2021/10/17

密閉型モニターヘッドフォン雑感:ADAM AUDIO STUDIO PRO SP-5 ファーストインプレッション

 前回の記事で、Thieaudio Oracle・FiiO FD5(with KBX4913)・Fostex TH610と派手派手に散財した旨を記した折、当初はTH610ではなく密閉型モニターヘッドフォンを見繕う予定だった、と書いていたのだが。

 …………まあ、アレだ。辛抱堪らず、まぁたIYHしてしまった罠。
 もうなるようになれ精神である。(目逸

 しかしながらおかげさまでいよいよ臨時収入を使い果たしてきたので、流石にそろそろ打ち止めである。
 ……そのハズ。いやもういい加減打ち止めなければならん。…………打ち止めたいなあ…………(※フラグ


 そんな訳で遂に仕入れてしまったADAM AUDIO STUDIO PRO SP-5。Powered by ULTRASONEということで、コラボ機ではあるもののコレが自分にとって初のゾネホンになる。
 独ULTRASONEと言えば、今でこそ六桁価格を誇る超高級機「Editionシリーズ」が余りにも有名過ぎるが、かつては「PRO(PROline)シリーズ」や「HFIシリーズ」と言った比較的手頃なモデルも多数取り揃えるヘッドフォンメーカーだった。その他、EditionとPRO(PROline)の間に「Signatureシリーズ」というプロフェッショナル向け?高級機を構えており、コレがつい最近ラインアップを一新したばかりだったり。
 一方のADAM AUDIOは同じくドイツのモニタースピーカーメーカー。要するに、恐らくはSignatureシリーズの筐体・構造をベースに、ADAM AUDIOがチューニングを監修した密閉型モニターヘッドフォンがSP-5、というワケ。

 密閉型モニターの購入候補としては、SP-5以外にAustrian Audio Hi-X55も非常に有力だった。が、海外のf特測定サイトでSP-5とHi-X55を比較してみた所、Hi-X55よりSP-5の方が中域以下の出方が安定しており、また全体的にグラフが綺麗で安定していて何となく好みっぽい塩梅だったので、最終的にSP-5を購入した次第。
 ……おかげで出費が当初の五割増しくらいになっちまったがな!(死魚目

 尚、SP-5のレビューを漁っていた所「中域を改善出来るのでリケーブル推奨」という声を見掛け、オヤイデのHPSC-35HD500/1.3を同時に購入した。
 二つ合わせて御値段怒涛の70k。…………TH610(74k)やATH-WP900(65k)と殆ど変わんねーじゃねーか!!(自己嫌悪


 兎にも角にも取り敢えず試聴感想をば。
 初っ端はXD-05 Plus(with MUSES03*2)+05BL ProにAP80をペアリングし、LDAC飛ばして簡単に使い始めてみた。そんで後日、今度はADI-2 DAC FSで聞いてみた。
 ソースはFLAC(44.1kHz/16bit~192kHz/24bit)・DSD。いつもの通り。

 XD-05 Plusで聞き始めて思ったのは「カラッとした音」。高域から低域までしっかり鳴っており、シンバルの刺さりやドラムのインパクトをちゃんと感じられ、リケの効果もあるだろうがボーカルは引っ込まずにきちんと聞き取れる――――と、一見如何にも情報量豊かで聞き疲れしやすそうだが、意外な程音そのものの負担は少なく疲れ難い。
 よーく聴き込んでみて分かったが、比較的ハウジングが小さめの密閉型であるにも関わらず、かつて所有していたSRH440のような「音が近い」感覚が薄い。それどころか、ドライバーユニットが耳介よりもう一歩二歩離れた位置にあるように感じられた。「カラッとした音」の正体は多分コレ。
 恐らく、この少し不思議な聞かせ方こそがULTRASONEの特許技術「S-Logic」の効果だろう。解像感・分離感・明瞭感・刺激感を十分に感じさせつつも、一歩引いたような音の感触が何ともユニーク。先日購入したTH610も「耳から離れた所で鳴っている」感覚を得られるヘッドフォンだが、TH610が「もっと奥の方までスーッと広がる」ような「遠さ」とすれば、SP-5は「指向性を持った音源を此方に向けた上で、耳からやや離して鳴らしている」ような「距離感」で、よりカチッと正確な風情を伴っている点が異なる。個人的には何方も好ましいが、きっと「モニターヘッドフォン」としてはSP-5の方が正解に近いのだろうな、と。

 んで次はADI-2 DAC FSを使用。変換アダプター噛ませて6.3mmに繋ぎ、始めはローパワーモードで出力した。出力機器のクオリティ差を除けば、概ねXD-05 Plus使用時と同じ聞き心地。どの帯域にも格別凹みを感じず明瞭で、情報量豊富ながら疲れ難く聞き易い。
 ただローパワーでは少し音量を上げ気味(-15.0db辺り)だった。実際SP-5のスペック見ると結構鳴らし難い類(感度95dB・インピーダンス70ohm)なので、一度再生を止めてハイパワーモードに切り替え、爆音予防として事前に音量を絞ってから再生を再開してみた。
 すると、鳴りっぷりが急変して困惑。「メリハリのある音を一歩引いて俯瞰する」ような感じだったのが、その一歩を詰めることでメリハリを最前面に押し出してきたと言うか、兎に角大変アグレッシブな調子に変貌したのである。慌てて更に音量を絞ると鳴りを潜めたが、流石にビビった。
 その後、慎重にボリュームを上げたり下げたり、ADI-2 DAC FSのローパワーとハイパワーを行き来して変化を確認したが、どうやらパワーを引き上げるとそういうキャラクターが現れる御様子。尤も鳴り方が根本的に変わってしまうのではなく、単純に「一歩引いた分を音圧で埋めている」感じで、むしろ「出力機器の力強さを反映している」だけな気がする。

 他、一頻り使っていて特に感心した事として「ステレオ感の強さ」が挙げられる。アンバランス接続専用ながら左右の音の分かれ方が尋常ではなく、左なら左、右なら右とくっきりはっきり鳴らし分ける。ステレオ感だけなら今まで使ってきたヘッドフォン・イヤフォンの中でも断トツと断言出来るレベル。こういう所もモニター機らしいと言うか。

 此処等で以下、音以外の点について。

 見た目は…………世辞にも良いとは言えない。野暮い。ゴツい。しかもプラスチッキー。とは言えそのおかげでゴツさに反してかなり軽量(300g未満!)なので、一長一短か。
 側圧はそこそこあるが、イヤーパッドにそれなりの厚みがあって割と快適。頭頂部の負荷についても、ヘッドバンドのクッションが厚目に出来ている上、今し方述べたように軽量なのでそんな悪くない。総じて結構良い方。ぶっちゃけ意外。

 付属品は二種類のケーブル(6.3mmプラグの長いものと、3.5mmプラグの短いもの)と、セミハードケース。以上。スペアのイヤーパッドなんかは付属せず。ケースは同時購入したHPSC-35HD500/1.3をヘッドフォンに挿したまま収納出来るくらいにはゆとりがあって地味に有難い。
 付属ケーブルはホントにフツーとしか言い様の無い質感のケーブルで、HPSC-35HD500/1.3と比較するのが(オヤイデに)失礼な感じとゆーか。何せHPSC-35HD500/1.3はシースにシルク巻いてるくらいだからな…

 件のオヤイデ製ケーブルHPSC-35HD500/1.3について言及しておくと、シルク製布巻きシースに金属製プラグを使用した、如何にもアップグレード用って見た目のシロモノ。取り回し易さはT60RPやTH610に付属する布巻きケーブルと同様。つまり固くてガッチリしてる分、正直に言って扱い易くは無い。その分頑丈そうなので自分はこういうタイプの方が好きだが。

 パッケージはシンプル。白黒のモノトーンに統一されており無駄が無い。モニタースピーカーメーカー監修のモニターヘッドフォンらしいっちゃらしい風情。演出過多よりは格段に好みなんで無問題。


 んー、まー取り敢えずファーストインプレとしてはこんなもんかなー。
 本格的?なモニターヘッドフォンってコトでつまらん音かと思えば全然そんなことはなく、前評判で察していた「ゾネホンはドンシャリ」という特徴をリケでフォローしたもんだからか、ボーカルの引っ込みを感じさせないバランスの良い音を十二分に楽しめた。尚且、卓越したステレオ感や優秀な分離・解像感といったモニター機らしさ?を節々に感じられ、「音楽制作の現場でマジに使われてるヘッドフォン持ってんだぜ!」という安っぽい所有欲を満たしてくれる辺りが満足度高め。
 見た目がイマイチな点と、元々の価格の高さ、リケによるある程度の追加出費を許容出来るなら、中々のダークホース的面白さを秘めた機種ではなかろうか。知名度こそ低そうだが、少なくとも自分は気に入った。間違い無くSRH440よりイイ音だし。

 因みに。今回の買い物で結構ポイントを稼げたので、イヤーパッドを二つ程購入しておこうかと。
 一つはTH610の純正パッド、もう一つはSP-5用にYAXIのfix90を仕入れてみるつもり。後者は使用したら感想等書こうかなー。



※追記[211103]:YAXI fix90とSP-5の相性について

 SP-5の純正イヤーパッド温存用としてYAXI fix90を購入、使ってみた。

 サクッと結論から。
 合わん。

 SP-5のパッドはどうやらベースとなっている本家UltrasoneのSignatureシリーズのソレとは少しモノが異なる?らしく、例えばSP-5と同じく合皮製のパッドを使っているSignature Studioが「パッド硬ぇ!」と言われている一方で、SP-5のパッドにそこまで硬い感じは無い。適度にしっかりしており、適度に柔軟。
 しかしYAXI fix90は非常に柔らかく、そのせいでドライバ(を覆っている金属板)が耳介に触れるようになってしまう。純正パッドはそこそこ反発力あるのでそんな事は起きない。つまりドライバから耳介までの距離が純正パッドよりも近くなっている。
 その結果だろう、fix90使用時のSP-5はかなり低音が盛られた音に変貌。更に純正パッドで感じられた「カラッとした音」が失われてしまう。元々のスペックが優秀だからか、音に深刻な籠もり曇りが発生することこそ無いものの、帯域バランスがかなり変化する為、正直言って相性は良くない気がする。

 この分だと、恐らくSP-5にはfix90よりもstPad系みたくカッチリした感触のイヤーパッドの方が合ってそう。WP900で使っているstPad2とか良いかもしれない。アレはちょいと硬めに出来てるし。
 というか実際問題SP-5のイヤーパッドって本家のSignatureシリーズの合皮系パッドと同じものなのか違うものなのかどっちなんだろう…? 一度メーカーに問い合わせてみようかしらん…

(※補足追記[211105]:
 ADAM AUDIOの日本代理店にSP-5のパッドについて問い合わせた所、本家UltrasoneのSignatureシリーズ用合皮パッドと同一ではないか、という回答があった。

 …………が、ADAM AUDIO本国のサイトへアクセスしてみると、公式通販でSP-5の交換用イヤーパッドやケーブルが販売されているのだが、値段が明らかにおかしい。特に合皮パッド。安過ぎる。
 UltrasoneのSignatureシリーズ用合皮パッドは日本公式代理店であるアユートの通販で4kくらいなのに対し、ADAM AUDIOのドイツ本国公式通販でのSP-5用合皮パッドはたった$16.99、つまり2000円弱なのだ! …………ええぇぇ…………
 しかもADAM本国公式通販は合皮パッド以外にベロアパッドも販売しており、こっちも安い。$24.99≒3000円弱。…………おぉぅ…………orz

 ……コレ、代理店に言えば取り寄せて貰えるんかねえ……(遠目
 つーかこの価格差、明らかにSignatureシリーズ用パッドと同一ではないよなあ……(乾笑)


※追記[211106]:

 SP-5で試したfix90と、WP900に装着していたYAXI stPad2を入れ替えてみた。
 案の定予感的中。fix90ではSP-5のドライバと耳介との距離が近過ぎて接触してしまっていたが、stPad2に替えるとそういう事は無くなった。音の感触もやや純正っぽい感じに戻った。それでも低音の聞こえ方を中心に未だ何となく相違を覚えなくもないが、ドライバと耳介の距離が空く事でfix90よりも随分聞きやすくなったので、まあ当分コレで通してみようかと。
 逆にfix90を宛行う事になったWP900だが、試しに聞いてみると此方も恐らく純正パッド使用時の風情に戻ったっぽい。つーかWP900の純正パッドとfix90がかなり似てるし。stPad2使ってた時に比べて低音の量感がドッと増えており、ただその一方で意外にも中高音がstPad2使用時よりも鮮やかかつ芯が通っているように聞こえたので、中々悪くない。恐らく、fix90に替えて密着性が向上した効果によるものと思われる。
 装着感だけで考えてみると、モニター用故に側圧の強いSP-5とややしっかりした感触のstPad2、ポータブル用の割に側圧が弱いWP900と柔軟故にしっかり密着するfix90という組み合わせは、その実互いにバランスが良いのかもしれんねー。


 
 

2021/10/07

音響機器色々雑感

 突然ですが。
 FiiO FD5とThieaudio Oracle、更にFostex TH610を買いました。


 「……もう何度目だよこの流れ……」と自分でも思わなくもないが、取り敢えず毎度の如く釈明から。


 海外レビューの高評価を頼りに購入して、実際そのクオリティに感激したDUNU Studio SA6。そしてSA6購入後に、内部構成の対称性から興味を持ってしまったUnique Melody 3D Terminator。
 何方も気に入って適宜もとい気分で使い分けていたが、……その最中にふと思ってしまったことがある。

「……BAのクリアさとDDのインパクトを両方兼ね備えた音が欲しい……」

 明瞭感と鳴り方のバランスに優れるSA6だが、3DTと使い比べていて気付いてしまったことがある。「低音(特に打楽器)のアタック感に乏しい」のだ。
 恐らく、SA6の海外レビューで度々触れられていた「欠点:BAの低音」とは正にこの事だろう。3DD機である3DTはドラム等打楽器が鳴った際の瞬間的な衝撃がしっかり伝わってくるのだが、SA6はその感覚がかなり薄い。例えばドラムが高速で打ち鳴らされるハイスピードなロックだとコレは致命的で、何とも刺激に乏しくなってしまう。
 一方で3DTは低音のアタック感こそSA6に勝るが、明瞭感や解像感といった部分でSA6に劣る。特にボーカルが顕著で、3DTからSA6へスイッチすると声の聞きやすさ、クリアさに驚かされる。

 ……とまあ、SA6にも3DTにも強みと弱みがあり、鑑賞する曲に応じて使い分けるのが実際面白いのだが、…………うっかり、魔が差してしまったのが運の尽き。

「…………そう言えば。
 ハイブリッド構成のIEM、未だ持ってなかったな――――(遠目」

 ……我乍ら、最早完全に病気と言う他無い。(乾笑


 そんな訳で始まったハイブリッド機探索だが、ちょっと前から気になっていたメーカーがあった。
 オーディオ系中華セラーでも比較的有名?な「Linsoul」のオリジナルブランド、「Thieaudio」である。

 実を言うとLinsoulは以前日尼経由で利用したことがある。オペアンプ交換まで実施して絶賛愛用中の高出力PHPA「xDuoo XD-05 Plus」を購入したショップが、何を隠そうLinsoul(日尼での名義は「L.Sオーディオ」)だったり。

 驚いたことに、Linsoulは何とThieaudio以外にも複数のオリジナルブランドを構えており、何気に何れのブランドも中々評価高め。
 とは言え、その中でも特に有名なモノはThieaudioの「Monarch/Clairvoyance」だろう。「2EST/[6 or 5]BA/1DD」というハイブリッドどころか「トライブリッド」とでも言うべきド級構成を誇るIEMで、しかも構成の割に安い?(Monarch:$730、Clairvoyance:$700)為か、オーオタ達の間で話題になっていた御様子。音質も上々だそうな。
 そのThieaudioが最近になって、「2EST/2BA/1DD」という構成のIEM「Oracle/Excalibur」を発売し始めた。Monarch/Clairvoyanceで指摘されていた「シェルがデカ過ぎる」という欠点を、BAドライバ数を一気に引き下げて筐体をスリム化することで解消した――のかどうかは果たして定かでないが、少なくともOracle/Excaliburにそういう期待が寄せられていたのは確か。

