2015/06/22

アニメ雑感:Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #24「無限の剣製」

 ――土曜(20日)の24:00からの30分は、背筋が震えっぱなしだった。

 「This Illusion(ピアノ版)」「into the night」「最後の力」「約束された勝利の剣」「sorrow」「エミヤ」「新たな夜明け」と、原作プレイ済みならすぐに分かるであろうBGMの数々。
 士郎vsギルガメッシュ、原作チャプター名に沿って言えば「ラスト・フライト」の凄まじさ。
 神造兵装としての力を遺憾なく発揮したエクスカリバーと、担い手たるセイバーの消滅、そして悟ったような穏やかな表情。
 最後の最後でスタイリッシュ助けて王様発言ぶちかましてちとかっちょ悪いAUOに、サクッととどめを刺して美味しい所をかっぱらっていき、加えて「かつての少年」のような笑みを浮かべて此方の涙腺を破壊しにかかってきたアーチャー。
 ……もうね、食い入るようにモニタ見つめて文章追ってたあの頃が綺麗にリフレインされて、色々いっぱいいっぱいになってしまった。

 らっきょ劇場版の頃から思ったけど、ufotableは型月の雰囲気をホントに大事にしてくれてるなあと。
 不満やら何やらはそりゃ、何者であろうと真の意味で万人受けするものなんて先ず作れない以上絶対に生じて然るべきだけど、少なくとも自分は大満足だった。文句なんぞ言えるかという話。有難うufotable。でもBDは金欠で買えないの許して!

 んで、ここからは色々区切って感想など。
 一応縮めておくので、ネタバレとか長文とかバッチコイって方はどうぞ。


・借り物の理想、偽善に満ちた正義
 人によって賛否が別れる士郎の生き方だが、自分は共感出来るというか、普通にしっくり来てしまう。発端が義父たる切嗣の笑顔への憧憬だとしても、かつての災厄からただ一人生き残った罪悪感だとしても、理想の果てにある「誰もが幸せであってほしい」という願いは、確かに尊いものだから。例え借り物でも、偽物でも、何も報いが得られなかったとしても、ただその尊さを信じて、歩み続ける……決して、「マトモな」生き方ではないけど、でも、だからこそ格好良いと思う。出来ないからこそ、尊いと思う。

 士郎の生き方を象徴する言葉には、こんなものもある。

「―――その道が。今までの自分が、間違ってなかったって信じている」
「聖杯なんて要らない。俺は―――置き去りにしてきた物の為にも、自分を曲げる事なんて、出来ない」

 UBWとは別ルートでの台詞だが、これも名言だと思う。やり直しというのは割りと誰でも思い付いてしまうであろうifだが、それをこう拒絶する士郎の強さは凄まじいとしか言い様が無い。個人的に、とても胸を打たれた台詞だった。更に言えば、この後のヒロインの台詞がまた破壊力抜群なのだが、それは別の話。


・無限の剣製 -Unlimited Blade Works−
 アーチャーは英語が詠唱で日本語が訳として付随するが、士郎は日本語が詠唱で訳として付随するのは英語の方……と、公式的にはそういうことになってる模様。確かに、PS2版でも士郎は日本語で詠唱してたっけ……アーチャーが英語なのは、まあ生前世界中巡ってるはずなんで、英語で詠唱していてもおかしくはない(ということにしておこう)。
 どうも、DEEN制作の劇場版の方では英語で詠唱してたらしいが、結構違和感あった御様子ですなー。劇場版見とらんから詳しいことは分からんのだけども。でも実際、稚拙な発音で英語版唱えられるよりは日本語で通した方がマシとは思うかねえ。

 ……んで、個人的にこの辺はちと違和感あったというか、もそっと時間取って欲しかった感が否めない。原作を読んでた時は、詠唱の一小節一小節を噛み締めるように読み込んでたので、今回のアニメ版はやや駆け足過ぎたように思った。少し残念。
 なおアイアスに関してはどうもコンマテ3に説明があるようで、それによると「直前にギルが展開したエアの余波に対してアーチャーがアイアスを展開してくれていて、それで知ることが出来た」ということらしい。確かに、原作で固有結界のことに気付いて飛び起きた際、未だ身体を動かせる程度には無事ってことに対して、何か理由があるのだろう的なことを地の文で記述はしていたが、アレずっとアヴァロンのことだと思ってた……思い返せば、その後に士郎はちゃんと自分で「丘から盾を引きずり上げ」てるわけで、当時も「アレ? この記述だとアーチャーが展開したってのと食い違わない?」って疑問に思ってたんだよなー。今更ながらに納得。

 「王の財宝」に対して何故「無限の剣製」が有利なのか、という点の描写は見事だった。宝物庫を開き、目的のブツを引っ張ってきて、射出というステップを踏むギルに対し、無限の剣製では既に丘に刺さってるのを引っこ抜くかぶっ飛ばすだけでいい。剣であれば見た瞬間に複製され、貯蔵される「無限の剣製」内では、あらゆる剣が世界の主たる士郎が求めたその時には既に存在しているわけで、宝物庫開いて弾丸たる剣を手繰り寄せるギルより先制できる、ってのを綺麗に表現出来ていたと思う。ホントに見事。

