2020/07/12

イヤフォン雑感:AZLA MK2 (AZLA-02R) ファーストインプレッション

 最近、巷で「AZLA SednaEarfit XELASTEC」なるイヤーピースが人気らしい。ドイツ製の高品位TPE(熱可塑性エラストマー)を使用しており、耳の中で形が変わってぴったりフィットするんだとか。
 このAZLAというメーカー、「SednaEarfit」というシリーズで他にも多種多様なシリコン製イヤーピースを販売しており、かく言う自分もSednaEarfitの無印M/MLサイズを購入して使用中だったり。しっかりした装着感が中々にベネ。

 ここまで読むと「AZLAはイヤーピース専門のメーカーなの?」と思うかもしれないが、それは間違いである。日本国内の正規代理店であるアユートのHPを見てもらえば分かるが、AZLAの販売ラインアップにはちゃんとイヤフォンが並んでいる。
 ……しかし悲しいかな、ユーザーの間では既に「AZLAと言えばイヤーピース」というイメージが定着してしまっているのが実情。何故そんな事になってしまったのか?

 …………恐らくは、その原因となってしまったイヤフォン(のマイナーチェンジ版)が、今回紹介する「AZLA MK2 (AZLA-02R)」である。


 AZLAは元々韓国のメーカーで、数年前に鳴り物入りで日本へ乗り込んできた際は「AZLA (AZLA-01R)」という正にブランド名そのものを冠したイヤフォンを引っ提げていた。
 ……が、このAZLA-01Rが大変なクセモノで、

「……音は良いのだが、如何せん装着感が…………」

 ……と、何とも微妙な評価を食らってしまい、ちょっとコケてしまったっぽいのだ。

 詳しいことは軽くググればすぐ分かるが、「同軸ハイブリッドドライバー」「有名メーカーとコラボしたケーブル」など、結構セールスポイントはあった。
 だがそれでも、こういう音響機器に絶対欠かせない「装着性」があんまり宜しくないのは流石に拙かった。終いには、ケーブルだけ取って本体は売却する、なんて悲惨な状況になっていたとか…

 そんなAZLA-01Rだが、後にケーブルやステムのフィルタ、付属するイヤーピース等に少しマイナーチェンジを加えたバージョンが販売された。それが「AZLA MK2 (AZLA-02R)」で、今回自分が買ってしまった機種である。
 ……XD-05 PlusやT60RP買ったばっかなのにこの期に及んで何をまた衝動買いやらかしてんだ、と我ながら自己嫌悪モノではあるが、まあちょっと言い訳がありまして。

 というのも、先述のXELASTECがオーオタ界隈で話題になっていた折、ひょんな事からAZLA-02Rが某有名オーディオ店で在庫処分の格安価格で捌けているのを偶然目撃してしまったのだ。
 AZLA-01Rは当初45k前後で発売されたのに対し、AZLA-02Rはそれより10k程値下げして発売開始。では本記事記述時点での価格はと言うと、


 ――――僅か、たったの12.8kである。


 なんともはや、最早大暴落でしか無い。哀れというか、何というか……

(※補足追記[200830]:
 その後更に値下がった(12.8k9.98k)模様。えぇ…………
 此処迄来るとコスパは非常に良いと思うので、余裕が有る方は是非買ってあげよう!(慈悲の心))


 ……まあそんな感じで、大安売りしていたのを良いコトに、ちょっと怖いもの見たさでつい注文してしまったのである。まる。
 お財布の中身は如何程ですか……?(死魚目



 さて。
 今回は音質の前に、装着感について先に言及しようかと。


 率直に言わせて貰おう――――――――かなりシビアで面倒臭い。


 考えられる一番の原因は、筐体のサイズが大きく、それでいて外耳孔周辺に最適化された形状をしていないこと。そのせいで、筐体が上手く耳に嵌まらないのだ。
 こうなると頼みの綱はイヤーピースをしっかり耳にフィットさせることだが、…………かつてのAZLA-01Rの場合、よりによって何の取り柄も無さそうなフツーの半透明シリコン製イヤピしか付属していなかったのが拙すぎた。上手く密閉出来ないと音がスッカスカになってしまうのに、山とあるサード品から最適なイヤピを見つけ出すことを強いられる……そりゃ、客が離れるのも致し方無いっつーか。さもありなん。