 「ふーむ、面白そうだなOracle…」と興味を惹かれていたのだが、……此処でまさかの事態が起こる。
 二次元美少女パッケージで御馴染?のMoondrop(水月雨)から、Oracleと同構成のトライブリッドIEM「Variations」が発表されてしまったのだ。

 Linsoul製品最大の懸念は「国内での正規流通が為されていない」ことに尽きる。日尼を介せば多少のリスク低減は可能だが、それでも個人輸入と大差無いので、万が一の事態が起きた際が怖い。
 対して水月雨は日本国内に代理店(「地球世界」と言うらしい)があり、Linsoulよりも購入後のアフターケアを受ける上でのハードルが圧倒的に下がる。やはりこの安心感は捨て難い。

 さて何方にしたもんか……と連日悩んでいた折、ある海外の有名なレビューサイトでOracleとVariationsの周波数特性(以下「f特」)が公開されたので、早速比較してみた。
 すると、Variationsは意外にもかなり低域が強いらしい。水月雨は何方かと言えば中域〜高域の鳴りに定評があるメーカーだと思っていたので、この測定結果には正直面食らってしまった。
 幸運な事に件のサイトにはSA6の測定結果もあったので、OracleとVariationsのf特をSA6とも比べてみたが、SA6のバランスに近いのはVariationsよりもOracleだった。

 ……この時点で腹が決まり、Variationsを却下してOracleを注文することに決めた。
 ATH-WP900にstPad2を使用した際の感覚を思い返しても、自分は低域強めの鳴り方よりニュートラルで中庸気味なバランスの方が好ましく感じるタチっぽいので、Oracleの方がより好みに合うハズだ、と考えた次第。


 そんなこんなで日尼からOracle(4.4mmプラグ仕様)を注文したのだが、…………注文する前から分かっていたものの、「到着まで一ヶ月以上待たされる」のは結構しんどい。手持ち無沙汰感マジで半端無かった。
 ……気が付けば「イマドキのシングルダイナミック型IEM」を物色し始めており、引っ掛かってしまったのがFiiOのFD5である。

 いやDD機ならUM 3DT持っとるやんけ、と自分でも散々ツッコんでいたのだが、いやいやアレ3DDなんて変態構成だからシングルダイナミックとは全然違うじゃん?、と悪魔が囁いてきたと言うか……(遠目

 余りにもしょーも無さ過ぎる理由でIYHしてしまったFD5だが、実はFiiOのシングルダイナミック型IEMのフラグシップモデル。……少なくとも、自分が購入した時点ではそう「だった」。
 現在は既にFD7という新型が発表されており、FD5のドライバーが「ベリリウムコーティングしたダイヤモンドライクカーボン(DLC)振動板」を使用しているのに対し、FD7はよりハイクラスな「ピュアベリリウム振動板」を採用している。

 個人的にベリリウムと聞くと「元素周期表でリチウムの隣りにあるアルカリ土類金属?元素」なんて高校化学的イメージが先行してしまうが、音響機器の振動板の材料として非常に優秀な特性を持っているのだそうな。但し加工難度が高く、基本的には高級機にしか用いられないらしい。
 実際、ピュアベリリウム振動板を採用したIEMやヘッドフォンはかなりの高額機ばかり。Focal Utopiaやfinal A8000辺りでググれば分かるが、恐ろしい価格が付いている。

 じゃあFD7もお高いんでしょう?と普通思うだろうが、……FD7の価格は60~70kくらいで、final A8000の凡そ1/3くらいしかない。
 ……中国製機器の価格設定は摩訶不思議としか言い様が無い……

 敢え無くフラグシップモデルの座を追われてしまったFD5だが、決して安物ではない。33kもするのだから、一般人目線で言えば十分過ぎる程の高級イヤフォンだろう。地味に海外を中心として評価が高く、低域を強調した鳴り方が好評な模様。
 先述したように、本来自分はニュートラルでいっそモニター的なバランスが好きなのだが、にも関わらず怖いもの見たさで敢えてFD5をポチってしまった。まー海外であんだけウケ良けりゃ地雷ってワケじゃなかろうて、なんて楽観視の賜物というか。


 そして最後にFostex TH610だが、…………最早、Oracle、FD5と立て続けの散財で金銭感覚のタガが外れてしまった果ての所業としか表現出来ない…………(死魚目
 密閉型はATH-WP900持ってて気に入ってるけど、手持ちのオーバーヘッド振り返ったらソレだけじゃ密閉型少な過ぎるよなあ?、なんて一瞬でも思ってしまったのがアホだった……

 それでも、当初物色していたのはあくまでも密閉型モニターのハズだった。HPH-MT8とか、MDR-M1STとか、Hi-X55とか、ADAM AUDIOのSP-5とか。
 にも関わらず、途中で「モニター、ってんならDT1990PROはガチだし、T60RPも素性的には近いし、K701だってモニター扱いされたりするし、HD25は言わずと知れた定番だろ? ……あんまモニターに拘らなくても良くない??」と要らん事考えてしまい路線変更。最終的に、リスニング機とモニター機の中間的な質が期待出来そうなTH610へ行き当たってしまった。……我乍らバカの極みも甚だしくて涙がちょちょ切れそうだ……

 ただ、コレでいい加減音響機器への散財に終止符を打てるのでは、という思いが無きにしもあらず。
 リスニング用としても申し分無い開放型本格モニターのDT1990PRO。名目上はリスニング機だが素性故にモニター的側面もあるT60RP。パッドの交換によりバランスが好ましくなったATH-WP900。そして今回のTH610が加われば、もうこれ以上の投資は当分必要無くなるだろう、と。
 ……ぶっちゃけ「マトモな密閉型モニターヘッドフォン」の席が未だ空白のままだが、余り気にしてはいけない。気にしたら負けよ……(目逸


 毎度御馴染衝動買い、それも今回は立て続けに三機種も纏め買って、御値段何と――――まさかまさかの170kオーバー
 ……幾ら臨時収入のおかげで財布の紐がゆるゆるのガバガバになったとしても、流石にそろそろ紐をキツく縛っておきたいと思う今日此頃である……(遠目


 経緯の説明はgdる一方なのでもう打ち止めにして、そろそろ個別に音やら作りやらの感想をば。
 以下、断りが無ければソースはShanling M3X(4.4mm) or ADI-2 DAC FSを、音源はFLAC(44.1kHz/16bit~192kHz/24bit)・DSD(2.8~5.6MHz)を使用。


<Thieaudio Oracle>
 SA6のバランスと3DTのインパクトを両立出来そうな機種として、水月雨のVariationsと迷った末に選び抜いたOracleだが。
 結論から言えば――――正に、ドンピシャだった。

 SA6と同様に上から下まで万遍無く鳴らしつつも、SA6では少々物足りなかった低音のインパクトがダイナミックドライバによって確り補完されている。加えてESTドライバの効果だろうか、歯擦音やシンバルといった高域の音がSA6よりもハッキリ鳴るため、SA6よりも全体的に刺激的でノリが良い。
 ではOracleは3DTに近いかと言えばそうではなく、やはり音楽の主となる中域をBAドライバが担っているだけあって、中域の繊細さや鮮明さが間違い無くSA6に似ている。3DTは音の質感が根本的に異なる印象。
 中域の明瞭感、高域の透明感、低域の衝撃感をバランス良く揃えており、それぞれが担当しているドライバを踏まえて考えると、成程コレがハイブリッド(正確にはトライブリッド、だが)構成の強みか…!、と感心させられてしまった。ESTは例外として、正しくBAとDDの「良いトコ取り」を体現した音だと感じた。

 イヤーピースだが、恐らくはSpinFit CP100(Mサイズ)が付属しているのを即座にAET07(Mサイズ)に変えて聞き始めた。
 が、どうにも高域と低域の主張が激し過ぎて聞き疲れ易い傾向があったので、試しに3DTで使っていたSpinFit CP145(Mサイズ)と交換してみた所、コレがバッチリ。高域と低域が落ち着いて程良い塩梅に収まってくれた。

 因みに、SA6とOracleの最大の違いがズバリこの「高域と低域の主張による聞き疲れ」。更に言えば、「ボーカル等の中域」に焦点を当てるならSA6の方がOracleよりも鮮明。
 まあ、この辺は高域と低域にそれぞれ静電ドライバとダイナミックドライバを充てがってきちんと鳴らせるようにした代償だろう。欠点というより個性の類と言うべきではなかろーか?
 なのでSA6との使い分けは多分可能。声をメインで聞く時や、聞き疲れを回避したい時はSA6、様々な曲をノリ良く楽しみたいならOracle、ってトコ。3DTも使い分けに加えるとすれば、打楽器の存在感と軽快な聞き心地を両立したい時に3DTはベストかな?


 こんな感じで、Oracleの音には大変満足。SA6はSA6でやっぱ良いなーとても手放せんわー、と改めて思えたりしたので、そういう意味でも満足出来ている。

 …………が。
 そんなOracleだが、音以外の点でやや難あり。

 尤も、音質に直接影響するような深刻な「難」ではない。単純に、クオリティチェック(QC)がやや甘いなー、と思っただけのことである。
 具体的に言うと、

・プラグの銀カバー部にやたら小キズが多い
・イヤフォン本体のフェイスプレート表面に少し不自然に凸凹している部分がある

 この二つ。
 正直、遠間から見る分には全く分からないレベル。

 だが曲がりなりにも60k近い商品なので、こういった仕上げはしっかりしていて欲しいところ。現に、若干価格が上回るSA6や、国内で買うと価格が近い3DTなどはこういった「難」が皆無なので、流石にメーカーとしての年季が違うなあ、と。
 パッケージデザインもパッと見では高級感漂うものの、細かい所で「雑……(苦笑」と思ってしまうのが如何にもガレージメーカーと言うか大手っぽくないと言うか。


 ケチを付けてしまったが、音そのものは本当に気に入っているし、その「ケチ」も音とは関係無い部分の話、しかも目立たない程度でしか無い。ので、気にし過ぎて買い渋る程のモノじゃないかと。
 逆に言えば、その辺をどーしても気にしてしまうならちょっとやめといた方が良いかも? 代理店噛まないから文句つけてもどーしよーもない可能性大だし。
 見た目の細かいアラを「……中華だから仕方無いネ!」とサッパリ割り切れるなら素直にオススメです。


<FiiO FD5>
 Oracle到着までの手持ち無沙汰解消として購入したので、実はOracleより早くその音を聞いているFD5。
 事前にレビュー漁った際見た「ズドンシャリ」という表現に思わず笑ってしまったものだが、…………確かに、噂に違わぬ「ズドンシャリ」だった。

 FD5を使用する前に、事前にSA6や3DTで耳を慣らしておいたのだが、一聴してすぐに分かるレベルで低域の主張が激しい。思わず「ぐお゛っ」なんて声が口から溢れた程。……未だ純正イヤーパッド付けてた頃のATH-WP900でも流石にこうはならなかったぞ。
 ただ同時に感心させられたのが「主張の激しい低域に、中域~高域が決して隠れきっていない」こと。中域~高域が低域にマスクされておらず、明確に聞こえてくるのには舌を巻いてしまった。流石はハイレゾ世代、とでも言うべきだろうか?
 後日、手持ちのシングルダイナミックから同じく低音強めであるIE8やSE215を引っ張り出してAP80で聞いてみたが、FD5の明瞭感が此等とは桁違いに優れていることを実感。改めて再度関心させられてしまった。

 しかしながらそうは言っても、当方、低音やや控えめでスッキリした鳴りが実に心地良いHeart Mirror [心鏡]を愛用しているような身。FD5の再生能力が過去の機種よりも格段に優れていることは十分理解出来たものの、このままでは常用が難しいのが本音。
 そこで、どうにかしてズドンシャリの「ズドン」を低減出来ないかと試行錯誤してみた。

 初め、「ズドンシャリ」であれば中域を補えばバランスが良くなるのでは?、と考えてイヤーピースに付属品の「ボーカル重視型」のMサイズを使っていた。ソレを御馴染AET07(Mサイズ)に変えてみる。
 すると、中域~高域に変化が見られた。引っ込み気味だったボーカル(中域)が多少前に出てくるようになり、高域も存在感を示すようになった。恐らくはAET07の開口部の広さによる影響と思われる。

 それでも、低域の主張がちと過剰に感じることに未だ変わりはないので、次の一手として「純銀線によるリケーブル」を実行してみることにした。値段が手頃で前々から興味があった純銀8芯線「KBEAR Limpid Pro KBX4913」のMMCX4.4mm仕様をAliexpressで購入、約二週間後に受領。
 到着後、いつものようにテスターでピンアサインを調べて異常の有無を確認。問題無かったので4.4mm端子を接点復活剤(大昔に音屋で買った「Cleansable」)でメンテ。FD5から付属ケーブルを引っこ抜いてKBX4913を充てがい、音を確かめてみた。
 一聴して驚愕。低域の主張が緩和され、代わりに中域〜高域がもっと前に出てきてより明瞭に聞こえるように。特にボーカルは引っ込み気味だったのが全く気にならなくなり、随分聞き心地が良くなった。低域も元から相当強かった為か、緩和されて尚十分な量感を持っており、むしろ締まりが出てきて宜しい限り。
 今年入ってからちょいちょい試しているリケーブルだが、銀メッキ銅や銅銀合金ではなく純銀という極端な素材故か、恐らく今回が一番明確に音が変わっている。事前の下調べでは「KBX4913は音の重心が高くなり過ぎる」という声が散見されたので少々不安もあったものの、結果的に大成功で大満足。

 純銀線リケ後のFD5は高域から低域まで全域に渡ってシャキッとした音色で、低域偏重気味だったリケ前と比較してバランスが良く元気な鳴り方。低域が引き締まってタイトになり、主張が増した中域〜高域により輪郭が明確な、瞬発力を感じるエッジの立った鳴りっぷりが聞いていて楽しい。
 音の繊細さはSA6やOracleの方が優れているが、明瞭感では負けておらず、曇り籠もりの類とは無縁。BA機とはまた違った、若干粗くも力感有る質感が面白い。また同じDD機でも3DTはFD5より小型のドライバを複数積むユニークな構成(3DT:中高域10mm*1・低域7mm*2、FD5:12mm*1)で、質感こそダイナミックドライバという共通項を感じるが、音色はまるで異なる。明確で力強いFD5に対して、一歩か半歩下がったような落ち着き?余裕?を感じる3DT、みたいな。


 ……さて。
 イヤピとリケーブルのおかげでFD5を常用出来る見込が立ったのはまっこと喜ばしいのだが、…………コイツも、Oracle同様にQCの面でやや難有りだった。
 つーか問題の程度考えるとOracleよりも格段に酷かった。

・付属するケースの不具合*2回
(筐体保護の為に付いているベルクロ固定式仕切板の縫製ミス)
・音道管終端のメッシュフィルターの脱落

 ケースの方は未だマシとして、メッシュフィルターの脱落は正直マジで焦るからホント勘弁して欲しい……既にケースの件で販売店やら代理店やらに散々問い合わせた後だったんで、もう一度丁々発止やるのが面倒臭くなり自力で慎重にセッチャコして補修したが、本来なら製品丸ごと交換案件である。
 FiiOは音響系中国メーカーではかなりの古株だし、DAPなんかは六桁するような高額商品も扱っているので、流石にQCしっかりしてるだろうと思ったら……………………ごらんの有様だよ!(溜息


 既にFD7という上位機種が出ていてフラグシップモデルの肩書が形骸化していたり、デフォのままでは低域が強過ぎるので多少手入れを要したり、どうにもQC甘めだったりと些か手の掛かるイヤフォンだが、価格考えれば悪くはない、ハズ?


