2016/10/21

アニメーション雑感:君の名は。

 シン・ゴジラを友人と一緒に見に行って、いやあ面白かったねえと言っていたら公開が始まって、それから遅れること二ヶ月弱。ようやく観に行く機会が出来て見に行ったのだが、



 ――結論から言おう。

 どうしようメッチャクチャハマっちゃったんですけど。



※以下、基本的にネタバレしまくりで書き記していますので、映画見てない人はブラウザバック推奨。いやむしろ懇願。強制。(何


 ストーリーというか流れ自体はWikiで盛大にネタバレってるのでそっちを参照してもらうと分かると思うが、実は結構ベタというか、サブカルにそこそこ浸っている人間からすると、下手すりゃレトロと言われそうなくらいな勢い。
 箇条書きにすると、


・メインは男主人公(都会育ちの男子高校生)と女主人公(田舎育ちJKで巫女(本職)、かつ町長の娘) ※女主人公が「ヒロイン」でないところがミソ
・二人の主人公間で生じる精神の入れ替わりによる混乱波乱と、その中で生まれる相手への興味
・生じた興味を実際に行動に移して、その途端明らかになった絶壁じみた障壁
・一縷の望みを賭けた行動と、神憑り的な奇跡による邂逅
・通じ合ったかと思えば離れ、重なったかと思えばすれ違い、それでも残る確かな想いの証拠
・経過する時と共に消えていく記憶、されど刻まれて消えない違和感
・何気ない朝の景色、車窓を挟んだ出会いと、確かな予感
・求めて彷徨って、果てに叶った再会と、

――君の、名前は、と。


 ……箇条書きと言いながら、随分と具体的に書いてしまった気がするがまあさておき。
 多分、似たような展開とかシーンってのは、今となっちゃ腐るほど存在しているアニメやら漫画やらライトノベルやらを探しゃ必ず見つかると思う。入れ替わりとかタイムパラドックス的な部分とか。
 それでもこの「君の名は。」を面白いと感じさせる最大の要因は、ストーリー展開や緻密に描き込まれたグラフィックといった「見せ方」と、シーンにマッチした音楽や台詞といった「聞かせ方」の両方が高次元で両立している点に他ならない――というのは、些か褒め過ぎだろうか?(^^;

 元々ビジュアル面で非常に評価が高い新海誠氏だが、本作でもその技量は遺憾無く発揮されている。高層ビルが乱立する東京の景色や、大きな湖を中心として古い神社が残る山間の田舎町の風景など、「二次元的なリアリティ」というか、写真やハイエンド3DCGとは違う、アニメーショングラフィックとしての美しさはかなりのものだと思う。
 ただ個人的には、主役である瀧と三葉の表情がとても気に入っている。コロコロ変わるのが面白いというか、喜怒哀楽がしっかり描かれているためだろう、感情移入しやすいのだ。「カタワレ時」の邂逅や、終盤での車窓を挟んだ再会の辺りは、感極まる人が多いんじゃなかろうか? 涙腺が緩みこそしなかったが、自分もかなり感情を揺さぶられた。

 ストーリー展開だが、思い返してみると初っ端から結構伏線張っているというか、「覚えて、ない?」はそういうことだったのかと。二度見しに行くとアレ聞いただけで込み上げてくるものがあるって話だったので、自分も近日中に体験しに行く予定。
 実は観に行く前に思いっきりネタバレ全開で臨んでいたのだが、それでも「あの景色」には流石にかなりの衝撃を受けてしまった。全くネタバレしていなかったなら、一体どれ程の驚きになっていただろうと思うと、かなり惜しい真似をしてしまった。
 起承転結という観点で見ると、始まりとしての入れ替わりから、波乱と混乱に満ちた日常と、発覚する真実という衝撃のどんでん返し、奔走の果てにそれを覆して叶えられた奇跡のような、というか奇跡でしかない再会……と、かなり綺麗に収まっている。どの部分でも兎に角上がったり下がったりが激しいというか、ストーリー上での動きがしっかりしているせいかこっちの感情もよく揺れる。その変化の大きさ、はっきりした振れ幅が此方に満足感を与えるんだろう。

 そして大事なのが音楽。これがなくては始まらないってくらい本作では重要なファクター。
 ハイレゾ版のサントラを入手した後ようやく知ったのだが、本作中の楽曲は一貫して全てRADWIMPSが手掛けているのである。ボーカル曲以外のBGMですら。これにはやられたと思わされた。
 新海氏と綿密に打ち合わせしながら創られたって話だけあって、場面場面と音楽のマッチングはかなりのレベル。加えてボーカル曲は歌詞を見聞きすれば分かるが、ちゃんと本作の内容に沿っている。つまりBGMからボーカル曲まで「君の名は。」という一貫したテーマの下で、単一の作り手によって生み出されているのだ。さもありなん、これなら曲や歌の方向性がブレる原因に著しく乏しい。そりゃ合わない訳がない。

 目で見る映像の体験と、耳で聞く台詞や楽曲の体験が確かにリンクして、その上で強く胸を打つ物語が絡んでいりゃあ、先ず間違いなく面白いだろう。
 ベッタ褒めで大変恐縮というか、異論も覚悟の上だが、掛け値無しに「本当によく出来た」アニメーションだった。マジで。