 一方、AZLA-02Rには前述した「SednaEarfit」の無印が付属するようになっている。デフォはMサイズ。取り敢えずそのまま着けてみるが――――ダメ。全然キチッと嵌らん。密閉出来ん。普段ならMサイズ辺りで全く問題ないんだがねえ…
 そこで以前購入していたSednaEarfit無印のMLサイズへ交換。着用してみると――――良い具合に外音が遮断されて、筐体がポロリしそうな感じが無くなった。お? おお? コレ上手くいったんじゃね?
 着用時だが、先ず最初はケーブルのコネクタ部を真正面に向けると良さ気。その状態で耳へ突っ込み、ちゃんと穴塞がったのを確認した上で筐体をくいっと回し、御馴染みShure掛けポジションへ移行するとしっかり装着しやすい。目安として、筐体表面の「AZLA」と書いてある金属部を軽く押し込んだ時に、圧が掛かって空気が逃げるような音がすればほぼ密閉出来ているハズ。


 そんなこんなで何とかきちんと装着できた所で、AP80に直挿しで音出してみた。
 ソースは色々。FLAC44.1kHz/16bit~96kHz/24bitまで。

 一聴してすぐに思ったのは「へえ、クリアじゃん!」。曇り籠もりはほぼ感じない。高域は繊細でシャープ。中域はハッキリくっきりしてるし、低域はしっかり圧を伴って響く。総じてバランス良好。何だよ、結構良い音してんじゃねえか…
 感心したのは「高域の繊細さ」と「低域の迫力」をしっかり両立しているところ。この辺はやはりBAとダイナミックのハイブリッドドライバーならではだろう。分離感も悪くないし、中々使い出のある音をしている。良いね、気に入った!

 帯域バランス的にはちょいと低域が強めかね? そのせいか、閉塞感や聞き疲れ易さが全く無いわけではない。まあこの頃はすっかりT60RPがリファレンスになってしまって、些か評点厳しいかもしれんけど……それに、聞き疲れに関して言えばコレはむしろ、音よりも装着感の窮屈さに起因している気がしないでもない。デカい筐体を耳へ押し込んで、イヤピの力で少し強引に固定している感が拭えんしなあ…
 とは言え、筐体デカいのは装着感という意味ではかなりのデメリットなんだが、そのおかげか本機の鳴り方は何処か「密閉型オーバーヘッド」めいてるのが個人的にちょっとツボ。解像感がイヤフォンよりもヘッドフォン的な調子で面白い。元々オーバーヘッドからオーディオにハマってったクチなので、こういう鳴りの方がどうも馴染み深いのよなあ。



 ――と、案の定前評判通りに「装着さえ上手く出来れば良い音」ってな塩梅。
 取り敢えず暫く鳴らし込んでみるが、既に「音そのもの」は比較的気に入ってるので、あくまでも気休めかねえ。低域が僅かに落ち着くと嬉しくはあるけど。

 それより何より、問題は何と言っても装着感だろう。繰り返しになるがコレはホントかなりのクセモノだった…
 何か噂じゃわざわざカスタムイヤピを発注したケースもあるらしいが、そこまでせんと使い物にならんと見るべきなのか、或いはそれくらい惚れ込んでしまう音と思うべきなのか、判断付かねえ…

 何はともあれ、12.8kでこの音なら満足かなー。割と良い買い物だった。
 装着性の難儀さに付き合う気概が有るなら、まあ、オススメ出来るかなー…?(遠目



※追記:イヤーピース取っ替え引っ替え

 低域を中心に音の圧がちょいキツいように感じたので、イヤピをSednaEarfit無印のMLサイズからスパイラルドットのLサイズに替えてみた。
 コレが思いの外良い感じ。音圧が緩んでキツさが解れ、若干カラッとした調子に変わった。おかげで少し聞きやすく聞き疲れ難くなった。