<Fostex TH610>
 自らの密閉型オーバーヘッド遍歴を辿ると、
SRH440(売却済)→HD25 Originals→ATH-ESW9(売却済)→Aurvana Live!ATH-WP900
 ……と、どっちかってーとフルサイズよりもポータブルサイズばかり。なので、今回購入したTH610が初めてのフルサイズな密閉型オーバーヘッドということになる。

 前述の通り、当初は密閉型オーバーヘッドといってもモニター機を仕入れる予定だったが、気が付けば随分とゴツいシロモノを選んだもんである。
 そして現物を手中に収めてその音を確かめてみると、……成程、コレは「良いモノ」だ、と最早気に入ってしまう辺り我乍らほんとチョロいというか……

 既に発売から五年程経っているTH610だが、国内外共にレビューが思った以上に少なく、果たして自分の耳に合うかどうか不安はあった。しかしその数少ない感想の声を読み込む限り、
「抜きん出た部分は無いが逆にどの要素にも穴が無い優等生、音楽制作にも活用出来る癖の無い音」
 ……こんな感じで、何とも自分好みな文言が書かれているもんだから思い切ってチョイスしてしまった。

 ブツを受領後、豪勢なパッケージを開封して、ゴッツくぶっとくホームユースらしく無駄にクソ長い3mケーブルを本体に繋ぎ、6.3mm標準プラグを接点復活剤でメンテしてから使用開始。

 聞き始めて直ぐに、上述したレビューの文言を実感した。
 兎に角「普通に」良い音。

 高域から低域まできちんと鳴り、解像感・分離感・明瞭感の何れも優秀。高域は良く伸び、中域は明確に聞き取れ、低域は確かな圧を伴って響く。当然ながら曇り籠もりやボヤけは皆無。
 驚いたのは空間表現?で、フルサイズ故か耳の傍らよりもう少し遠くから鳴っている感覚を得られる。これまで密閉型はポータブルサイズしか使ってこなかったが故だろうが、密閉型らしからぬ、宛ら開放型めいた広さを感じられてびっくりした。

 加えて装着感が優秀。重量はそこそこあり、側圧がソフトなので普通なら頭頂部の負荷が心配になるトコだが、意外な程快適。ヘッドバンドの曲線が絶妙なのだろう、長時間着用していても殆ど気にならなかった。流石は高級リスニング機である。
 中庸で聞き心地の良い音に加えて装着感が優れているもんだから、ぼーっとしているとその内ヘッドフォンの存在を忘れてしまう。肩の力を抜いてリラックスしながら音楽を楽しめる、という点では我が愛すべきファースト・ヘッドフォンのHD595と似ているかも知れない。

 一方で、音に確り意識を向けると「音楽制作にも活用出来る」というレビューは決して間違いではないな、とも。自分が保有しているオーバーヘッド機で高解像度と明言出来そうなのは、やはり世代が相応に新しいT60RP、DT1990PRO、ATH-WP900辺りだが、TH610はそれらと比べても全く遜色無いスペックを感じさせた。
 と言うか、一聴した際の「違和感の無さ」に関してはTH610がダントツと言って良い。個人的に、イヤフォンやヘッドフォンは聴き比べ等で様々な機種を適宜スイッチしていると、替えた直後は聞こえ方に少々違和感を覚えてしまって、一曲分位の時間が経たないと耳に馴染まないのだが、TH610はサッと被って音を出して直ぐに「良い音」を感じられる。コレ、先述の三機種ですら中々こうは行かないので、地味に魂消てしまった。音色や質感がナチュラル過ぎる。凄ぇ。

 元々オーバーヘッドからオーディオにのめり込み始めたのもあるが、何だかんだ言って音楽鑑賞の花形はオーバーヘッドのヘッドフォンだなあ、と。先に感想を述べたOracleやFD5、既に愛用中のSA6や3DTといったIEMも確かに良い音を聞かせてくれるが、TH610の良さを散々実感した後だと「そもそもまるで次元が違う…」と改めて思わされてしまったっつーか。カテゴリ違うんで単純な比較は用を為さんかもだけど、やっぱTH610のようなオーバーヘッド・ヘッドフォンの方が圧倒的に音の感触が自然なので。


 音や装着感以外の部分だが、流石の日本メーカー、例え中国製造であってもちゃんとQCが行き届いてる感じ。ヘッドフォン本体、ケーブル、付属品(と言ってもレザー調ポーチのみだが)、どれもケチを付ける所が無い。何ならパッケージングも言うこと無し。
 箱は二重構造になっていて、表面がツルテカの薄めな紙箱の中に、異様にシッカリした蓋付き箱が収まっていた。蓋を開けると箱の内側にスポンジが充填されていて、そのスポンジにビニール袋に入った本体がスポッと収まっており、また同じくビニール袋に入ったケーブルが同梱されている、という塩梅。

 自分は嵩が張る事を承知で、この箱一式を収納ケースとしてそのまま残すことにした。
 いやまあ正確に言えば保有中のオーバーヘッドは須らく箱を捨てずに取っといてあるのだが、ただでさえ最早TH610は手持ち最高額クラスの機種になってしまうんで半端な保管をするワケにゃ行かんし、フルサイズで折り畳み機構の類なんぞあるハズも無いTH610本体と、ホームユース向けリスニング機ならでの矢鱈長い3.0mごん太ケーブルを、一式纏めて傷付かないよう丁寧に保護出来るケースを買おうと思うと、結構な額になってしまう。ソレにケースの分だけますます嵩張って収納を圧迫するし…
 だったら、それならいっそ大本の箱を活かしてしまうのが手っ取り早かろう、と思った次第。


 IEMに始まりいつの間にか物欲が脱線してIYHしてしまったTH610だが、いざ使い始めると価格相応の良さを感じてすっかりお気に入りになってしまった。……ほんとチョロ過ぎるぞ自分……
 密閉型なのであんま音漏れ気にしなくて良い(※但し外使い出来るレベルで漏れが少ない訳じゃないので注意!)し、モノとしての質感も音の感触も上々で個人的に言うこと無し。……ぶっちゃけ、単純な満足感ではOracleやFD5以上かも。(ぇ
 癖の無さ、ニュートラルとかナチュラルとか、とかく只管「中庸さ」を好んで求めているならマジでオススメ出来る逸品。ホント良いオーバーヘッド・ヘッドフォン。



 何とも景気良く立て続けに衝動買いしてソレはもうド派手に出費したワケだが、買い物内容にそこそこ満足出来ているとフトコロの貧しさを忘れられる不思議。現実逃避じゃね、って? あ゛ーあ゛ー聞こえなーい(目線明後日
 強いて言うならば、後はまあ、前述したように未だ空席である「密閉型モニターヘッドフォン」の座を如何に埋めるか、だが…

・MDR-M1ST:個人的にソニーはあんま好きじゃない
・HPH-MT8:音は良さそうだが、重いという声が気になる
・Hi-X55:価格と期待される音質、デザインのトータルバランスでは最有力
・ADAM AUDIO SP-5:ずっと気になっていたゾネホンに初挑戦?出来て、しかも「本格志向なクリエイター御用達のモニタースピーカーメーカーがプロデュース」という謳い文句にめっちゃそそられるが、如何せん価格高過ぎ

 もし今後入手するなら、恐らくHi-X55かSP-5辺りだろうか。今は無きAKGウィーン本社のエンジニアたちが手掛けた前者、モニタースピーカーの有名メーカーとUltrasoneがコラボした後者、国内外のレビュー漁る限り何方を選んでも損はしなさそう。
 しかしオーディオ製品に対する個人的なスタンスとして、「出来るだけ色々なメーカーの製品を味わってみたい」という考えがあるのよなあ……そこを踏まえるなら保有中のK701とある意味被るHi-X55よりも、純粋なゾネホンではないとは言えS-Logicの効果を十分確かめられそうなSP-5の方が若干有力かねえ。

 ま、何れにしても暫くは自重せんとね、財布の中身がね…………(死魚目

2021/08/16

PCメンテナンス雑記:簡易水冷の冷却液交換補充

 先日、毎度毎度一年以上サボっていたBTOデスクトップPCの内部清掃を決行した。
 グラボ外したらヒートシンクにホコリがめっちゃ沈着していて泣く泣くファンまで外す羽目になったものの、ノウハウは以前の清掃時に得ていたので、清掃自体は割りかしテキパキ進められた。
 仕上げにホコリ予防として、予め散々ストックしておいたエアコンや換気扇用の外付けフィルターの切れっ端をケースの穴やらスリットやらに貼り付け、その後ケーブル類を再接続。取り敢えずファンが正常に回るか確認する為に、パネルを一枚外したまま電源を投入。……ファンの回転を確認。よっしゃ清掃終了――――

 ――――とは行かなかったんだなぁ、コレが。

 よーく動作音を聴いていると、ファンの回り方が妙に速過ぎる。しかも今まで聞いた事が無い音が混じっている。
 何じゃコレ?と思いつつWindowsを起動し、デスクトップ右上に固定してあるハードウェアモニターのウィジェットを見ると、

「――ちょ、何やこのクソ高いCPU温度……!?」

 平時、高くても60℃未満には収まるはずのCPU温度が80℃オーバーまで上昇していて滅茶苦茶ビビりまくる。慌ててPCをシャットダウン。
 何が起きた?!、とむっちゃ焦りながらUEFI画面を起動すると、……今度はCPU温度が100℃まで一気に上昇していってしまい、再び急いでシャットダウン。

「(CPUクーラーがマトモに機能しなくなってるのか?? いやファンはちゃんと回ってるしUEFI画面でもちゃんと回転数出てたよな? ……………………何で????(憔悴))」

 流石にこのままデスクトップPCを使うことはとても出来ないので、ノートPCとスマホを用いてトラブルシューティング。
 CPUクーラー、それも我がBTOデスクトップPCに使用されている「簡易水冷(若しくは一体型水冷)」をキーワードに、冷えない原因を調べてみた。

 ……原因はすぐにアタリが付いた。
 「冷却液(クーラント)の不足」である。

 簡易水冷は基本的に密閉されたパッケージで提供される「メンテナンスフリー」のパーツだが、それでも長期間の使用によって、封入された冷却液が徐々に揮発して減少していくものらしい。そんで揮発による冷却液減少でCPUをちゃんと冷やせなくなったら製品寿命で御役御免、と。
 ……言われてみれば先の内部清掃時、水冷のラジエーターをケースから外したり付け直したりする際、内部からやたらじゃぶじゃぶ音がしていたような。満杯ギリギリ、とまでは言わないが、冷却液をそれなりの量しっかり充填出来ているならもうちょっと音が大人しくても良さそうな風情ではあった。
 因みに簡易水冷の寿命は凡そ五年前後だとか。……そして自分のデスクトップPCは購入から丸五年が経過し既に六年目に突入している。…………嗚呼、成程ね…………(溜息

 尚、冷却液の不足以外だと「CPUグリスの劣化」という原因も考えられたが、実際にグリスの塗り直しを行っても症状の好転が見られなかったので、この線は無しに。

 異常の原因に思い当たるフシがあるとは言え、何分初めて体験する事例である。このまま即座に必要な物々を買い揃え始めるのは勇み足過ぎんか?と躊躇われたので、一度マシンの購入店にHP上のフォームから問い合わせてみた。……そして後日来た返事に曰く「その様子だと恐らく冷却液不足っぽい」。つまり此方の予想通りらしい。さいでっか…
 そんな訳で購入店からめでたく御墨付?を貰えたので、改めてメンテナンスに必要な物品の買い揃えを開始。

 先ずは交換用の冷却液だが、

・CORSAIR Hydro X Series XL8 Performance Coolant Clear

 ……コレを使うことに決めた。

 今回冷却液の補充を試みた簡易水冷「Fractal Design Kelvin S24」だが、補充用冷却液の指定が全く無く、メーカーHPを見ても冷却液を扱っている様子は無かった。
 Kelvin S24の場合、所謂「本格水冷」のメーカーとして有名な「Alphacool」と組んで作られた製品らしいので、Alphacoolの冷却液が手に入れば間違いないか?と考えたものの、在庫が無かったり適正価格で買えなかったりしたので流石に断念。

 何か良さ気な冷却液はないか、と色々探して見付かったのが上述したCORSAIRの製品。銅・真鍮製パーツが使用された水冷システムに最適化された冷却液なんだとか。

 簡易水冷はCPUと直接熱を遣り取りする「水枕(ウォーターブロック)」こそ銅製の機種が殆どだが、その一方で温められた冷却液を冷やす為のラジエーターはアルミ製であることが多い。そしてこの「銅とアルミ」という組み合わせは二種の金属間の電位差による「電蝕」が生じやすいのが玉に瑕だったりする。(※高校化学の「イオン化傾向」や「電池の原理」を参照)
 しかし、Kelvin S24は簡易水冷にしては珍しくラジエーターが銅製で、更に水枕/ポンプ部とラジエーターを繋ぐチューブの末端に本格水冷と同規格の真鍮製フィッティングを用いるなど、やや本格水冷寄りの作りをしている。更に言えば、そもそも冷却液の交換を考慮していない設計であることが普通の簡易水冷にあって、冷却液の補充/排出口があるという「メンテナンス可能」な構造を採っているのが大変珍しい。

 上述のCORSAIR製冷却液をチョイスした最大の理由がコレ。「銅・真鍮製パーツ向け」なら、ラジエーターが銅製のKelvin S24には正にうってつけじゃん、と。

 他に買い揃えたモノは、

・200mLビーカー
・漏斗
・洗浄びん:マシンのメーカーから冷却液補充時に使う事をオススメされた
・シリンジ
・CPUグリス:PC購入時に付属していたものが足りなくなった時の保険
・精製水:古い冷却液の排出後に内部をすすぐ為

 ……こんなトコ。
 冷却液も込で大体7k強のお買い物と相成り申した。

 生憎と平日は作業時間を確保出来そうに無く、週末の土曜におっ始めることを決めて、それまでに上述の物々を通販で発注し受取。
 そして迎えた土曜。予め部屋を掃除し、作業スペースを確保してから、作業開始。

 マシンからケーブルを全部引っこ抜いて作業台に置き、先ずはCPUクーラー固定用のバックプレートをガムテでしっかり固定。……コレやっとかんと後で水枕/ポンプ部を再び取り付ける際にプレートが脱落してややこしいことになっちまうからなー……
 バックプレートを固定したらケースを横向きに寝かせて、CPUクーラーを水枕/ポンプ部→ラジエーターとケースから外していく。ついでに作業スペースの確保としてグラボも外す。
 適当な容器(使わなくなって死蔵していた古い大きめのタッパーを使用)にポリ袋を被せて、ティッシュやらキッチンペーパーやらを丸めてポイポイ放り込み、廃液処理の準備。
 CPUクーラーの水枕に付着しているグリスを一度全て拭い綺麗にして、M/B接続用ケーブルが作業時の邪魔にならないよう束ねてテープで固定。
 作業台に新聞紙を敷き、廃液用容器を置いて、補充用冷却液とすすぎ用精製水、洗浄びんをスタンバイ。液が垂れたり溢れたりした時の対策として適当な大きさにカットしたキッチンペーパーを適量準備。

 此処迄御膳立てしたところで、ようやく水枕/ポンプ部の冷却液補充/排出口を開封。
 垂れた液が水枕に付着しないよう向きを考慮しつつ、廃液用容器の上でひっくり返し、古い冷却液を排出(※1)。ラジエーターも持ち上げてよく揺すり、しっかり出し切る。
 古い冷却液が出切った所で、補充/排出口周辺の液垂れを拭って綺麗にし、先ずは洗浄びんに精製水を150mL程(※2)入れて、ゆっくりと少しずつ、こぼさないよう慎重に丁寧にCPUクーラーへ注いでゆく。注ぎきったら補充/排出口を閉じ、水枕/ポンプ部とラジエーターを持ち上げて動かし、精製水をよく馴染ませてすすぐ。終わったら先程と同様に排出。
 すすいだ精製水を排出したら、洗浄びんに補充用冷却液を180mL(※3)程入れて、再び注いでゆく。洗浄びんの構造上しっかり最後まで注ぎきれなかった(吸い上げきれなかった)ので、残りはビーカーに移して慎重に注ぐ。注ぎ終わったら補充/排出口をしっかり閉じる。

(※1:冷却液には不凍・防腐対策としてエチレングリコールやプロピレングリコールといった有機溶媒(しかも有毒!)が添加されており、絶対にそのまま水道に流してしまわないように!
 ペーパー等に吸わせて可燃ゴミとして廃棄するのが鉄則!

