2019/09/02

イヤフォン雑感:RHA CL750 ファーストインプレッション

 また性懲りもなく衝動買いだぜIYHーーーーーーーーーー!!!!!



 …………。
 えー、今回購入したのは以前ちょこっとだけ紹介した「MA750」のメーカー、英国RHAが先日生産を終了した「CL750」。
 生産終了品故か異様に値下がっており、かつては10k後半だったモノが9k前後で買えるようになってしまっているのだから恐ろしい限り。

 パッと見、MA750と酷似した(というか恐らく同一な)ステンレスの筺体を使用しているので兄弟機っぽく見える。
 ……が、中身は全くの別物だそうで。それを示すように、何とイヤフォンでは珍しいハイインピーダンス(150Ω)仕様、というかなりマニアックな製品。それ故、アンプの使用が推奨されるという相当ニッチなシロモノ。
 同時期にはPHPAの「Dacamp L1」や、筺体にセラミックを採用しリケーブル可能なインナーイヤー「CL1 Ceramic」が販売されており、後者はCL750と同様のハイインピーダンス・イヤフォン。……なんつーか、あからさまに「ぜひともこの辺揃えて使ってみてね!!」というメーカーの思惑が透けて見える。尚、残念ながら此等も生産終了済。
 特にCL1はミニXLRバランスケーブルが同梱されており、そしてDacamp L1にはミニXLRバランス出力端子が備わっていたため、この二つ組み合わせて使えと言わんばかりの仕様だったり。一方CL750はMA750と同様にリケーブル不可、端子は3.5mmステレオミニなので、インピーダンス以外はごく普通のイヤフォンである。

 CL750の前に、見た目がよく似ているMA750について所感を少々。
 かなり前の記事で軽く雑感を記述したが、MA750は12k前後(※本記事執筆時点)の比較的ローコストながらバランスに優れたD型イヤフォンである。MMCX辺りでリケーブル可能な作りや、BA型マルチないしはハイブリッドドライバの採用がトレンドの昨今にあって、「ドライバはD型一発のみ」「やたら弾力のある着脱不可のぶっといOFCケーブル」など、かなり硬派な仕様で勝負している。
 若干ドンシャリ気味、という汎用性の高い帯域バランスで多方面に使いやすく、結構出番は多め。ステンレス製のハウジング故かシャキッとした音色だが、耳を突く程キツい鳴りはほぼ無いので聞き疲れ難い点が好印象。D型一発ならではの滑らかで自然な響きも相まって、かなり聞きやすいタイプの音である。

 そんな感じで気に入っているMA750と同メーカーの製品なので、レビュー漁ってみた限り高評価の多いCL750もきっと良い音を鳴らすのだろう、と安直にIYHしてしまった次第。
 …………つい先日中華イヤホン(KZ ZSN Pro)買ったばっかなんですがねえ、ナニしてんでしょーねえ我ながらホント莫迦やなー……(遠目


 さて、本題となるCL750の感想を以下に。
 環境はAP80+xDSD、音源はFLAC。イヤピは付属のLサイズを使用。

 前提として。
 CL750はMA750と見た目こそ似ているが音の傾向は全然違う、ということは承知していたつもりだった。……が、使ってみるとホントに全く違っていて正直意表を突かれた。

 先ず思ったのは明瞭感の良さ。と言っても「明るい」ではなく「澄んでいる」方。要はかなりシャープでクリアな音。見晴らしの良い鳴り方で、曇り籠もりがほぼ無い。
 しばらく使っていて分かったが、特に中~高域がMA750よりも随分出るようになっているっぽい。シンバル辺りがシャンシャン鳴りまくる曲を聞くと違いが顕著に分かるはず。

 そんな高域が出るなら低域はさぞ出ないことだろう、と思うことなかれ。イヤピ合わせてしっかり耳塞ぐと、結構下まで響いているのが感じられた。量はそう多くないものの、ビシッと制動の利いた良質な低音が割としっかり鳴ってくれる。

 MA750以外にも今回は久々に手持ちを色々引っ張り出して聴き比べてみたが、CL750の鳴りは全体的に閉塞感が少なくスッキリした風情で、不思議にも音の感触がイヤフォンと言うよりヘッドフォンのソレに近い気がした。「耳の中で音が鳴っている」感覚が薄め。手持ちのインナーイヤーで比較的同様の感触が得られたのはHiDefJax。だがアレは最早半開放型に等しいのでちと例外な気がしないでもない。
 しかしバスレフポートがハウジング下部に空いているとはいえ、あくまでも密閉型イヤフォンでこの鳴り方は珍しいし面白い。未だに現役かつリファレンスとして重用しているHD595からオーディオの世界へと転がり堕ちた身としては、かなり好感の持てる音色である。

 但し、チェロやコントラバス、バスドラムが大いに主張するような大編成のクラシック辺りを聞くと、低音の量感の少なさ故迫力が一気に減衰してしまうきらいは、正直無いとは言い難い。中~高域にかけてのクリアさやシャープさには目を見張るものが確かに在るが、それと低音の響きや迫力がトレードオフになっている点は否めない。
 その辺、手持ちのER-4Bに似ていると言えなくもない。アレは凄まじく澄んだ音を奏でてくれるインナーイヤーだが、その分低音の量感は相当犠牲になっている点が悩ましい一本なのだ。尤も、この辺はBA型とD型の違い故だろうが、ER-4BよりはCL750の方がしっかりした低音を鳴らしている。逆にER-4Bの方が高域の繊細さは勝るので、まあ一長一短というか。

 ところで。
 レビューを漁る中で「無音部分で『音が無い』ことがよく分かる」というニュアンスがあって、思わずうんうんと頷いてしまった。

 中々言い表し難い感覚だが、特にオーケストラやライブ音源等を聴けば分かりやすいはず。強いて言うなら、音のストップ・アンド・ゴーがはっきりしている、という感じ。
 低音に関して「制動が利いている」と上述したが、それは低音に限らず高音でもそうで、キレイに響くが余計な残響は残さない、という印象を持った。真面目な音、とも言えるかも?


 元々17k前後で売られていたCL750だが、音質考えると現在の10k未満という価格はちょっとした価格破壊な気がしないでもない。しかもコレ、ショップ独自の価格ではなく代理店のナイコムが公式に発表しているのだから、色々と凄いというか何と言うか…

 低域の迫力が抑えめなことを除けば、かなり上等な鳴り方をしてくれるイヤフォンなので、ヘッドフォン出力がパワフルなDAPやPHPAを持っているならオススメ。
 一応、xDSDを使わずAP80単体でも聴いてみたが、音量不足とかパワー不足を感じることは大して無かったので、そこそこの出力が有れば多分大丈夫なハズ。