 映画見た後、OSTを入手して小説も読んで、現在は二度目をいつ観に行くか予定のすり合わせに忙しい最中。元々その予定はなかったのだが、OSTと小説を楽しんでいたらもう一回見に行きたくなってしまったのである。重症という他ない
 つーか瀧三が尊すぎてどうしてくれようか。切なさ全開の声音で「覚えて、ない?」とか、名前の代わりに書かれた予想外の三文字とか、悶そうな程ドンピシャぶち抜いてきてもうね……! 私的に数あるサブカルのカップルでも一躍トップクラスに躍り出て来てくれやがりましたよええもう。二次創作を漁る、つーかむしろ自家発電も辞さないレベル
 ラストを互いに名前を尋ね合うところで終えてしまったのがまた巧いというか、ぶっちゃけその後の妄想が捗り過ぎて勘弁して欲しい。何言ってるか自分でも分かんなくなってきたけどそれくらい感情を揺さぶられまくってるってことでここは一つ。

 さあてホントにいつ二度目見に行こうかなあ…





※以下、二度目を見て



 ――――どうしよう、久方振りにアニメに泣かされたんですけど。



 ……何となくだけど。初見では驚きが勝って泣くどころじゃなかったんだろうな、というか。
 二度目は一通り知っている分、情景や表情を噛み締めるように見ていたからか、手のひらの三文字を見た瞬間に涙腺が決壊した。やっぱりアレは反則だろ……名前書いとこうぜ、って言ってたじゃないか……

 そんで改めて思ったけど、やはり見せ方聞かせ方が上手い。絵と音でしっかり帳尻合わせてるなあと。
 校庭から眺めた真実とか、まだ一方的な再会とか、カタワレ時とか、名前の代わりに記された感情とか、階段での邂逅とか。特に最後から二番目。しつこいかもしれないが反則。

 ちょっとびっくりさせられたのが、映画見に来てるのが若者ばっかりじゃなくて、それなりに年行った夫婦とかが思いの外多かったこと。老若男女問わずとはよく言ったものである。ジブリやディズニーならともかく、新海氏の作品でこんな現象が起こるとは…
 そして観客が笑ったり息を呑んだりと「大きい反応」をするところが、見事に自分と被ってて苦笑。前者なら最後の入れ替わりの朝、顔をぐっしゃぐしゃにしていた瀧入り三葉のシーンで、後者なら三葉が開いた手の中に、瀧が書いていた三文字とか。どっちもダントツに笑えるし最高に切ない場面なので、納得せざるを得ないというか、当然?みたいな。



 本作に詰まっている要素は、本当に、ネタとしてはごくありふれたものだと思う。
 男女の精神の入れ替わりとか、実は思いっきりズレていた時間軸とか。サブカル漁れば絶対幾つも見つかるだろう。

 けど。
 そんなありふれた要素を詰め込んで、でも適切に並べて使えば、感情を強く強く揺らされる新しい「ボーイ・ミーツ・ガール」がしっかり出来上がるんだってことは、とても嬉しいというか。



 ……一緒に見に行った友人と本作を見た後、色々話しているとこんな感想がどちらからともなく口をついて出た。

「最近のサブカルには真面目に楽しめるボーイ・ミーツ・ガールが本当に少ない」

 古臭い考えかもしれないが、やはりこのテのサブカル――アニメや漫画、ライトノベル――は、ボーイ・ミーツ・ガールこそが王道で、一番真っ当に楽しめるんだよなあ。
 元々自分がサブカルへ傾倒していくキッカケになったのがTYPE-MOONの「月姫」なのだが、アレってその実、結構王道なボーイ・ミーツ・ガールものだったりする。つーか月姫に限らず「Fate/stay night」や「魔法使いの夜」も、「少年と少女が出会い、新たな日常が始まる」というボーイ・ミーツ・ガールまっしぐらな作品だったり。型月作品は異端なように見えて割と王道なのだ。
 女の子主体で百合百合しいのとか、はたまたドタバタコメディが激しいのとか、別にそれらがダメとは言わないが、なんか違うと思わずにはいられない。特に前者。いやまあらき☆すたとか結構楽しんでたけどね?



 本作「君の名は。」は、ここんとこ最近のサブカルじゃ貴重なくらい真っ当で、ひたすら丁寧に、とにかくしっかりと作られた、堂々と王道を行く本物の「ボーイ・ミーツ・ガール」であるように思えて、だからこそ見ていて掛け値無しに楽しむことが出来た。
 無論万人受けするとは思っていないけど、少なくとも自分にとっては、

「ああ……そうだ、そうだよ。こういうのがずっと欲しかったんだ――」

 と、そう思わせてくれる作品だった。
 文句なしに名作。出来れば異論を認めたくないくらいに。(ぉ



 ……ああくそう、色々書いてたらもう一回見に行きたくなったんだけど。
 うう、でもBlu-ray出るまで待ったほうが良いよなあ。どうしようなあ……





 因みに。

 小説とサントラは本作見て思わず泣いたりするくらい楽しめた人なら買って損はない。つーかむしろ買え。(ぇ
 前者は心理描写を文章という確かな形で得ることが出来るので、瀧三の尊さが倍増すること請け合い。後者は「スパークル」と「なんでもないや」の破壊力が異常。どちらも名シーンで流れるし、仕方ないね!

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