(※2:マシンのメーカー曰く、Kelvin S24に必要な冷却液は約200mLとのこと)

(※3:ブログ等で、熱膨張による冷却液の体積増加を加味して若干少なめに充填する方が良い、との記述有り。ギリギリを攻め過ぎると液漏れの危険性が高いとか)

 ……以上で冷却液の補充は終了。後は水枕を拭って取っ払った分のCPUグリスを補った上で、CPUクーラーをM/Bとケースにセッティングし直し、並行して使用した器具を後始末。残った液滴をペーパーで吸ってゴミ箱へブチ込み、その後水道水で何回もよーくすすいでからひっくり返して乾燥。
 マシンを元通り戻し終えたらケーブル類を再接続し、ドキドキしながら電源を投入。UEFI画面を起動。
 すると――――

「――――嗚呼、ちゃんと冷えとる…………(安堵の溜息と脱力」

 補充前はあっという間に100℃まで跳ね上がっていたUEFI画面でのCPU温度が、補充後は50℃を少し下回る辺りで落ち着くようになった。
 そのままWindowsを起動して様子を見ると、こっちでは無負荷なら35℃前後で安定している。正にバッチリ。
 ……よ、良かったああぁぁ~~~~…………(疲弊

 側面パネルを外して様子見た限り、水漏れは大丈夫そう。まあ大分マージン取って充填したしな…
 また、補充前に聞こえていた覚えの無い異音も収まった。どうやら水枕/ポンプ部が冷却液不足で鳴くようになってたっぽい?


 異常の発見から解決まで一週間程掛かった訳だが、……いやー普段散々使い込んでるモノが一週間も使用不能に陥るのってやっぱしんどいモノがありますな。しっかり直ってくれて心底ホッとした。

 意外だったのは古い冷却液も補充用冷却液も殆ど水と変わらないサラサラの液体だったこと。前者は緑青のせいか若干青みがかってたが、後者はクリアカラー買ったからホントに水と変わらん質感だった。
 此処で件のCORSAIR製冷却液の成分を見ると、

・プロパンジオールグリコール(恐らくプロピレングリコールのこと)
・純水(精製水)
・殺菌剤

 となっており、成程基本的には水で出来ていると考えてよさそうである。
 確かに、有志による水冷PCについてのWikiを見ると、

「冷却性能だけを考えるならば、水だけを使用するのが最も冷却効果が高い」

 ……なんて書かれている。
 まあ実際、化学的な話するなら水って比熱(熱容量)高いしね…、というか。熱をたっぷり蓄えられますからなー。


 そんなこんなで思わぬアクシデントにてんてこ舞いさせられたが、コレも一つの経験ってことで。
 無事に終わったってのもあるが、中々楽しい時間っちゃ時間だったかもねー?(苦笑

2021/06/09

オーディオ雑貨色々雑感

 先日(前々回の記事)で
これで当分は音響関連で出費することも無かろう
 と言ったな。

 あれは嘘だ。

 いや嘘も何も次の記事でケーブルやらイヤーピースやらについて散々書き殴ってたやんけ


 前回の記事で「プロモーションコードで安く出来たからケーブル(NICEHCK SpaceCloud)買っちゃった」と書いたが、それが届いたので簡単に雑感など。
 また、……………………AliExpressのセールで安くなってたのを良い事に性懲りも無くイヤフォン(お値段5k弱)を買ってしまったので、ソレについても。(目逸



<イヤフォン用ケーブル雑感:
  NICEHCK SpaceCloud 6N銀メッキOCC&7N OCCミックス8芯ケーブル>
 前回プロモコードで結構値引き出来たー、と喜んでいたSpaceCloudだが、…………後日、他のメーカー公認?セラーがついった上でフォロワー割引を開催しているのを見付けて、試しにコードを貰ったら、…………自分がメーカー公式で買った時より2kも安くなるんでやんの!何なんだよチクショー!(血涙
 …………そんで気が付けばqdc4.4mmとMMCX4.4mm仕様のSpaceCloudを追加発注していたという。最初に注文した0.78mm2pin4.4mmと合わせて、主要なコネクタが全て揃うことになってしまった。御値段しめて16k。我ながらマジで何やってんだろうか…………(死魚目

 日尼からポチったOalloyと違って、今回はAliExpressで注文したおかげで全てのケーブルにNICEHCK印のイヤフォンケースが付属していた。4.4mm端子にもカバーが付いていて大変有難い限り。
 届いたSpaceCloudを手に取って見てびっくりしたのはその存在感。8芯ケーブルだけあって太く、そしてゴッツい。4芯のOalloyと違ってズッシリ来る。以前KZ ZSN Proと同時購入したKB EAR 4842は、芯数で言えばSpaceCloudの倍である16芯だがそれでも柔らかいし軽いケーブルだった。逆に言えば、半分の芯数にも関わらずKB EAR 4842と同等の太さとソレを遥かに上回る重さを持っているSpaceCloudがおかしいというか、ぶっちゃけコレどうなってんのというか…

 一先ずテスターを当てたところ、どのケーブルも断線混線の類は無さそうだったので一安心。異常が無い事を確認出来たので、手持ちのイヤフォンを幾つかピックアップしてSpaceCloudを試してみた。
 実験台は以下の機種。

・0.78mm2pin:Westone Westone4R
・MMCX:Shure SE215
・qdc:Unique Melody 3D Terminator

 最初に、最も早く到着した0.78mm2pin仕様をW4Rに使用。……かつては大いに感銘を受けていたW4Rも、DUNU Studio SA6やUM 3DTの音を知った今では「…………こんなにバランス悪かったっけ…………??」と、使う度に何とも言えない気分になりがちだったり。SpaceCloudでその辺多少改善されんかなー、とか。
 W4Rの純正ケーブルを引っこ抜いてSpaceCloudと交換。Shanling M3Xの4.4mm出力にプラグ突っ込んで再生開始。そして2、3曲程聞き流す内に、「SpaceCloud」による音の変化を感じることが出来た。
 帯域バランス自体は殆ど変化無いものの、純正ケーブルだと酷かったW4Rの「高音の粗」が、SpaceCloud使用時には大分緩和されてそこそこ聞きやすくなった。また低音の鳴りが幾分ハッキリして、全体的に純正ケーブルよりも「音が整った」。……シビアな言い方だが、「聞くに堪える」レベルまで引き上がった、とでも言うべきか。
 流石に帯域バランスが激変する程の変化は得られなかったとは言え、それでも細かいブラッシュアップ的な変化は感じられたので、これなら未だW4Rを使っていけるかなー、と。特に「高音の粗」はW4R使用時に気になるポイントだったので、此処が改善出来そうなのは嬉しい。

 続いて、MMCX仕様をSE215に使ってみた。まあ手持ちのイヤフォンでMMCX使われてるのがSE215だけだから他に選択の余地無かったけど。
 案の定此方でも帯域バランスが変わる程の変化は無し。ただ、少々緩い鳴り方だった低音に引き締まりが感じられたので、やはり「クオリティの底上げ」的な効果は期待出来る模様。

 最後に、qdc仕様をUM 3DTに使っているOalloyと交換する形で試したが、……此方は元々のOalloyがちゃんとした作りのケーブルだからか、そんなに変化が無かった。
 尤も全くの無意味ではなく、OalloyをSpaceCloudに変えると「ステレオ感が増す」という面白い違いがあった。低音が僅かに強まるような感覚もあったが、此方は「……もしかするとプラシーボ効果かも?」というレベル。
 一方ステレオ感の強化は分かりやすく、逆にSpaceCloudからOalloyに戻すと音が真ん中(頭の中心)へ纏まるのがよく感じられた。音色自体はやはりと言うか激変しないので、基本的にはこの鳴り方の違いでOalloyかSpaceCloudかを決めることになりそう。一応、暫くはSpaceCloudで通してみるつもり。


 一本辺り凡そ5k強程度の出費となったSpaceCloud仕様別まとめ買いだが、今回はプロモコード使えたから安く買えているだけで元値は相当に高価い(現在20k前後)シロモノだってこと踏まえると、まあまあ悪くない買い物だったかね? 何だかんだ言ってリケーブルは全く効果無いワケじゃないんだな、と思えたし。
 Oalloyもそうだったが、SpaceCloudも元々の帯域バランスに大きく影響を与えるような変化は齎さないので、上述したように「音を整える」為なら意外にアリな出費かも。メーカー曰くフラグシップモデルらしいし、今後イヤフォン買ったらその都度SpaceCloud挿して試してみようかなー。



<イヤフォン雑感:HZSOUND Heart Mirror [心鏡]>
 Studio SA6やUM 3DTは確かに音良くて大変気に入っているのだが、…………このテのマニアの悪癖めいて、「気に入っているからこそ、ヘビーユーズし過ぎてキズモノにしたくない」という心持ちになってしまったのが運の尽き。
 出来れば10k未満、奮発しても15k未満で面白い機種はないものかとネットをフラフラしていたところ、二つ程良さそうな機種を見付けた。

 一つは「Moondrop[水月雨] Aria(2021 ver.)」。所謂アニメ・コミック的な「美少女キャラ」をパッケージに必ずあしらうことで有名?な中国メーカー「Moondrop[水月雨]」が今年リリースしたアンダー10kのイヤフォン。
 もう一つは今回購入した「HZSOUND Heart Mirror [心鏡]」。最近は専らイヤフォンケースなどのアクセサリー類を中心に販売している中国メーカー「HZSOUND」が久方振りに発売した、此方もアンダー10kのイヤフォン。
 DD一発構成、金属筐体、0.78mm2pinでリケーブル可能、アンダー10k、と共通点の多いAria(2021 ver.)と心鏡だが、細かく見ればAriaのドライバは振動板に「LCP(高分子液晶ポリマー)」を用いているのに対し、心鏡の振動板は「DLC(ダイヤモンドライクカーボン)」と、全く同じではない。値段もAriaは$79.99(※海外価格)なのに対し、心鏡は$50前後(※AliExpress価格)で、後者の方がもうちょっと安価である。

 どっちにするか割と真剣に迷ったのだが、丁度AliExpressのセールで心鏡が5k未満で買えそうだったので、思わずそっちに飛び付いてしまった。
 勿論事前にそこそこレビュー漁ったりしたが、驚いた事に心鏡は国内だけでなく海外(の某有名音響系フォーラム)でも高評価食らっており、これならまあ大丈夫だろう、と。Ariaも悪く無さそうだったが、如何せん出たばっかで評価が確定しきってない感あったし、今回はパス。

 注文から一週間と少しで届いた心鏡を、開封して現物手にして驚いたのはその小ささ。Studio SA6やUM 3DTと比較するとかなりちっこい。筐体の総体積はW4RやSE215くらいか? それでいて金属(亜鉛合金)使ってるからか、それなりに重みがある。中々どうして質感は悪く無さ気。
 地味に付属ケーブルは銀メッキOFC線の4芯仕立てと価格に反してマトモなモノを使用しており、イヤピも三種類同梱されているなど、パッケージングは非常にマジメ。……コレで5k弱なのだから中華イヤフォンってホント凄い市場である……

 取り敢えず、初めは付属ケーブルのまま音を聞いてみようとXD-05 Plus(with MUSES03*2)に繋いでみた。但しイヤピはSednaEarfit Light Short MSサイズに変更。
 Shanling M3Xから飛ばしたLDACを、XD-05 Plusにドッキングした05BL Proで受けて、いざ試聴開始。

 ――そして音出し一発目からびっくりした。
 何コイツめっちゃクリアな音鳴らすんですけど……!?

 事前にレビュー漁って音色やバランスについては大まかに予想していたが、実際に自分の耳で体験すると予想以上で驚きを隠せなかった。上から下までバランスが良好で、極端な誇張は無く、頗る聞きやすい音を鳴らしてくれる、というか。
 直近にSpaceCloudの実験台としたW4RやSE215は、Studio SA6やUM 3DTに慣れた耳だと正直低音過多に聞こえてしまったのに対し、心鏡はいたってフラットな調子で、バランスだけならいっそStudio SA6やUM 3DTに近いモノを持っている、かも。強いて言えば低域が少々控えめではあるものの、余程の低音狂でもなければ殆ど不足は感じないのではなかろうか。
 試しに、手持ちのイヤフォンの中からドライバ構成(DD一発)と帯域バランス(低域控えめ)が類似しているCL750を引っ張り出して心鏡と聴き比べてみたが、恐らく心鏡の方が鳴りがナチュラルで違和感少ないはず。CL750も独特な風味があって悪くないが、聞き心地が自然なのは心鏡だろう。

 此処でふと、「……心鏡にSpaceCloud使うとどうなるだろう?」と考えてしまい、そのままリケーブルを実行。0.78mm2pin4.4mm仕様のSpaceCloudをW4Rから没収し、心鏡に挿し替えてShanling M3Xの4.4mm出力で聞いてみた。
 そしてコレが実にドンピシャだった。心鏡の控えめな低域が見事カバーされて尚更バランスが良くなり、それでいて高域から中域も綺麗に響いてくれる、と一気に万能な音に。…………フォロワー割引で仕入れたSpaceCloudを合わせてもたったの9k程度なんだが、コレ一寸幾ら何でもコスパ良過ぎとちゃう??(困惑

 3Way6BAによる濃密緻密な表現が大変気に入っているStudio SA6、2Way3DDという変わり種ながらスッキリと聞き心地の良い鳴りが面白いUM 3DT。あくまでも心鏡は、この二機種を温存する為のサブ機として今回仕入れたのだが、……SpaceCloudによる化けもあるとは言え、想定を大幅に上回るクオリティにメインとサブの関係が逆転しそうである。(甘錯乱
 尤も、当のStudio SA6及びUM 3DTと心鏡とのじっくりとした比較は全然行っていないので、心鏡が二機種相手にガチで下剋上出来るかどうかは、マジメに聴き比べてみんと未ーだ未だ分からんがねー。

 因みに、海外の某有名音響系フォーラムに投稿されている心鏡のレビューで、よく見掛けたのが「駆動力が欲しい」という旨。出力がしっかりしていると迫力などがより良くなる、という感じ。
 幸い、自分が使用したXD-05 PlusやShanling M3X(※4.4mm出力)は比較的パワフルな出力元なので特段痩せた音には聞こえなかったが、スマホのイヤフォンジャックやiPod辺りに直挿しするつもりなら注意が必要かも。せめてドングルタイプのDACを挟むか、或いはいっそのことFiiO BTR5やShanling UP4辺りのUSB-DAC兼用Bluetoothレシーバーを使うことを考えた方が良いかも?
 ……心鏡そのものの価格は決して高価いモノではないのだが、上流にそこそこの環境を求められる辺りマニアックと言うか、如何にも所謂オーディオファイル向けだなあ、っつーか。



 しっかし……僅か一年程の間に高価格から低価格まで、またUSB-DAC/AMPやイヤフォン、DAP、果てはケーブルと、様々な価格帯・種類の中国製オーディオ機器を買いまくってしまったが、その質の高さには本当に驚く他無い。こういう「趣味の品」がどんどんレベルアップしているというのは、それだけ中国企業の技術力が半端無くなって来ているコトの証左であって、…………凄い時代になったもんだなあ。
 きっと今後も折に触れてちらほらと中国企業の製品を買うことになるだろうけど、……さてはて日本企業や欧米企業は、彼らの攻勢を前に踏ん張れるのかねえ……



※追記:Studio SA6・UM 3DTと心鏡の比較

 ADI-2 DAC FSを用いて三機種の音を聴き比べてみた。
 サクッと結論を述べてしまうと、やはりと言うかStudio SA6やUM 3DTは値段相応に聴き応えがあった。心鏡も決して悪く無い、いやむしろ健闘しているのだが、下剋上というワケには行かず。そりゃそーだわなー。
 心鏡は明瞭感こそ優れているものの、Studio SA6やUM 3DTを使った後では低域が控えめ故に重厚感が足りない、と感じてしまう。ではStudio SA6やUM 3DTは曇ってたり籠もってたりするか、と言うと全然そんなことは無く、低音の量感と中~高音のクリアさを確り両立しているのが流石。
 そんなStudio SA6とUM 3DTの差は聞こえる音の範囲。Studio SA6はUM 3DTに比べて高域はより高く、低域はより低くまで鳴らしている印象。一言で言えばワイドレンジ。それ故かStudio SA6は鳴りが濃密で情報量が多く、逆にUM 3DTは軽快でサッパリしている。甲乙付け難いが、本腰入れてじっくり聴き込むならStudio SA6、肩の力抜いて気楽に聞き流すならUM 3DT、って塩梅かねー。まあぶっちゃけ気分次第だけど。