 恐らくだが、この変化はSednaEarfit無印とスパイラルドットの作りっつーか素材っつーか、その辺の差異がかなり作用しているんだと思う。前者は傘の部分までそこそこ厚みがあってしっかりかっちりした作りなのに対し、スパイラルドットはちょっとペラっとした薄く柔らかめな作りなので、適度に振動が抜けてるんじゃないかなー。

 んで、外したSednaEarfit無印のMLサイズはそれまでSpinFit(※旧パッケージ版。現行ならCP100が一番近い)のMサイズを使ってたMDR-EX800STに、そんであぶれてしまったSpinFitを純正のMサイズを付けてたIE8に充てがってみた。宛ら玉突き事故である。
 全てイヤピ交換後にそれぞれ音出して装着感や音の具合を確かめたが、何れも中々良さ気。特にMDR-EX800STは以前「独特のクセがあってあんま好きになれんわコイツ」なんて扱き下ろしてたのが悪くない風情に変わってくれて、「おろ? コレなら十分使えるんじゃね?」と手のひらを返す羽目になった。有難や~。

 しかしその過程で、AZLA MK2の音のクリアさに改めて感心してしまった。解像感がイヤフォンよりもヘッドフォン的な調子、と前述したが、実際に他のイヤフォンと鳴り方を比較してより強く実感したっつーか。
 ……後はこれで装着性にもうちょっと気を配ってりゃあねえ……(溜息



※追記[200713]:イヤピ更に取っ替え引っ替え

 IE8にSpinFitを充てがってたのを更に変更。IE8にはSednaEarfit無印のMサイズを付けて、SpinFitはものの試しとしてTripleFi 10に使ってみた。
 音自体はぶっちゃけそんな変わってないが、コレは装着感を考えたチョイスなんであんまその辺は気にしてなかったり。IE8+SpinFitだと何だかいまいちビシッと耳に嵌まらなかった感あったので、安定感強いSednaEarfit無印にしてみた次第。逆にTripleFi 10は気持ち奥へ突っ込めるようになったか?

(※補足追記[200716]:
 結局IE8のイヤピはSpinFitに戻しました(汗)。SednaEarfit無印はしっかり密閉出来るんだけど、奥まで突っ込めなくなってしまうのがIE8相手だとビミョ~に違和感あってダメだった…
 代わりにTripleFi 10へSednaEarfit無印を付けといた。TF10は耳から出っ張るタイプなので、安定感強いSednaEarfit無印と相性が良いのではないかと思った次第。)

 イヤピも中々沼の深いシロモノだが、アレコレ揃えまくっても金が掛かって仕方無いしねえ……スパイラルドット++とかXELASTECとか、興味はあるが単価高過ぎてそうそう気軽にポイポイ買っとれん。どのサイズが合うかも正直バクチだし。

 因みに、メインで使ってる手持ちのサード品イヤピはこんな感じ↓
・AZLA SednaEarfit(無印) M/MLサイズ
・SpinFit(茶楽音人名義旧パッケージ) 通常径(※現行のCP100相当) Mサイズ
・SpinFit(茶楽音人名義旧パッケージ) 細径(※現行のCP800相当) Mサイズ
・JVC スパイラルドット M/Lサイズ

 各イヤピの個人的な感触として、

・SednaEarfit無印:
 Mでもかなり密閉感強め。しっかりした作りで装着時の安定感は大変良好。音がシャープになって圧がハッキリするっぽい。MLの密閉感は凄まじいがちょい外耳道が痛くなりやすいか?

・SpinFit:
 あんまり音の違い分からず。装着感も良いんだか悪いんだか。自分の耳だとMよりLの方が良かったかもしれない。一応、細径は使い心地良し(※W4Rに使用中)。

・スパイラルドット:
 Mの密閉感は程々で普通な感じ。LはSednaEarfitのMLとほぼ同等の密閉感を得られるが、外耳道への負担は少なめ。圧が減って聞き疲れし難い塩梅になる?

 SednaEarfit無印は音にシャープさを加えたい時、スパイラルドットは音圧を少し逃したい時に有効な印象。SpinFitはよく分からん。多分適正サイズで嵌まってない気がする。先細りのおかげで奥に突っ込めてる気はするけど。

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