最早エントリークラスみたいなもんかもしれんが…

 箱出し後、先ずは装着感をチェック。デフォのイヤピは付属品の白のMサイズが嵌っていたが、…………なーんかイマイチ密閉性が悪い。つーかあんま耳の奥まで突っ込めてない気がする。コレは宜しくない。
 そこで手持ちのサード品から、深々突っ込めそうなイヤピとしてSpinFit通常径のMサイズをチョイス。……お、良い感じに密閉成功。んじゃ一先ずコレで。

 ケーブルのモジュラープラグは3.5mmが装着済みだったので、そのまま我がレファレンス環境であるADI-2 DAC FSのIEM出力にジャックイン。
 適当なロスレス音源(FLAC44.1kHz/16bit~192kHz/24bit)を再生してみた。


 個人的にイヤフォンはヘッドフォンと違って、耳に嵌めてすぐに音出しした直後と、一曲程聞き流して耳が慣れた辺りとで、音の感触がかなり変わってくる。
 実際、本機も聞き始めは「……んん?こんなもんか??」と思ったが、それでも取り敢えず一曲を最後まで再生して、それからもう一度最初から、今度は気持ちを入れ替えて真剣に慎重に聴き直してみた。
 すると、

「――――!?」
 その音の感触の良さにびっくり。つーか何じゃこの明瞭感と分解能の良さは……?!

 レビューで予めイメージしていた通り、帯域バランスは頗る良好。確かに上から下までまんべんなく鳴っている。低音の量感も十分。外耳道が音で震える感触が確り得られる程。
 だがソレより何より、全体的な鳴りのクリアさと、個々の音に意識を向けた際の分離感の良さに只管感心させられた。所謂「音像」が明確で、「解像度」が相当に高い感じ。

 ……そして、不思議な事にそれでいて「全く刺さらない」。裏を返せば多少「刺激に乏しい」と言えるが、明瞭感と分解能が良過ぎる為か欠点が霞んでしまっている。国内のレビューで本機の音が「シルキー」と評されていたが、成程的を射た表現だろう。余りにも「聞き心地が良過ぎる」。
 音像は明確明瞭、表現は微細繊細ながら、耳を突き刺すような刺激は一切皆無で、長時間でも苦も無く聞き流せてしまう。正に絹の如く大変滑らかな鳴りっぷりだが、明瞭感と分解能が優秀なのに加えて、思った以上に響く低音のおかげか、楽曲の「迫力」がちゃんと表現されている。それ故この聞き易さに反して中々「聴き飽き難い」のは、特筆に値するのではなかろうか。

(※補足:
 「SpinFitの開口部がSA6のステム径より細く、ノズルが少し隠れてしまっている」点が何となーく気に掛かり、後日「SednaEarfit LightのMSサイズ」を御馴染の密林で購入しイヤピを変えてみたところ、高域が若干刺さるくらいエッジが立つようになった。どうやらSpinFitはSA6の高域をマスクしていた模様。おいおい…
 SednaEarfit Lightでは開口部がステム径とほぼ釣り合っており、高域の変化はソレが理由と思われる。ぶっちゃけとても好みの塩梅に変化してくれたので完全に大当たり。装着感も言う事無し。SpinFitの刺さりゼロなシルキーサウンドも悪くないが、やはり高域は多少エッジ立ってる方が好物なので…
 以下、御手数ですがあくまでも「SpinFit通常径(CP100相当)のMサイズ」を使用時の感想として御読み下さい。(平謝))

 散々SA6の音にびっくりした後、「コレは是非とも手持ちの他のイヤフォンと聴き比べなければなるまい」と思って、以下の機種を引っ張り出した。
・Westone4R
・TripleFi 10
・Klipsch X10
・CL750
・AZLA MK2
 そんで此等とSA6を、ADI-2 DAC FSのIEM出力相手に取っ替え引っ替え適宜挿し替えてみた。
 …………端的に言って、聴き比べてみた事を後悔する羽目になった。
 
 理由は単純明快。「SA6の音が良過ぎて話にならなかった」。
 ぶっちゃけレベルが違い過ぎて勝負にすらならん有様。いやマジで。SA6クオリティ高過ぎ。クリアさ、滑らかさ、分離感、帯域バランス、何れも断トツだった。やべぇ。
 ……確かに値段はSA6がぶっちぎりで高価いが、真逆此程差があるとは思いもしなんだ……