 ただ心鏡はコスト考えれば十分過ぎるクオリティなのは間違い無いかと。控えめだがちゃんと響く低音と、明瞭感に富んだ中~高音による、やや高域寄りのフラットバランスでかなり自然な音色を、たったの5k未満で実現しているのはシンプルに凄いとしか言い様が無い。しかもコレでリケーブル可能とか沼に誘っているようなモノである。(ぇ
 日尼でもタイミング良ければAliExpressとほぼ同等の価格で買えるらしいし、「有線イヤフォンでより良く音を聞きたい」というポータブルオーディオ初心者へ気軽にオススメ出来るのではなかろーか。そしてDACやらアンプやらリケーブルやらイヤピやら底無し沼に引き摺り込んでしまおう!(ゲス顔

2021/05/07

オーディオ雑貨色々雑記

<イヤフォン用ケーブル雑感:
  NICEHCK Oalloy 高純度単結晶銅&高純度銅銀合金ミックス4芯ケーブル>
 先日海外版を個人輸入したUnique Melody 3D Terminatorだが、音やコストには大体満足しているものの、どーしても一つ気になってしまう所があった。
 それは――――付属ケーブルのすんごいチープさ。

 海外の有名なレビューサイトによると「銀メッキOCC(=単結晶銅)を使用した4芯ケーブル」ということで、決して安物のいい加減なケーブルでは無さそうなのだが、…………ケーブルスライダーがただの透明チューブってのは、幾ら何でも無いわー。見た目が余りにも貧相過ぎるやろー……(溜息
 因みに、UM 3DTの前に購入し見事我がレファレンスイヤフォンの座を射止めたDUNU Studio SA6は付属ケーブルが非常に豪華(「モジュラープラグ仕様」で「線材は銀メッキ単結晶銅(※単結晶、ってことは少なくともOCC以上のハズ)」で「8芯」!)だった。……だからこそ余計に、UM 3DT付属ケーブルの安っぽさが気になって仕方なかった次第。
 尚コレは海外レビューでも再三指摘されていたり。概ね「イヤフォン本体のクオリティに対してケーブルのソレが見合っていない」って感じ。そりゃそーだわなー。

 そこでふと頭を過ぎった――いや、過ぎって「しまった」のが「リケーブル」という選択肢。以前KZ ZSN Proを購入した際に試して、地味に感心したアレである。
 一応自分は「高々ケーブル如きに二万も三万も払ってられるかーい!」って庶民的?な感覚の持ち主なので、あんま高っ価いケーブルを買うつもりは毛頭無く、精々5k辺りの中国メーカー製ケーブルで手を打とうと考えていた。ついでに「UM 3DTの元々の音を変えたくないなー」とも。純正ケーブルのバランス嫌いじゃないしねー。

 そんな訳で先ずは情報収集からスタート。…………したのだが、線材について調べ始めた辺りで、当初の目算は呆気無く吹っ飛ぶことになってしまった。
 というのも、「線材にOCC以上のモノが使われているとほぼ確実に10k付近まで値上がってしまう」のだ。上述の通りUM 3DTの付属ケーブルは「銀メッキOCCの4芯ケーブル」なのだが、「最低限そのくらいのクオリティは欲しいなー」と思って篩いに掛けていくと、残るのは殆どが10k前後の品ばかり。5k辺りでは「OFC(無酸素銅)」が関の山。えぇ……

 正直、OCC以上の線材を諦めて、5k辺りで手に入る「銀メッキOFCの8/16芯ケーブル」とか「4N(=純度99.99%)の純銀線8芯ケーブル」で妥協しようか滅茶苦茶迷った。しかし有名ブログやら某匿名掲示板の中華ケーブルスレやらでレビューを漁ると、その辺のケーブルだとイヤフォンの音質傾向が結構変わってしまいそうで、躊躇。
 つーか「音質傾向に派手な影響を与えず、イヤフォンが元々持っている良さを堅実に引き出す」って希望はハイレベルな要求なのだと事此処に至ってようやく気付き、散々悩みまくった末、予算を10k前後まで引き上げて再度候補を絞り込んでみた。

 その結果最有力候補に挙がったのが、自前でイヤフォンの販売も行っている「NICEHCK」というメーカーの「Oalloy」というケーブル。
 UPOCC(=Ultra Pure OCC)という6N(=99.9999%)レベルの超高純度単結晶銅と、高純度銅銀合金の二種類の線材をミックスした何とも贅沢なケーブルで、「音を変えるというよりも、より良くする」シロモノなんだとか。正にドンピシャである。
 肝心のお値段は密林で10.9k、本国中国の巨大通販サイト「AliExpress」内のメーカー公式ストアで約14k程。贅沢仕様だけあってイイお値段――って、日尼の方が安いとかマジっすか??(歓喜
 ……しかしNICEHCKについて色々調べている中で分かったのだが、このメーカー、どうやら頻繁に期間限定セールを実施しているらしい。特にAliExpress内の公式ストアではとんでもない値下げをやってたりするようで、Oalloyも最安なら一時期8k辺りで買えた模様。何ともはや…

 Oalloy以外の高級ケーブルについても調べてみたが、何れもある程度「ケーブルそのものの個性が出る」タイプで、自分が求めている「ケーブルそのものの個性が控えめで、イヤフォン自体の良さを引き出せる」って条件に一番合致しそうなのはOalloyっぽい。
 今後セールが行われる可能性が無いわけではないが、モノを考えれば其程悪い金額でも無かろうと思い、密林でOalloyの購入を決断。自分が所有しているUM 3DT(コネクタがqdc2pinの中国版)に合わせ、qdc2pinコネクタかつ4.4mmバランスに対応した仕様を選択して注文した。

 んでついでに4.4mmバランス端子を3.5mmアンバランス端子に変換出来るアダプタも同時購入。…………いやコレにはワケがあって、当初は同種のケーブルを4.4mm版と3.5mm版で二つまとめ買いしてやろうと思ってたのよな。……あくまでも二本買って10k未満に収まれば、の話だが。
 蓋を開けてみればこの通り、Oalloy一本で見事10kを超過しとても二本買う余裕など無い。だが自分のレファレンス環境の最たるADI-2 DAC FSはアンバランス専門の機材であり、4.4mmケーブルだけでは「UM 3DT+Oalloy+ADI-2 DAC FS」という組み合わせでのリスニングが不可能になってしまう。
 そこで、「そーいやどっかでこんなもんがあったのを見たような…」と「バランス端子をアンバランス端子にデチューン?するアダプタ」を探してみると、上手い具合に良い品が見付かった。中国のオーディオメーカーCayinが販売する「3.5mm TRS to 4.4mm TRRRS変換アダプタ PH-35X」である。
 お値段は密林で43k。安価ではないが、製品のニッチさと「ケーブルを何本も買う手間が省ける」コトを思えばべらぼうに高価いわけでも無かろう、と割り切って即決してしまった。


 そんなこんなで、ケーブルやアダプタの為に何と凡そ15kも吹っ飛ばす羽目に。
 嗚呼、懐具合が貧しくなるばかり…………(死魚目


 ブツの到着後、最初に行ったのは「ケーブルの配線が間違っていないかどうか」の確認。「中華ケーブルはしばしば配線ミスあるから最初にテスター当てとけ」という声が某掲示板で散見されたので、道具箱からテスターを引っ張り出して左右の2pinが4.4mmのどこに繋がっているか確認。…………どうやら混線、断線の類は無さそう。良かったー……
 安心出来た所で、早速M3Xを用いてUM 3DT純正ケーブルによる3.5mmアンバランス出力と、OalloyにPH-35Xを噛ませた3.5mmアンバランス出力、Oalloy単独の4.4mmバランス出力をそれぞれ聴き比べてみた。
 簡単に箇条書きすると、

【純正ケーブル→Oalloy】
・低域に重厚感が出る
・相対的に高域が若干大人しいか?
・音の響きがやたら綺麗

【Oalloy3.5mm→Oalloy4.4mm】
・鳴りにメリハリが付く、専ら高域と低域
・分離感が強まる
・音像?がやや明確になるっぽい

 純正ケーブルは「銀メッキOCCの4芯ケーブル」、一方のOalloyは「UPOCCと高純度銅銀合金のミックス4芯ケーブル」。線材毎の音質傾向(※銀は高域、銅はやや低域が強まる?)を踏まえて二者を比較すると、ある意味妥当な変化と言えそうではある。Oalloyは銀を銀メッキではなく銅銀合金として用いているので、銀メッキOCCの純正ケーブルよりも高域が大人しくなるのは成程ね、と。
 むしろOalloyに驚いたのは低域や高域のバランスが変わったことよりも「音の響き、もとい残響が綺麗になった」トコ。多分銅銀合金なんて使ってるからだと思うが、音がよく響いて少し残響を残していくのが面白い。中でも高域は残響のサラサラした感触が何とも心地良い。
 前回の記事でUM 3DTとStudio SA6を比較した際「UM 3DTの方が鳴りが軽い」と評したが、その上で言えばUM 3DTとOalloyの組み合わせはStudio SA6に近いバランスになっている、かも? 正確なところは確り本腰入れて比較試聴しないとダメだが。

 3.5mmから4.4mmの変化も予想通りっちゃ予想通り。原理的に左右のクロストークが一気に下がるのだから、分離感増すのは当たり前だろう。
 ……ぶっちゃけ個人的には「……ちょっとコレ聞き疲れ易いかも?」なーんて感じてたり。聞こえ方が大分明確なもんだから長時間だとしんどそう。気楽に聞き流すならアンバランスの方が適していると思われ。


 ざっくり適当に音の感想述べるとこんな塩梅。純正ケーブル使用時からバランスが激変したりはしなかったので一安心。実際の変化も「鳴りに少々重みが出て、高域の響きがちょい綺麗になる」と好ましい加減なので割と満足。
 残念な点があるとすれば、ケーブルスライダーがスッカスカのユルユルで全然効果を発揮しないこと。また、付属するもんだと思っていたメーカーロゴ入りイヤフォンケースが影も形もありゃしなかったのにはちょっちガックリ来た。AliExpressの公式ストアだったらアレ付属したんかねえ…
(※補足追記:イヤフォンケースは案の定AliExpress販売分だけらしい。トホホ…)

 此処で今更音以外について言及すると、先ず取り回しは良好。某掲示板では「被膜ゴツい」と言われてたが、手に取って見るとかなり柔らかく好印象。
 qdcコネクタの精度や耳掛け部分の曲がり具合、Y字分岐の作りも問題無し。耳掛け部分はUM 3DTの純正ケーブル宜しく針金で曲げるのではなく、熱収縮チューブ?で最初から曲がった形を作ってある為、装着感が格段に向上したのは何気に有難い。
 不満は先程述べたようにケーブルスライダーが御粗末なことと、4.4mmプラグが簡単にバラせる(銀のカバーが接着固定されておらず、反時計に回すと外せてしまう)こと。後者は正直焦った。


 ところで。
 NICEHCKから最近「SpaceCloud」というケーブルがリリースされたのだが、…………ちょっと魔が差して、うっかり購入してしまったんだなーコレが!(ぇ

 SpaceCloudについて説明すると、コイツOalloy以上に豪華な所謂フラグシップモデルのケーブルで、何と「6N銀メッキOCC 及び 7N OCCのミックス8芯ケーブル」という超贅沢仕様。うわぁ……
 で、AliExpressのNICEHCK公式ストアの表記見る限り、普通に買うと20k~30kはするらしい。まあ「6N UPOCCと高純度銅銀合金のミックス4芯ケーブル」のOalloyが10.9kだったから、そのくらいの値が付いてもおかしくはない……の、か??(困惑

 とは言え、幾ら線材が豪華でモノが良さそうでも、自分はたかがケーブルに20kや30kも払う気は全く無い。
 では何故そんな阿呆みたいな高級ケーブルを購入してしまったのかというと、……………………簡単な話である。「めっちゃくちゃ値下げ出来た」のだ。

 上の方で「NICEHCKは頻繁に期間限定セールを実施している」と書いたが、何と自分がOalloyを注文した頃に、丁度運良くSpaceCloudのセールが実施されていた。
 正確に言えば、NICEHCKの公式Twitterアカウントで、SpaceCloudを10k以上も大幅値引きできるAliExpress用プロモーションコードが配布されており、ソレを使うことで本来なら20kは下らないハズのSpaceCloudが、何と四桁台で買えるようになっていたのだから驚く他無い。出血大サービス過ぎる…

 プロモーションコードは複数あり、中には僅か5k足らずまで値下げられるモノもあったようだが、生憎と自分が気付いた時には既に其程凄まじいコードは残っていなかった。
 最終的に自分が掴んだのは7k弱まで値下げられるコード。それでも元値を考えれば14k前後落とせたので、価格破壊、いや価格崩壊もいいトコであろう…

 ケーブルの仕様はUM 3DTだけでなくStudio SA6にも使うことを考えて、敢えてqdcコネクタではなく一般的な0.78mm2pinコネクタをチョイス。端子は4.4mmバランス。PH-35Xを仕入れたおかげで安心して4.4mmバランスケーブルを買えるのはホント助かる。ピンポイントなグッズを有難う、Cayin。

 SpaceCloudの到着は五月ということで、まーだまだ時間掛かりそうな御様子。
 ま、慌ててるわけじゃないからのんびり待つと致しましょー。



<イヤーピース右往左往>

 Studio SA6の購入後に買ったSednaEarfit Light MSサイズを封切りとして、より良い装着感を求めてSednaEarfit Light ShortのMSサイズMサイズを立て続けに購入したのだが、…………まっこと運の悪い事に、Mサイズの方に成形不良(青色不透明シリコンの酷いバリ残り)が見付かって、泣く泣く交換する羽目に。
 というか、SednaEarfit Light MSサイズにも遅ればせながら成形不良(半透明シリコンと白色不透明シリコンの境界面に黒い汚れが噛んでいた)が見付かって、代理店に問い合わせたものの腹立たしいことに全く返事が無く、しかしながら幸いにして購入先である密林がギリギリ交換に応じてくれて、何とか事無き?を得られた。

 …………と、思っていたのだが。

 後日送られてきた交換品のSednaEarfit Light MSサイズとSednaEarfit Light Short Mサイズを確認すると――――――――まさかの成形不良再び。しかも何方も全く同じパターン。おいおいおいおい…………(頭痛
 ものすんごくげんなりしながら再度返品手続きを始めてみると、交換品を更にまた交換、ということにはならず、今度は返金処理になった。まあ仕方無いわな……交換やのうて返金でも応じてくれるだけ有情じゃろうて……(遠目
 なお不幸中の幸いか、SednaEarfit Light ShortのMSサイズには露骨な成形不良が見当たらず、現在Studio SA6とUM 3DT用のイヤピとして使用中。

 …………しっかし、幾ら何でも品質管理がザル過ぎて流石に辟易しきってしまった。SednaEarfitシリーズは医療用シリコンを使っている為か、上手くマッチすればイヤフォンを外耳道に密閉固定出来るので大変気に入っていたイヤピなのだが、こうも連続して成形不良に当たると今後買う気が完全に失せてしまう。
 最近SpinFitがCP100+という医療グレードシリコンを使用した新モデルを発売したらしいが、チューブの内径が4mmで、ステム径が6mm程もあるStudio SA6やUM 3DTにはちょっと使い難いのよなー。開口部も狭いから多分音変わっちゃうし。

 返金が確認出来次第もう一度SednaEarfit Light MSサイズとSednaEarfit Light Short Mサイズ買い直すかなー、どうしたもんかなー…
 いっそSpinFitがCP145+とか出してくれれば本当は即買いするんだけどねえ…