 決め台詞? 嗚呼、それについてはもう何も言うまいよ……(満足気


・泣き言に厳しい弓兵の鑑(ぇ
 消滅寸前の体であの絨毯爆撃じみた掃射とか単独行動のスキルって便利だなー(しろめ
 あのシーンに関しては、アインツベルン城でアーチャーがギルから攻撃食らったシーン見てみると分かるかもしれないが、サーヴァントが消滅する際の粒子が全く描かれてなかったりする。恐らくは霊体化してやり過ごして、いざという時には今回みたいに援護しよう……って腹積もりだったのではなかろーか。実際、士郎との戦闘で余力は殆ど無かっただろうし。
 つーか誰かともっかい再契約すれば良かったんじゃないかという声があるかもしれんが、元々が「アレ」だからねえ……士郎と戦るだけ戦って吹っ切れた後だと、筋通してそういう選択は取らないんじゃないかなあ。それに「自分」なら勝てるという確信があったからこそ、士郎に託したわけだしねー。


・星の極光、騎士の微笑み
 令呪二画ぶち込んでぶっ放すエクスカリバーとかそんなの作中でも最大レベルの出力じゃないですか……そりゃ腐れデイダラボッチ杏里も真っ青ですよええもう。穴から垂れてる螺旋を光が遡っていく辺りとか思わず拳握っちゃったよ。その後の爆発光で「……エヴァ?」とか思ったのは内緒 
 そして微笑みと共に消える騎士王。士郎vsアーチャーでの描写とか見てて思ったけど、多分セイバーはやり直しの是非についてもう悟れたんじゃないかなあ……だからこそ、あの微笑みがあるのだと思いたい。……尤も、何食わぬ顔してしれっと衛宮邸の道場で正座してても一向に構わないがな!!(修羅場的な意味で


・最後の飛翔
 ――――もう、何と言えば良いのか。
 余りの迫力に、ただただ圧倒されていた。

 まさにラストバトル。まさに下克上。
 最強を最弱が圧倒する――――やはりこうでなくては、TYPE-MOONの物語は。

 士郎が完全に人間をやめている件については、主人公補正の一言で片付ける方が手っ取り早いが恐らくは憑依経験によるものだろう。投影の工程にあるこれは、投影対象の「成長に至る経験に共感する」というもので、率直に言えば本来の使い手の技術を模倣出来るということである。それなんてチート
 無論投影同様に完コピは出来ず、劣化複製にしかならないが、それでも宝具の『担い手[ユーザー]』ではなく『持ち主[コレクター]』であるギルに対しては有利に立てる。積極的に近接戦を挑むのも多分その辺りが理由だろう。単純な射出合戦では先制出来ても決め手に欠けてしまう(基本相殺)し、向こうがエアなり何なり持ち出してきたらシャレにならない。故に、射出による王の財宝の相殺をサブに憑依経験でブースト出来る近接格闘戦をメインに据えて、ギルが雑種とか贋作とか言って慢心して油断している内に追い詰めることを選んだものと考えられる。
 ……ぶっちゃけ何だかんだ言って、アーチャーなら兎も角、まーだまだへっぽこ極まりない士郎じゃ金ピカ着込んだりエア抜いて結構マジになったギルをぶっ飛ばすのは無理なのだ、残念ながら。

 幾らギルの近接格闘戦がそれほどだとしても、英霊相手に士郎が力押し出来るとかそんな馬鹿な、という点は実際尤もだが、「相応に無茶をしている」ということだと思っている。元々士郎は「己の無事を勘定に入れない」タイプであり、体壊すレベルの無茶をごく普通にやりかねないバカなので、あのアクロバットもそういう無茶をやらかしまくっているのではないかと考えた。
 更に言えば、作中に於ける魔術師という人種、それも割と積極的に打って出る面子(凛含む)は原作の描写見ていてもかなり身体の作りが凄い気がするというか、魔術回路起動して全身に魔力巡らせるだけでも肉体強化という点でそこそこの効果があるんじゃなかろうか(但し他者を事も無げに強化できるキャスターは流石に次元違いである)。

 原作プレイしてなかったりすると「英霊の天敵であるギルを(慢心込みとはいえ)圧倒出来る士郎は英霊より強いのか?」と思うかもしれんが、流石にそうは行かない。士郎が言うように、ギルを圧倒出来るのは王の財宝を先制して潰すことが出来る故であり、三騎士や狂戦士よろしく至高の戦闘技術を持つ者には余り意味が無い。ギルは鎧やらエアやら鎖やら持ち出しゃ良い(特に究極の一であるエア)し、未来の姿ことアーチャーは莫大な戦闘経験に裏打ちされた高い技術や戦術眼があるから問題ないのだが、士郎が用意出来るのはあくまでも「無限の剣」だけ。これで対抗しきれるのは(絶賛慢心中の)ギルに限ってしまう。要は力量差というよりも相性が最悪という話で、ジャンケン的な感じなのだ。

 何はともあれ、士郎が全方位攻撃を躱してアイアスを盾にダイブするトコとか、エア抜くときの躊躇とか、バックステップの辺りとか、原作と描写が違うトコは確かにあったが、それでも「贋作者[フェイカー]が原点たる英雄王[オリジナル]を圧倒する」という肝心な部分はしっかり表現されててとても良かった。この二分を見たいがために、ずっと0話から見続けていたと言っても良いレベルでした。


・この期に及んでまだそんな王様発言を……!
 言い方次第で命乞いもあんなにスタイリッシュになるんだなあ(遠目


・少年のような笑顔
 此処に関しては一言に留めておく。

 ――――諏訪部さん、本当に有難う……!(滝涙


 現在、ニコ動で何度繰り返したか分からないくらいリピート中。レコーダーに録ってあるけどコメントが楽しいので。
 その都度、

 無限の剣製(燃え)→エクスカリバー(燃え)→セイバー……(しんみり)→ラスト・フライト(超燃え)→アーチャー……!(涙)

 という流れをなぞっている。……うん、神回だし仕方ないよね!(ぉ

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