 一応、匹敵とまでは言えずともそれなりに健闘していたのはTripleFi 10とCL750、AZLA MK2の三つ。どの機種も鳴りに明瞭感があり、またSA6には少ない高域由来の刺激が結構含まれていて良い感じ。
 中でもAZLA MK2はSA6に次いで新しいだけあって、流石に悪くなかった。低域にダイナミックドライバを使っているおかげで迫力バッチリ。……むしろ三つの中だと、最も古いモデルの10proが未だに通用しそうな塩梅なのがおかしいっつーか。

 逆に参ったのはWestone4RとKlipsch X10。特にW4Rは一聴して帯域バランスの違和感がとんでもなく、大いに混乱させられた。X10は帯域バランスはさておきクリアさが今一つなのが悩み所。
(※暫く後XD-05 Plusで、少し大音量気味に改めてW4Rを鳴らしてみた所「聞くに堪えん程では無いか…?」と思えたので、聴き比べでの違和感は音量によるものかも?)


 今まで自分は、基本的に音質だけを求めるなら、
「ヘッドフォン>>(越えられない壁)>>イヤフォン」
 ――である、という認識を持っていたのだが、SA6の音はちょっとソレを改めさせるだけの破壊力を持っていた。「音の質感、感触」がヘッドフォン(特に最近レファレンスとしているT60RP、DT1990PRO、ATH-WP900辺り)に極めて近く、一聴して違和感を殆ど感じられないのだから魂消る。此程の音像と表現をイヤフォンで得たことが無いので、ぶっちゃけカルチャーショックレベル。
 高級イヤフォン、侮り難し。

 不満があるとすれば、「高域に刺激が無い」こと。所謂歯擦音やシンバル等の辺りがマジで全く刺さらないため、もうちょっとエッジ立ってても面白いのになー、と思ってしまう。
 ……いやはや全く以て贅沢な話だが。

 SA6の音を手持ちのオーバーヘッドで例えるなら、T60RPとATH-WP900(with stPad2)の中間だろうか? 全体的なバランスの良さや鳴りの滑らかさにT60RP、クリアさと低音の量感の両立にATH-WP900っぽいエッセンスを感じなくもない、という印象。
 尤もその二機種はSA6よりもうちょっとダイナミズムがあったと思うが、……幾ら何でも、設計にかなり余裕持てるオーバーヘッドとインイヤーモニターをその点で較べるのは酷ってもんだろうよ。


 音のことを散々書き連ねたところで、音以外のこともちょっと書いておこうかと。

 デザイン、もといフェイスプレートだが、自分のはかなり赤々した色合いだった。代理店のページに掲載されている写真を真に受けるなら、相当に青っぽいプレートがありそうなものだが、…………冒頭で述べた海外の某有名音響系フォーラムのレビューに貼られていた写真を見る感じ、どうやら基本的にそこまで青々しいプレートは無さそうである。
 なので、「プレートは概ね赤っぽいかも?」という点は注意した方が良さ気。因みに質感自体は至って良好で文句無し。

 ケーブル。単結晶銅の銀メッキ?で8芯らしい。結構太く、とても確りした作りで此方も質感良好。固すぎず軟すぎずで程々の取り回し加減。何よりモジュラープラグを採用しているおかげで、3.5mmシングルエンドや2.5/4.4mmバランスといった現在の主要な接続方式を、ケーブル一本で全て賄えるのが有難過ぎ。
 確か、超高級DDイヤフォンで有名なDITAもプラグ部分が交換可能なケーブルを使っていたはず。だがあっちは価格がヤバいことになってる(※最上位機は300k近い)ので、100k未満の機種にもちゃんとした?品質のモジュラープラグ式ケーブルを同梱してくれるDUNUは良心的だなあ、と。

 付属品は充実の一言。ケースやイヤピ、クリーニングツール、交換用プラグ(2.2/4.4mm)、3.5mm→6.3mm変換アダプターなど、一通り揃っている。イヤピが三種類も付いてたのにはちと面食らった。でも結局使わなかったのが何ともアレだが。
 箱出しの際感心したのだが、左右のイヤフォン本体にはそれぞれ別個に袋を被せてあって、シェルに傷が付かないよう丁寧に配慮されていたのが地味に嬉しい。なお袋は捨てずにそのままケースへしまう時使っていたり。

 装着感はイヤピにもよるだろうが、少なくとも自分は先述の通りSpinFit通常径(CP100)のMサイズで十分密閉出来た。その上でシェル全体がカスタムIEMライクな形状故に、耳の窪みへすぽっと収まるため、自分に合ったイヤピを適切に選択出来れば凄まじい遮音性を得られること請け合い。
 ……正直、こんなにも遮音性高いイヤフォンは初めて経験したのでちとビビった。間違っても自動車・バイク・自転車等の運転中に使用しないように!(真顔