 ――さて、愚痴りはこの辺にして。
 Studio SA6とUM 3DTをバッチリ装着出来るようにする為に色々買い込んだ(そしてその殆どを返品した)イヤピだが、多分イヤフォンに色々拘ってる人がその実最も手間暇掛けてるのがイヤピのチョイスだろうと思われる。
 自分の外耳孔・外耳道の大きさを把握することがイヤピ選びで最重要なのは間違い無いが、他にもイヤフォン次第で千差万別なステム長・ステム角度・筐体デザインによっても装着感は微妙に変わってくるので、イヤフォン毎に適切なイヤピを選び抜くには結構時間も金も掛かるのよなー…

 例えば、すっかりお気に入りになったStudio SA6やUM 3DTは、カスタムIEMを彷彿とさせる耳への収まりに優れたデザインの機種故、イヤピは気持ち小さめの方がより奥深くで固定可能。自分の場合、SednaEarfitシリーズで言えばMSサイズ(11.9mm)だとほぼジャストだった。
 ところが、UM 3DTはSednaEarfit Light ShortのMSサイズで外耳道を密閉出来て、シェル自体も外耳孔に密着出来るのだが、Studio SA6に同じモノを使うと外耳道の密閉感が甘くなってしまった。どうやらStudio SA6はUM 3DTよりステムが若干短いらしく、同サイズなら軸が長めである非Short版のSednaEarfit Lightを、或いは同じShort版なら1サイズ大きいMサイズ(12.6mm)を使う方が嵌まり加減良さそうな御様子。
 一方、AZLA MK2はStudio SA6やUM 3DTとは対照的に耳への収まりがかなり悪く、ステムが外耳道の奥まで入ってこない。なので耳穴の浅い位置、つまり外耳孔の辺りで固定する必要があり、イヤピはやや大きいサイズを選ぶのがベター。自分はSednaEarfitのMLサイズ(13.3mm)で何とか上手く固定出来た。

 ――まあこんな調子で、イヤフォンのデザインによって実際の装着感は目まぐるしく変わる為、イヤピ選びってのは本当に面倒なのだ。
 Studio SA6とUM 3DT相手にアレコレ取っ替え引っ替えしたことで得られた結論は、

・筐体の耳収まりが優秀なら小さめ、悪いなら大きめ
・ステムが長いならイヤピの軸は短め、短いなら軸は長め
・どうしても装着浅くなるなら大きめかつ長めで強引に密閉固定
・小さめのイヤピは同じサイズで軸の長短をバリエーション揃えとくといいかも

 前提として「耳の奥へ突っ込めるならその方がより良い」なら、小さめのイヤピは同サイズに対してイヤフォンのステム長に合わせられるよう長短二種類揃えておきたい。ぶっちゃけSednaEarfit LightとSednaEarfit Light Shortのコトである。
 逆に大きめのイヤピは基本的に耳収まり悪くて奥へ突っ込めない場合の妥協策なので、イヤピ自体の長さはあんま気にしなくて良いんじゃないかなー。筐体が耳からはみ出過ぎるなら軸短め使わにゃならんけど。

 尤も、イヤピの材質によってはより大きめでも問題無い場合あるんで、やはり実際に試して確かめるしかない部分も大きい。一例として、ペラペラなシリコンで出来てるスパイラルドット無印のLサイズ(14mm)と、傘に厚みあってガッチリした作りなSednaEarfitのMLサイズがほぼ同等の密閉感と言えば分かりやすいだろうか。
 まースパイラルドットも++版になってからはペラペラじゃ無くなったかもだが。でも++版は高過ぎるからねえ……四個で2kオーバーは正直ぼったくりだと思います。(真顔 とは言え成型不良少ないならそっちのほうがマシか…?(懊悩

 保有しているサード品イヤピと、それを使用しているイヤフォンの組み合わせを列挙してみると、

【SednaEarfit】
無印Mサイズ(傘径12.6mm、軸長10mm、軸内径5.4mm):TripleFi 10
・無印MLサイズ(傘径13.3mm、軸長10mm、軸内径5.4mm):AZLA MK2
・Light Short MSサイズ(傘径11.9mm、軸長8mm、軸内径4.5mm):Studio SA6、UM 3DT

【SpinFit】
通常径(CP100相当)Mサイズ(傘径12.25mm、軸長9.7mm、軸内径4mm):MDR-EX800ST
細径(CP800相当)Mサイズ(傘径12mm、軸長11mm):Westone4R

【スパイラルドット】
無印Mサイズ(傘径約12mm、軸長7.4mm、軸内径4.5mm):KZ ZSN Pro
・無印Lサイズ(傘径約14mm、軸長8.2mm、軸内径4.5mm):Sennheiser IE8

 一度、ストックしてあるSednaEarfit無印のMサイズとSサイズ(11.2mm)をUM 3DT相手に試してみたが、Mサイズは嵌まりが浅く元々長めの軸が災いして筐体が耳介から飛び出し、Sサイズはスッカスカでロクに密閉出来なかった。この事から、自分の耳は奥まで突っ込むなら12mm程、浅く嵌めるなら13mm弱辺りのイヤピを使うと丁度良いらしい。
 但しAZLA MK2とIE8は例外。何方も耳収まりが芳しくなく、固定するには大きめのイヤピで強引に密閉する必要があった。前者は単純に形状が悪過ぎるとして、後者はそんな奇抜なデザインしてる訳じゃないんだがなあ……ステムの角度が悪いんかね?


※追記:
 結局もう一度SednaEarfit Light MSサイズとSednaEarfit Light Short Mサイズを購入したのだが、…………………………………………成形不良、三度確認。(顔面青筋
 Light MSサイズは白色不透明シリコンの接合不良、Light Short Mサイズは案の定青色不透明シリコンにバリが残りまくっていた。

 …………何なんじゃこの品質管理の甘さはーーーー!!!! AZLAいい加減にしろーーーー!!!!(怒髪天


 三度の不良品にほぼマジギレして頭に血が上り、こうなりゃヤケクソじゃいと密林で憂さ晴らしめいてIYHしたのが以下の二つ。

SpinFit CP145 Mサイズ(傘径12.5mm、軸長9.9mm、軸内径4.5mm)
acoustune AET07 Mサイズ(傘径13mm、軸長8.4mm、軸内径4.4mm)

 んで、届いた二つをしっかり検品してみたが――――――――目立つバリ・キズ・歪みは、全然見受けられなかった。正に無問題。全く以て綺麗なもんだった。
 ……………………AZLAェ……………………。 そんなだから社名冠した機種で大コケしたんちゃうか??

 Studio SA6とUM 3DTでCP145とAET07を取っ替え引っ替えしてみたが、何方も装着感良好。痛みを伴うこと無くちゃんと外耳孔を密閉出来る。CP145もAET07も軸がSednaEarfitシリーズより柔らかく(特にCP145はふにゃふにゃ)、イヤフォンへの装着が非常に楽。最終的に、軸長がより長いCP145はStudio SA6に、より短いAET07はUM 3DTに充てがった。
 肝心の音だが、結論から率直に言えばどっちも悪く無さ気。無論キャラクターの違いはあって、CP145は高域のエッジが丸くなり、AET07はSednaEarfitシリーズに近い鳴り方。ただ何方もSednaEarfitシリーズより大人しめなのは、恐らく開口径(CP145:ほぼ軸内径通り?、AET07:4.86mm、SednaEarfitシリーズ:6mm)と軸の硬さの違いによるものだろう。SpinFitに関して更に言えば、以前Studio SA6にSpinFit通常径(CP100相当)のMサイズを使った際は高域がかなりマスクされたが、CP145ではそのような状態にはならなかった。
 地味に嬉しいのが、CP145もAET07も「耳垢がこびりつき難い」こと。シリコン表面がサラサラしているためか、耳垢がくっつき難く汚れ難い。SednaEarfitシリーズの表面は僅かに粗く、そのおかげでイヤーピース、ひいてはイヤフォンを外耳道内に確り固定出来るのだが、イヤフォンを耳から外した際に耳垢が付着していることが多いのが困り物だったので、コレは実に有難い。
 …………つーか、AET07コスパ良過ぎじゃね? 1k未満で1サイズ3ペア6個とかSednaEarfitシリーズの立つ瀬が無い(※1k前後で1サイズ2ペア4個)と思うのですがソレは……(遠目

 ……何と言うか、もう最初からCP145とAET07買っとけば良かったんじゃ?、って気分になってしまって遣る瀬無さが半端無い。耳垢付着し難いのなんてコロナ禍の余波で潔癖症気味な身にとって気が楽で凄い助かるし。物の見事に「医療用シリコンを使用」って謳い文句に踊らされてたっつーか…
 SednaEarfitシリーズの強みは「開口径の大きさと軸の硬さによるシャープな音」と「医療用シリコンを用いた厚めの作りによる摩擦が効いた装着感」の両立だと思うが、それらには代償として「外耳孔・外耳道に合った適切なサイズとタイプ(LightとShortの有無)の選択が必須」「異物感強め」「耳垢で汚れやすい」って弱点が有るのだと痛感。…………まあ言うまでもなく最大のウィークポイントは「成形不良多過ぎ問題」だが。2種類3パッケージずつ=合計6パッケージの全てで汚れ噛みやバリ残り、接合不良など何らかの異常が見られたのは、品管が余りにも杜撰過ぎて閉口モノである…

2021/04/19

ポータブルオーディオ色々雑感

 突然ですが。
 Shanling M3XとUnique Melody 3D Terminator、買いました。


 …………ぶっちゃけ、何時もの如く衝動買いである。ホント懲りねぇなお前

 Shanling M3Xは前々回の記事で話題にする程度には気になっていた機種だから未だ良いとして、Unique Melody 3D Terminator(※以下「UM 3DT」と記述)は何故IYHしてしまったのかというと、先日購入して大変気に入ってしまった「DUNU Studio SA6」とUM 3DTが海外レビューでよく比較されていたからである。
 3Way6BA(Low*2, Mid*2, High*2)機のSA6に対して、UM 3DTは2Way3DD(Low*2, High*1)機と正しく真逆のドライバー構成。そして国内正規流通品の価格はほぼ同額(SA6:60k弱、UM 3DT:55k弱)――――と思いきや、実はグローバル価格だとUM 3DTの方が圧倒的に安い(最安なら何と$319=35k弱!)という罠。えぇ…

 レビューを漁ってみた感じ、SA6と比較されるだけあってUM 3DTも概ね「バランスが良い」御様子で、2Way3DDという変態構成(※褒め言葉です)に反して音作りは手堅く纏まっている模様。
 SA6でフェイスプレートに使われていたスタビライズドウッド(※樹脂化した木材)をUM 3DTは筺体全体に採用し、SA6の赤に対してUM 3DTは青と、見た目も内部構成も対比が利いていて実に面白い。

 ……まあ、そんな訳で気が付けばUM 3DTをうっかりポチってしまったワケである。まる。
 財布の中身は如何ですかって? あーあー聞こえなーい(現実逃避



<DAP雑感:Shanling M3X ファーストインプレッション>
 当初は3/26(日)の発売となっていたが、昨今の時勢の都合で4/9(金)に延期されたM3X。バッテリーの保ちやコスパの良さに心が傾いていた所で、ついったでの入手報告を見ていたら辛抱堪らなくなってしまい、4/9の夜に国内代理店の公式通販で注文してしまった。
 New HiBy R6 2020とは最後まで悩んだが、R6 2020の「純正レザーケース込で凡そ100k」という価格がどうしても受け止めきれず、幾つか懸念はあったものの連続再生時間や価格で圧倒的に勝るShanling M3Xをチョイスした。

 週明けの火曜にブツが届き、就寝前のリスニングで使うために箱出しして最初に思ったのは、「成程、丁度良いサイズだわ」。超小型DAPであるAP80程は小さくなく、かと言ってスマホ程のフットプリントも無く。一方でスマホよりは厚みがあり、掌に収めやすく握りやすいサイズ感。
 筺体は殆どが金属で、握るとヒヤリとするのが何とも心地良い。特別安っぽい感じは無く、値段を考えれば十分なクオリティ。
 そして中国製DAPの嬉しいトコである「ガラス面の保護フィルムは予め貼付け済、しかも予備まで同梱」。AP80でも思ったがコレはホントに有難い限り。流石にサード品の上等なフィルム程良いモノでは無いが、元々フィルムを何の為に貼り付けているかを考えれば、この対応は十分過ぎると言えるだろう。

 取り敢えず起動を兼ねて先ずは充電するか、と充電器を繋いでみたら既にバッテリーがほぼ満タン近かったので、そのままセットアップ開始。一通り終わった所で、ATH-WP900と同附属4.4mmバランスケーブルを準備。……嗚呼、やっとバランス接続デビュー出来る……(遠目
 接点復活剤でケーブル側の端子をメンテナンス後、M3Xの4.4mmジャックに繋いで、SDカード内のライブラリから御馴染みの曲をセレクト。ボリュームをローゲインの50/100に合わせて再生開始。


「――!! ぅわ音量デカっ!?」
 いきなり相当な音量で鳴り出してめっちゃビビった。何じゃこの出力の強さ……?!

 正直、ローゲインの50/100程度ならもっと小さい音量だろうと高を括っていたので、初っ端からかなりの大音量が鼓膜を揺らしてきて心臓に悪いの何のって。……尤も最終的にはもうプラス10して60/100で聞いてたワケだが。
 しかし……WP900は比較的鳴りやすい機種とは言え、オーバーヘッドにハイゲインではなくローゲインで十分音量取れるのは意外。想像以上に高出力で驚かされた。

 音質については、……………………ちょっと後日改めて本腰入れて聴き比べんと多分M3X自体の音質とかは掴めんなコレ。我乍らホント馬鹿耳極まってるっつーか。(ぇ
 まー逆に言えば、一聴して「悪い」と思わない程度には確りした音とも言えるだろうか? 記憶の中でぼんやり比較すると、ADI-2 DAC FSのIEM端子未満で、XD-05 Plusとは同等って感じ。価格考えれば妥当な線だろう。

(※補足:
 後述のUM 3DTをM3Xの3.5mmシングルエンドに繋いで、デュアルDACモードで聴いてみた所、最初にUM 3DTの再生に用いたAP80と比較して「音がはっきりくっきりする、もとい音像?が明確になる」感覚を得られた。少なくともAP80よりは良さ気かな?、と)

 システムのレスポンスなんかは正直予想以上。試しに入れてみたAmazon Musicで多少もたつくくらいで、基本的には至って快適そのもの。……率直な話Amazon Musicはアプリの出来が余り良く無い気がするので、アレがそこそこ動いてくれるだけでもかなり上出来だと思われ。
 OSはほぼ素のAndroidで、風情が違うトコがあるとすればGoogle Playストアがプリインストールされていないコトか。その代わりApkPureというアプリが入っており、此奴でパッケージファイル(.apk)を直接落としてインストールすることになる。
 ……尚、実はこのApkPureでGoogle Playストアそのものを直接ダウンロードできるので、「Google Playストアがプリインストールされていない」って部分が何の意味を成していなかったりする。おいおい…

 デフォルトのミュージックアプリはShanlingのオリジナル。……だがコレ、厳密に言えば恐らくは「HiBy Music」のメーカーカスタム版と思われる。その前提で言えば、音質チューニング機能のMSEBや、HiBy Link機能が省かれており、純粋に端末内ファイルを再生することに特化した潔い作りに変わっている。高音質CDプレーヤー等を作っていた、元々本格的なオーディオメーカーであるShanlingらしいっちゃらしい、かね?

 現在、密林でサード品のTPUジャケットを注文して到着を待っているトコ。純正のレザーケースはマジモンの牛革ではなくあくまでもフェイクレザー(PUレザー)で手汗等による経年劣化が懸念される故、気楽に使えるTPUジャケットにした。
 ……が、コイツどうも中国の業者がマケプレで出品しているモノらしく、到着まで結構時間掛かるっぽい。ぐぬぬ……UM 3DTは一週間程度でちゃんと届いたというのに……



<イヤフォン雑感:Unique Melody 3D Terminator ファーストインプレッション>
 国内正規流通品がグローバル価格よりも大分ぼったくってることが分かったので、海外版の購入を決意したUM 3DTだが、ショップを色々調べている内に「購入先によって商品の仕様が色々ある」事が分かってきた。
 具体的には、

――――――――――――――――――――――――――――――
・日本版(国内代理店のMixWaveが販売):
 ケーブルコネクタが一般的な2pin(0.78mm?)
 筺体が青
 価格は¥54,890(税込)

・グローバル版(米国のショップMusicTeckが販売):
 ケーブルコネクタが一般的な2pin(0.78mm?)
 筺体が濃青とブラウンのハイブリッド
 価格は$319.00(日本に送る場合は+$50掛かる模様?)

・中国版?(中国のショップHiFiGoが販売):
 ケーブルコネクタがqdc型(ケーブル側がカバーになっているタイプ)の2pin(0.78mm?)
 筺体が淡青
 価格は$349.99(クーポンで$10程値下げ可能)

※以上、価格は全て記事公開時点でのもの
――――――――――――――――――――――――――――――

 ――と、3パターン程あるらしい。
 三つ目の中国版だが、Unique Melodyの中国公式サイトでUM 3DTの写真を見るとこのタイプの画像が貼られていたので、そう判断した次第。

 この中で日本版は価格から却下。後はグローバル版と中国版だが、個人的に接続面がフラットになっている一般的な2pinコネクタは、何かの拍子に端子がグニッと折れてしまわないか不安なので、より確実に接続出来る(気がする)qdc型にしたいと思い中国版を選ぶことに。
 それにグローバル版より中国版の方が若干安かったしね! ……実を言えば色的には日本版が一番好みではあったのだが……(遠目

 つーワケで、UM 3DT中国版を国内でも利用者が多そうな中国のオーディオショップ「HiFiGo」で注文。詳しくは店名でググると情報がたっぷり出てくるのでそっちの参照を強く推奨。自分が文章連ねるよりずっと分かりやすいし。(ぉ
 注文から到着までの流れはこんな感じ。

――――――――――――――――――――――――――――――
某日 ショップに注文
3日後 出荷
4日後 深センの仕分け施設に到着
5日後 深センを出発、国際空港へ到着
6日後 中国を出発、日本着
7日後 通関手続完了、泉佐野郵便局で引受、新大阪郵便局南港分室に引継
8日後 最寄の郵便局に到着、配達完了
――――――――――――――――――――――――――――――

 注文から出荷までに少しラグあったのは土日を挟んだのが大きいと思われ。
 ソレ込みでもほぼ一週間程度で中国から届いてんだから大したもんだ…

 到着した荷物を見てみると、案の定というかダンボールの上からガムテぐるぐる巻状態。テープをさくさくとカッターで切ってダンボールを開けると、Unique Melodyのロゴが入った化粧箱をプチプチに包んだだけの超シンプル梱包が出てきて苦笑。
 化粧箱を開くと、最初にお目見えしたのは韓国Dignis製ケース。AZLA MK2に付属していたもののデザイン違いなので御馴染みのブツ。ケースの中を見れば、そこには白いケーブルと淡青に染まった一対の筺体が収められていた。

 UM 3DT本体を出してしげしげと眺めてみる。……うん、日本版とは全く異なる水色のシェルが面白い。中々悪くない見た目。コネクタはちゃんとqdcタイプ。思ってた通りの仕様が届いて一安心。
 3.5mm端子を接点復活剤でメンテナンス後、M3X購入に伴うmicroSDカードの挿し替えでADI-2 DAC FSから外していたAP80に繋いで音出ししてみた。因みにイヤピはデフォのまま。


「……おー、成程確かにバランス良いな、コレは」

 海外レビューでよく比較されているSA6もそうだったが、上から下まで満遍なくバランス良く鳴っているのが実に好み。決して極端なドンシャリやカマボコではなく、高域・低域過多でもなく、全帯域過不足無く鳴らしている感じが大変宜しい。オールジャンルイケそうで思わずニヤリ。
 とは言えコレだけではSA6とモロにキャラ被りしてしまうトコだが、聞き込むとやはりSA6とは違うなあと思う点が幾つか散見された。

 先ず「分離感がSA6程強くない」。SA6は明瞭感と分離感が非常に優れていたのだが、UM 3DTはもうちょっとその辺大人しめ。勿論、UM 3DTにも曇り籠もりは殆ど無く、意識向ければ特定の音を拾えるレベルの分解能は備わっているが、時折「スタジオモニターに使えるかも?」とまでレビューされていたSA6程ではない。
 じゃあソレがマイナスに働くかと言えばそうではなく、むしろ絶妙な塩梅で「聞き易い音」に仕上げられているのが中々どうして巧いトコロ。Unique Melodyのチューニングの妙と評すべきだろうか、2Way3DDという特徴的な構成に反してとても聞き心地の良い、聞き疲れ難い音に纏められているのには素直に舌を巻く。

 次いで「高音域がやや伸びない?」点。特に大編成のダイナミックレンジ広いオーケストラなんかで顕著だが、高域にやや頭打ち感を感じるコトがしばしば。まあ再生可能周波数帯域はSA6の方が上にも下にも大分広い(SA6:5Hz~40kHz、UM 3DT:20Hz~20kHz)ので、スペックの差がそのまま出てるのかも。

 そして案の定「音の感触が違う」。そりゃ6BAと3DDでは違ってて当たり前なのだが、その違いが何とも面白く思えてしまうのだから仕方無い。
 上手く表現し難いが、手持ちのオーバーヘッドで言えば「モニター機(DT1990PRO)とリスニング機(ATH-WP900)の差異」的な? 音楽の構成要素をバラしに掛かるようなシビアさがUM 3DTには薄く、それよりも全体的な纏まりや鳴りの元気さを重視している印象を受ける。
 中でも低域は顕著で、SA6の鳴りっぷりも十分上等だったが、UM 3DTの低域には「そうそう、コレだよコレ!」と思わせられる説得力――「低音の響き」が十二分に感じられた点は見逃せない。

(※追記[210420]:
 UE 3DTのイヤーピースをSednaEarfit Light MSサイズに変更し、M3XからADI-2 DAC FSにUSB入力、IEM出力を用いてSA6(※此方も同じイヤピ)と本格的に聴き比べてみたら、当初とはやや異なる感想を得られた。つーかUE 3DT、付属のイヤピだと全然密閉出来てなくて鳴りがめっちゃ軽い状態だった事が発覚。バカ耳ェ……orz

 同じ曲をリピートしながらUE 3DTとSA6を往復している内に分かってきたが、「UE 3DTの方が鳴りが軽い」。或いは「SA6の方が音の量が多い」。特に中域以下で明確。UE 3DTからSA6にスイッチするとその濃密さに驚く。逆にSA6からUE 3DTへ移るとスッキリした聞き心地になる。恐ろしいのはSA6で、それだけ濃ゆい鳴り方しといて音が全くゴチャ付かんのは一体どうなってるの…
 更に高域の出方もSA6の方が容赦無く、UE 3DTはマイルド。それ故「UE 3DTの方が耳に優しい」。SA6はとかく音の厚みが半端無く、それでいてキッチリ各音をバラせる分離感を持ち合わせてるので情報量がヤバい。要は聞き疲れやすい。その点、UE 3DTはあっさりしており、SA6より肩の力を抜いて聞き流せるユルさがある。
 かなりざっくりした言い方になるが、UE 3DTはSA6よりも「コンパクトな鳴り方」だと感じた。スッキリ軽い風情がそう思わせるというか。手持ちの他の機材で例えるなら「DT1990PROとT60RPの差」が近いか。情報量のDT1990PROとSA6に対して、もう少しイージーリスニング気味に楽しめるT60RPとUE 3DT、みたいな)


 ……とまあ、バランスに優れた鳴り方、という大まかなキャラクターはSA6とよく似ているUM 3DTだが、何だかんだ言ってメーカーやらドライバ構成やらスペックやら色々違ってるだけあって、コレなら両方使い分けるのも十分アリだな、と。何よりSA6より安いおかげでちっとばかし気楽に使えるのが有難い。(ぇ
 一見イロモノなドライバ構成に面食らいやすいが、実際は極めて聞き易く纏まりの良い、角が取れた穏やかな鳴らし方、ってのが正に「Unique」。国内レビューに見られた「BA型のような音」なんて評も聞いてみれば何となく分からんでもなく思えたり。低音の質感で「あーやっぱD型だわ」ってなるけど。

 しっかし、国内価格の55k弱は大分ぼったくりよなー。SA6と比較してケーブルや付属品が随分とチープで簡素だし、40k未満とは言わんからせめて45k前後辺りまで値を落とすべきと思うがねえ。MixWaveはSA6を海外価格よりも実質安く国内で売ってるDUNU代理店のサウンドアースや、Shanling M3Xを海外価格とほぼ同程度で捌いてる国内代理店のMUSINなんかを見習うべき。



 それにしても、僅か二ヶ月足らずでDUNU Studio SA6にShanling M3X、Unique Melody 3D Terminatorと、随分とポータブルオーディオ環境が充実しちゃってまあ……どれも買って良かったと思えるものばっかだから、妥当な買い物ではあったのだけれども。
 これで当分は音響関連で出費することも無かろうて。…………無い、よね??(乾笑

2021/04/03

イヤフォン雑感:DUNU-TOPSOUND Studio SA6 ファーストインプレッション

 目星付けてるDAPについて調べていたハズが、気が付けば凡そ60kする高級イヤフォンをIYHしていた。
 な、何を言っt(以下略



 ……取り敢えず、毎度の如く弁解から。

 元々は海外の有名な某音響系フォーラムにShanling M3Xのレビューが上がっていたのを見付けて、ソレをざっくり読んでいたのだが、レビュアーがM3Xに繋いだイヤフォンとして本機が記述されていたのである。
 イヤフォンメーカーとしてのDUNUを一応知ってはいたのもあり、偶々、そうホントにマジで何の気無しに、本機がどういう機種かググって調べてみて、…………正にそのフォーラム内で、かなりの高評価を食らっているのを目撃してしまったのが運の尽き。

 一頻りレビューを翻訳機能を駆使しまくって読み込んでみると、
「ダイナミック型に定評のあるDUNUがリリースした、流行りのハイブリッドではなく純粋なマルチBA機で、ダイナミックドライバは含まれていないが低音は十分出ており、上から下までしっかりバランス良く鳴らしてくれる」
 ――概ねこんな雰囲気で、何れのレビューもかなりの好感触。しかも一部では「レファレンスモニターとして使える程バランス良好」とまで書かれていて非常に驚いた。
 ……つーか此処のフォーラムのレビューで、酷評らしい酷評が見当たらないって一体どういうことなの……?(驚愕

 値段を調べてみると、代理店を通した国内正規流通価格で60k弱。海外通販で直輸入すると$550くらいなので日本円換算で60k強――って海外価格よりも国内価格の方が安いんかい!? しかも直輸入は関税乗っかかる懸念を踏まえれば更に値打ち度が上がるワケで…………幾ら何でも代理店頑張り過ぎちゃう????(困惑
 それに60k弱で済むなら約65kで買ったATH-WP900よりも値打ちじゃん? もうこれは買いじゃね??(感覚麻痺

 樹脂化した木材をフェイスプレートに使用した小洒落たデザイン、カスタムIEMライクなシェル形状、モジュラープラグにより2.5/4.4mmバランスと3.5mmシングルエンドを自在に切り替えられるケーブル、音質の切り替えギミック、兎に角バランスに優れた鳴り方――――と、個人的にストライクを多数食らいまくってしまい、…………気が付けば、衝動的に某店で注文してしまった次第である。
 ……………………何と言うか、我ながら毎度毎度懲りねえなぁ??(諦観


 そんなワケで、遂に手を出してしまった高級イヤフォン。やっちまったなぁ!
 いやしかしまあ冗談抜きに青天井の世界なので、コレでもかなり安いっつーか最早エントリークラスみたいなもんかもしれんが…

 箱出し後、先ずは装着感をチェック。デフォのイヤピは付属品の白のMサイズが嵌っていたが、…………なーんかイマイチ密閉性が悪い。つーかあんま耳の奥まで突っ込めてない気がする。コレは宜しくない。
 そこで手持ちのサード品から、深々突っ込めそうなイヤピとしてSpinFit通常径のMサイズをチョイス。……お、良い感じに密閉成功。んじゃ一先ずコレで。

 ケーブルのモジュラープラグは3.5mmが装着済みだったので、そのまま我がレファレンス環境であるADI-2 DAC FSのIEM出力にジャックイン。
 適当なロスレス音源(FLAC44.1kHz/16bit~192kHz/24bit)を再生してみた。


 個人的にイヤフォンはヘッドフォンと違って、耳に嵌めてすぐに音出しした直後と、一曲程聞き流して耳が慣れた辺りとで、音の感触がかなり変わってくる。
 実際、本機も聞き始めは「……んん?こんなもんか??」と思ったが、それでも取り敢えず一曲を最後まで再生して、それからもう一度最初から、今度は気持ちを入れ替えて真剣に慎重に聴き直してみた。
 すると、

「――――!?」
 その音の感触の良さにびっくり。つーか何じゃこの明瞭感と分解能の良さは……?!

 レビューで予めイメージしていた通り、帯域バランスは頗る良好。確かに上から下までまんべんなく鳴っている。低音の量感も十分。外耳道が音で震える感触が確り得られる程。
 だがソレより何より、全体的な鳴りのクリアさと、個々の音に意識を向けた際の分離感の良さに只管感心させられた。所謂「音像」が明確で、「解像度」が相当に高い感じ。

 ……そして、不思議な事にそれでいて「全く刺さらない」。裏を返せば多少「刺激に乏しい」と言えるが、明瞭感と分解能が良過ぎる為か欠点が霞んでしまっている。国内のレビューで本機の音が「シルキー」と評されていたが、成程的を射た表現だろう。余りにも「聞き心地が良過ぎる」。
 音像は明確明瞭、表現は微細繊細ながら、耳を突き刺すような刺激は一切皆無で、長時間でも苦も無く聞き流せてしまう。正に絹の如く大変滑らかな鳴りっぷりだが、明瞭感と分解能が優秀なのに加えて、思った以上に響く低音のおかげか、楽曲の「迫力」がちゃんと表現されている。それ故この聞き易さに反して中々「聴き飽き難い」のは、特筆に値するのではなかろうか。

(※補足:
 「SpinFitの開口部がSA6のステム径より細く、ノズルが少し隠れてしまっている」点が何となーく気に掛かり、後日「SednaEarfit LightのMSサイズ」を御馴染の密林で購入しイヤピを変えてみたところ、高域が若干刺さるくらいエッジが立つようになった。どうやらSpinFitはSA6の高域をマスクしていた模様。おいおい…
 SednaEarfit Lightでは開口部がステム径とほぼ釣り合っており、高域の変化はソレが理由と思われる。ぶっちゃけとても好みの塩梅に変化してくれたので完全に大当たり。装着感も言う事無し。SpinFitの刺さりゼロなシルキーサウンドも悪くないが、やはり高域は多少エッジ立ってる方が好物なので…
 以下、御手数ですがあくまでも「SpinFit通常径(CP100相当)のMサイズ」を使用時の感想として御読み下さい。(平謝))

 散々SA6の音にびっくりした後、「コレは是非とも手持ちの他のイヤフォンと聴き比べなければなるまい」と思って、以下の機種を引っ張り出した。
・Westone4R
・TripleFi 10
・Klipsch X10
・CL750
・AZLA MK2
 そんで此等とSA6を、ADI-2 DAC FSのIEM出力相手に取っ替え引っ替え適宜挿し替えてみた。
 …………端的に言って、聴き比べてみた事を後悔する羽目になった。
 
 理由は単純明快。「SA6の音が良過ぎて話にならなかった」。
 ぶっちゃけレベルが違い過ぎて勝負にすらならん有様。いやマジで。SA6クオリティ高過ぎ。クリアさ、滑らかさ、分離感、帯域バランス、何れも断トツだった。やべぇ。
 ……確かに値段はSA6がぶっちぎりで高価いが、真逆此程差があるとは思いもしなんだ……

 一応、匹敵とまでは言えずともそれなりに健闘していたのはTripleFi 10とCL750、AZLA MK2の三つ。どの機種も鳴りに明瞭感があり、またSA6には少ない高域由来の刺激が結構含まれていて良い感じ。
 中でもAZLA MK2はSA6に次いで新しいだけあって、流石に悪くなかった。低域にダイナミックドライバを使っているおかげで迫力バッチリ。……むしろ三つの中だと、最も古いモデルの10proが未だに通用しそうな塩梅なのがおかしいっつーか。

 逆に参ったのはWestone4RとKlipsch X10。特にW4Rは一聴して帯域バランスの違和感がとんでもなく、大いに混乱させられた。X10は帯域バランスはさておきクリアさが今一つなのが悩み所。
(※暫く後XD-05 Plusで、少し大音量気味に改めてW4Rを鳴らしてみた所「聞くに堪えん程では無いか…?」と思えたので、聴き比べでの違和感は音量によるものかも?)