 音質の切り替えギミックは公式の表現が何ともあやふやでイマイチどう変わるのか掴みづらかったが、有難い事に海外レビュアーが何とわざわざf特を計測してグラフを掲載してくれていた。感謝。
 ソレによると、低域が少々持ち上がる、所謂バスブースト的な効果がある模様。実際、そうと分かった上で聴き比べてみると、確かにスイッチがONの位置にある際は低音の量が増えている気がしないでもない。
 ただ個人的にデフォルト状態(スイッチ位置が「1」の時)でも低音量は十分だと思うので……勿体無い話だが、当分この機能を使うことは無いかもしれない……(遠目

 此処でまっこと今更ながらSA6のスペックを見てみると、
――――――――――――――――――――
(※以下公式代理店製品ページより引用)
重量:11g
周波数帯域:5Hz-40kHz
インピーダンス:60Ω at 1kHz
感度:113+-1dB at 1kHz
THD:<0.5% at 1kHz
――――――――――――――――――――
 ……と、イヤフォンにしては結構インピーダンス高めなものの、能率が113dBある為か特別鳴らし難いとは思わなかった。ADI-2 DAC FSのIEM出力の-20.0dB辺りで既に結構な大音量で、鳴りの滑らかさ故更に音量を上げても全然問題無く聞けてしまったり。ダイナミックレンジ広い大編成のオーケストラなんかはついつい音量を上げがちだが、その場合難聴には要注意!
 詳しい人に曰く「イヤフォンのインピーダンスが高いということは、アンプ側の出力インピーダンスによる影響が少なくなる」らしいので、SA6は上流を選り好みしないタイプと言えるのではなかろーか。代わりに出力はそこそこ要るかもしれんが、まあ最近の4.4mmバランス出力積んでるようなDAPなら先ず大丈夫だろう。
 また、2010年代前半のBA型イヤフォンは再生可能周波数帯域の上限が凡そ20kHz前後であることが殆どだったが、SA6は何と倍の40kHzまで出るように。流石はハイレゾ世代の最新型と言うか…



 …………昨年だけでXD-05 Plus、T60RP、ADI-2 DAC FS、ATH-WP900、DT1990PROと相当額(※諸々のオプション等も含みでざっくり計算して320k。……320k!?)を散財しておいて、更に言えばそこそこ前から購入を検討し続けているDAPの新調をすっ飛ばして、新年度早々いきなり高級イヤフォンをIYHしてるんだから、…………我乍らホント馬鹿と言うか阿呆と言うか愚か者と言うか…………(自己嫌悪

 しかし実際にその音を聞いてしまうと、……そりゃあ皆沼に嵌るよね、と言わざるを得ないのが何ともはや……60k弱のSA6ですらこのクオリティなら、もっと高価い、それこそ100kや200k、300kするようなイヤフォンはどんな音なのやら。とは言えヘッドフォンやイヤフォンそのものに100k以上出すなら、先ずはオーバーヘッドからにしておきたい所ではあるけど。HPA/DACはADI-2 DAC FSで100k超え経験しちゃったしねー。
 大体、イヤフォンはヘッドフォンよりも格段に新商品のリリース速度が早いカテゴリなので、沼がヘッドフォン以上にタチ悪いことこの上無いのよなあ。気になるからって矢継ぎ早に買いまくってたら札束が幾つ有っても足らんぞコレ。いや冗談抜きで…


 ……値段を一切気にしなくていいなら、気になる機種は既に幾つかあったりする。

 中国のカスタムIEMメーカー、Unique Melodyの「MEST」。BAドライバだけでなく静電型や、何と骨伝導ドライバまで積んだという正しく「ユニーク」極まる機種。お値段170k程。グローバル市場では最近MKIIが出たそうな。
 米国のイヤフォンメーカー、Campfire Audioの「ANDROMEDA(2020版)」と「SOLARIS(2020版)」。それぞれ150kと190kくらい。特にANDROMEDAは高音のキラキラ感と超高感度で接続先を選ぶことで有名。

 何れも今回衝撃を受けたSA6の2~3倍以上する超高級機なので、まあ間違い無く自分が近い内に手にすることは無いだろうが、それでも音を確かめる機会があれば、一度どれ程のシロモノか体験してみたくはありますなー。