 今まで自分は、基本的に音質だけを求めるなら、
「ヘッドフォン>>(越えられない壁)>>イヤフォン」
 ――である、という認識を持っていたのだが、SA6の音はちょっとソレを改めさせるだけの破壊力を持っていた。「音の質感、感触」がヘッドフォン(特に最近レファレンスとしているT60RP、DT1990PRO、ATH-WP900辺り)に極めて近く、一聴して違和感を殆ど感じられないのだから魂消る。此程の音像と表現をイヤフォンで得たことが無いので、ぶっちゃけカルチャーショックレベル。
 高級イヤフォン、侮り難し。

 不満があるとすれば、「高域に刺激が無い」こと。所謂歯擦音やシンバル等の辺りがマジで全く刺さらないため、もうちょっとエッジ立ってても面白いのになー、と思ってしまう。
 ……いやはや全く以て贅沢な話だが。

 SA6の音を手持ちのオーバーヘッドで例えるなら、T60RPとATH-WP900(with stPad2)の中間だろうか? 全体的なバランスの良さや鳴りの滑らかさにT60RP、クリアさと低音の量感の両立にATH-WP900っぽいエッセンスを感じなくもない、という印象。
 尤もその二機種はSA6よりもうちょっとダイナミズムがあったと思うが、……幾ら何でも、設計にかなり余裕持てるオーバーヘッドとインイヤーモニターをその点で較べるのは酷ってもんだろうよ。


 音のことを散々書き連ねたところで、音以外のこともちょっと書いておこうかと。

 デザイン、もといフェイスプレートだが、自分のはかなり赤々した色合いだった。代理店のページに掲載されている写真を真に受けるなら、相当に青っぽいプレートがありそうなものだが、…………冒頭で述べた海外の某有名音響系フォーラムのレビューに貼られていた写真を見る感じ、どうやら基本的にそこまで青々しいプレートは無さそうである。
 なので、「プレートは概ね赤っぽいかも?」という点は注意した方が良さ気。因みに質感自体は至って良好で文句無し。

 ケーブル。単結晶銅の銀メッキ?で8芯らしい。結構太く、とても確りした作りで此方も質感良好。固すぎず軟すぎずで程々の取り回し加減。何よりモジュラープラグを採用しているおかげで、3.5mmシングルエンドや2.5/4.4mmバランスといった現在の主要な接続方式を、ケーブル一本で全て賄えるのが有難過ぎ。
 確か、超高級DDイヤフォンで有名なDITAもプラグ部分が交換可能なケーブルを使っていたはず。だがあっちは価格がヤバいことになってる(※最上位機は300k近い)ので、100k未満の機種にもちゃんとした?品質のモジュラープラグ式ケーブルを同梱してくれるDUNUは良心的だなあ、と。

 付属品は充実の一言。ケースやイヤピ、クリーニングツール、交換用プラグ(2.2/4.4mm)、3.5mm→6.3mm変換アダプターなど、一通り揃っている。イヤピが三種類も付いてたのにはちと面食らった。でも結局使わなかったのが何ともアレだが。
 箱出しの際感心したのだが、左右のイヤフォン本体にはそれぞれ別個に袋を被せてあって、シェルに傷が付かないよう丁寧に配慮されていたのが地味に嬉しい。なお袋は捨てずにそのままケースへしまう時使っていたり。

 装着感はイヤピにもよるだろうが、少なくとも自分は先述の通りSpinFit通常径(CP100)のMサイズで十分密閉出来た。その上でシェル全体がカスタムIEMライクな形状故に、耳の窪みへすぽっと収まるため、自分に合ったイヤピを適切に選択出来れば凄まじい遮音性を得られること請け合い。
 ……正直、こんなにも遮音性高いイヤフォンは初めて経験したのでちとビビった。間違っても自動車・バイク・自転車等の運転中に使用しないように!(真顔

 音質の切り替えギミックは公式の表現が何ともあやふやでイマイチどう変わるのか掴みづらかったが、有難い事に海外レビュアーが何とわざわざf特を計測してグラフを掲載してくれていた。感謝。
 ソレによると、低域が少々持ち上がる、所謂バスブースト的な効果がある模様。実際、そうと分かった上で聴き比べてみると、確かにスイッチがONの位置にある際は低音の量が増えている気がしないでもない。
 ただ個人的にデフォルト状態(スイッチ位置が「1」の時)でも低音量は十分だと思うので……勿体無い話だが、当分この機能を使うことは無いかもしれない……(遠目

 此処でまっこと今更ながらSA6のスペックを見てみると、
――――――――――――――――――――
(※以下公式代理店製品ページより引用)
重量:11g
周波数帯域:5Hz-40kHz
インピーダンス:60Ω at 1kHz
感度:113+-1dB at 1kHz
THD:<0.5% at 1kHz
――――――――――――――――――――
 ……と、イヤフォンにしては結構インピーダンス高めなものの、能率が113dBある為か特別鳴らし難いとは思わなかった。ADI-2 DAC FSのIEM出力の-20.0dB辺りで既に結構な大音量で、鳴りの滑らかさ故更に音量を上げても全然問題無く聞けてしまったり。ダイナミックレンジ広い大編成のオーケストラなんかはついつい音量を上げがちだが、その場合難聴には要注意!
 詳しい人に曰く「イヤフォンのインピーダンスが高いということは、アンプ側の出力インピーダンスによる影響が少なくなる」らしいので、SA6は上流を選り好みしないタイプと言えるのではなかろーか。代わりに出力はそこそこ要るかもしれんが、まあ最近の4.4mmバランス出力積んでるようなDAPなら先ず大丈夫だろう。
 また、2010年代前半のBA型イヤフォンは再生可能周波数帯域の上限が凡そ20kHz前後であることが殆どだったが、SA6は何と倍の40kHzまで出るように。流石はハイレゾ世代の最新型と言うか…



 …………昨年だけでXD-05 Plus、T60RP、ADI-2 DAC FS、ATH-WP900、DT1990PROと相当額(※諸々のオプション等も含みでざっくり計算して320k。……320k!?)を散財しておいて、更に言えばそこそこ前から購入を検討し続けているDAPの新調をすっ飛ばして、新年度早々いきなり高級イヤフォンをIYHしてるんだから、…………我乍らホント馬鹿と言うか阿呆と言うか愚か者と言うか…………(自己嫌悪

 しかし実際にその音を聞いてしまうと、……そりゃあ皆沼に嵌るよね、と言わざるを得ないのが何ともはや……60k弱のSA6ですらこのクオリティなら、もっと高価い、それこそ100kや200k、300kするようなイヤフォンはどんな音なのやら。とは言えヘッドフォンやイヤフォンそのものに100k以上出すなら、先ずはオーバーヘッドからにしておきたい所ではあるけど。HPA/DACはADI-2 DAC FSで100k超え経験しちゃったしねー。
 大体、イヤフォンはヘッドフォンよりも格段に新商品のリリース速度が早いカテゴリなので、沼がヘッドフォン以上にタチ悪いことこの上無いのよなあ。気になるからって矢継ぎ早に買いまくってたら札束が幾つ有っても足らんぞコレ。いや冗談抜きで…


 ……値段を一切気にしなくていいなら、気になる機種は既に幾つかあったりする。

 中国のカスタムIEMメーカー、Unique Melodyの「MEST」。BAドライバだけでなく静電型や、何と骨伝導ドライバまで積んだという正しく「ユニーク」極まる機種。お値段170k程。グローバル市場では最近MKIIが出たそうな。
 米国のイヤフォンメーカー、Campfire Audioの「ANDROMEDA(2020版)」と「SOLARIS(2020版)」。それぞれ150kと190kくらい。特にANDROMEDAは高音のキラキラ感と超高感度で接続先を選ぶことで有名。

 何れも今回衝撃を受けたSA6の2~3倍以上する超高級機なので、まあ間違い無く自分が近い内に手にすることは無いだろうが、それでも音を確かめる機会があれば、一度どれ程のシロモノか体験してみたくはありますなー。

2021/03/18

据置型HPA/DAC複合機雑感:RME ADI-2 DAC FS 3rd(+α)

 New HiBy R6 2020の国内正規流通が始まっても、未だにIYHに踏み切れない今日此頃。
 ……まあそれは兎も角として。

 昨年に購入してそのハイクオリティに仰天したRMEのADI-2 DAC FSだが、実はつい最近までイヤフォンを挿して使ったことが無かったり。
 ずっと憧れだったDT1990PROや、ATH-WP900、T60RP辺りでしか使っていなかったので、此処等で一度ADI-2 DAC FS相手にイヤフォンとっかえひっかえしてみるかー、と画策して実行してみた次第。
 マニュアル見る限り出力インピーダンスが頗る安定しているADI-2 DAC FSなら、インピーダンス特性ややこしそうなBA多ドラだろうがハイブリッドだろうが何でも十全にドライブしてくれるだろうし。それに最近殆どイヤフォン使ってなかったんで。

 比較対象はXD-05 Plus(with MUSES03*2&05BL Pro)。
 音源はFLAC96kHz/24bit。XD-05 PlusはLDACで。
 イヤフォンはKlipsch X10、Westone4R、TripleFi 10を使用。

 先ず最初にXD-05 Plusへイヤフォンを繋いで、ざっくりと各イヤフォンの音を確かめてみた。…………余りにも久しぶりに使うもんだから違和感が凄え。(汗
 この時点で何となく思ったのは、

・……X10曇り過ぎじゃね??(滝汗
・TripleFi 10はバランス良いなー、クリアじゃん
・Westone4Rは聞き始め微妙だけど耳が慣れれば悪くないかなー?

 X10に「コイツこんなしょっぱい鳴り方だったっけ…」と思わず肩を落としながら、ADI-2 DAC FSをスタンバイ。バッテリー(RP-PB201)とUSB PDトリガーケーブル(12V)を繋いでIEMジャックのホコリ防止キャップ外して、先ずはX10から鳴らしてみた。


「――――ぇ、ちょ、何コレ……(震声」
 さっきまでと鳴りっぷりが(良い意味で)まるで違うんですけど一寸一体どういうことなの……?!


 帯域バランス自体は特に変化していないが、所謂「解像度」が全然違う。正にケタ違い。「音像」が非常に明確で微細になった。一瞬別のイヤフォンかと思ってしまった程。
 驚きを引き摺ったままWestone4Rにシフト。…………やはり初っ端からして鳴りっぷりが違いまくり。XD-05 Plusでは微妙だった聞き始めがADI-2 DAC FSなら全く問題無い。うわぁ…
 ラスト。TripleFi 10。元々クリアっぽい聞こえ心地だったが、ADI-2 DAC FSだと更に一皮剥けた感じが得られてしまった。…………何ともはや……(頭を抱える


 結論。
 ADI-2 DAC FS、凄ぇ。


 いやXD-05 Plusも決して悪いアンプではないと思うのだが、……ADI-2 DAC FSは実際に値段の桁が違う(※XD-05 Plus:5桁、ADI-2 DAC FS:6桁)だけあるというか。差ァ在り過ぎ。
 ……そーいや、以前ATH-WP900をADI-2 DAC FSのIEMジャックに挿してみたらXD-05 Plus使用時より自然な聞こえ方してたような気が。特に低音。量はそのまま、輪郭が明確になることで「低音過多」感が随分と薄れていたっつーか。

 …………まあ、価格差考えたらコレくらいの音質差は在って然るべきなのだろうけど。オペアンプ交換してカスタムした上でも40k以内のXD-05 Plusと、現在128kだが元々は160kクラスの製品であるADI-2 DAC FSが同じ音だったら流石に後者の立つ瀬が無さ過ぎる。
 以前、XD-05 Plusと売却したxDSDとを比較して「解像度的にはXD-05 Plusの方が良さそう?」的な感想を述べたように、XD-05 Plusの音も決して悪くはない、はず。…………あくまで、単純に、ADI-2 DAC FSが価格相応に高音質過ぎるだけで。(超遠目



 閑話休題。
 冒頭でちょこっと言及したNew HiBy R6 2020について。

 流石に値段が値段なので(※公式レザーケース込100k)、慎重にTwitterを始めとした野良レビュー等を調べているのだが、…………何故かやたらレビュー少なくて困惑中。
 某匿名掲示板のスレを見ても参考になりそうな情報が殆ど無く、おまけに現在殆どのショップで品を切らしているので衝動的IYHも出来ないと来た。むむむ…

 代わりに現在気になって来ているのが以下の二機種。
・HiBy R5 Saber
・Shanling M3X

 何故にこの二機種を注目しだしたかというと、最近になって「やはりバッテリーは長く保つに限る、…………かな??」と考えてしまったから。
 バッテリーの劣化速度は充電回数に比例するので、やはりこのテのガジェットを長く使い込みたいなら、最初から連続駆動時間の長い機種を買ってしまう方が良かろう、と。

 HiBy R5 Saberは先日New HiBy R6 2020と同時に国内での正規流通が始まった機種で、無印版のマイナーチェンジ、もといブラッシュアップモデル。チューニングやオペアンプの変更により音の傾向が変わっているらしい。
 連続駆動時間が十数時間はあり、New HiBy R6 2020と比較した場合、一回の充電で約二倍の時間使う事が出来るのは魅力的。

 一方Shanling M3Xは未だ国内未発売。しかし代理店からのアナウンスが丁度あって、曰く3/26(日)から発売されるそーな。
 最大の特徴はR5 Saberをも凌ぐ連続駆動時間で、シングルエンドなら20時間以上を謳っているというのだから驚き。バランスでも19時間と相当な長時間。れっきとしたAndroid DAPでこの保ちの良さは出色の出来だろう。


 基本的に自分の手持ちだと、自宅で音楽を聞くならイヤフォンでもヘッドフォンでもADI-2 DAC FSに繋ぐのが音質的には最善である。バッテリー駆動化してるからそこそこ機動力確保出来てるし。
 しかしそうは言っても「家の中を動く分には問題無い」というだけで、聞きながら歩き回るような真似は流石に不可能。XD-05 Plusなら青歯使えばそれっぽいことは出来るが、アレも結構嵩張るのでやはりもうちょっとミニマムな再生環境が欲しい。
 ……まあAP80という超ミニマムな再生環境を既に持っているのだが。とは言えコイツには「ADI-2 DAC FS用USBデジタルトランスポーター」という役割を担わせており、しかもソレに伴って3.5mmジャックをダストキャップで塞いでしまっているので、今更AP80をメインDAPとして重用する予定は今の所無い。

 バッテリーの保ちが10時間以上あり、4.4mmバランス端子を搭載し、サブスクを使えるAndroid OSのDAP、という条件を満たそうと思うと選択肢はそうそう無く、HiBy R5 SaberかShanling M3Xくらいしか候補がないのである。

 ……ところで、我乍ら以前は「ADI-2 DAC FSが対応してるから光出力端子が欲しいなあ」とか言ってたワケだが、…………もう別に無くても良いやろ、というか。(ぇ
 いや光出力を備えてる機種では動作のマトモさと価格を両立出来ないのですよ。やっぱDAPに100kオーバーは幾ら何でも勿体無いって…!(遠目

 取り敢えず、M3Xの発売日がめでたく確定したので毎度の如く少し様子を見る所存。購入するにしても評判を多少確認してからにしたいし。無論海外レビューも含みで。
 AmazonMusicがフツーに安定して使えるなら言うこと無いが、さてどうなるか…