2022/07/09

イヤフォン雑感:Symphonium Audio Helios ファーストインプレッション(+α)

 先月(六月)半ばのこと。

 んで今月(七月)入ってHeliosが届いたので、就寝前リスニングでじっくり試運転中。以下適当に感想。
 ……当初はもっと短く纏めて呟き帳へ投げるつもりだったが、何時の間にやら大長編と化していたので、敢え無く徒然帳へ投稿する羽目に相成り申したとさ。(遠目


 初聴時思ったのは「癖の無い音」。無着色的というか、明るいとか暗いとかそういう個性的な部分を探し難いタイプの鳴り方だなあ、と。
 少なくとも曇り籠もりは一切感じなかったので、その辺は好印象だったが。

 何曲か聴き流して「へーこんな調子なのねー」と分かった気になった所で、直近の常用機である5/COSMOSにスイッチ。
 途端、「――あれ?此奴こんな雑い鳴り方だったか……??」と違和感を覚えて困惑。暫くして再びHeliosに戻ると、鳴りが格段に落ち着く感覚を得て驚き。

 具体的に言い表すと、5/COSMOSは「ビビッドでメリハリの効いた像が目前に展開される」のに対し、Heliosは「非常にキメ細かく正確な像を、若干距離を置いて冷静に観察する」ような風情。後者を基準にすると前者は騒がしく喧しいとすら思えてしまう程。
 IEMでこのような演出が為されるのは初体験で戸惑ったものの、何故か「この感じ、何処かで……?」とも思い、少し悩んで――ピンと来た。

 そう、5/COSMOSからHeliosへスイッチした際の感覚には覚えがある。「IEMからオーバーヘッドへ聞き変えた」時の変化だ。
 IEMにありがちな頭内定位感が弱く、音像をゆとりを持って捉えられる為、良い意味でIEMっぽくない。繊細で滑らかな中域~高域、タイトでアタック感が確かな中域~低域を、俯瞰するように落ち着いて聞き込める辺りが、モニターっ気のあるオーバーヘッドと似ている。

 そも設計に於ける余裕が桁違いな二者の直接比較はナンセンスかもだが、しかし個人的見解として、IEMはオーバーヘッドよりも解像感等でやや劣る印象を受けがち。音質だけで言えば確実に後者の方がコスパで勝るはず。
 我乍ら元々後者から沼に嵌り込んだ身で、基本的にその音をレファレンスとしているが故に、HeliosのIEM離れした音の感触には舌を巻かされた。思えば初っ端の「癖の無い音」という感想は、私的により馴染み深いオーバーヘッドに通ずる要素を感じた所為だろう。
 折角なので5/COSMOS以外の手持ちから、帯域バランスに共通性が見られる(※crinacle調べ)OracleSA6とも聴き比べた。
 案の定というか「音の質(≠音質)」はHeliosが極上。繊細で滑らかで引き締まっていて、刺さらず粗が無く緩さも無い、と完璧。一応、音の質感など部分的な類似が無くは無いが、それでもHelios程の「優秀さ」は感じられず。
 OracleとSA6も良い機種なのだが、まあ価格差(※2倍以上!)がね……

 ついでに改めてHeliosと5/COSMOSの比較だが、これはもう完全に別物。OracleとSA6以上にまるで違うのがすぐ分かる。IEM的喧しさ全開、っちゅーか。
 以前5/COSMOSとOracle・SA6を比較した際は「5/COSMOSはOracleとSA6の中間的な音」なんて宣ったものだが、Heliosを基準に考えると到底そうは思えず、…………いやはや人間の感覚って、ホンマ何もアテになれへんなあ……(自嘲

 ……此処迄5/COSMOSの株を下げに下げた気がするので念の為言うと、決して悪いモノではなくむしろかなり良い機種である。フルBAながら低域はよく響くし、中域~高域も鮮やかに楽しめる。
 それでもHeliosと比較してしまうと、……なまじ彼方がモニターヘッドフォンライクな私的好みドンピシャサウンド過ぎてね、もうね……(伏目

 ではOracleとSA6、更に5/COSMOSは御役御免かと言えばそうではなく、Heliosには無い刺さりや粗さ、膨らみが個性として良い味を出しており、面白味があってコレはコレで悪く無い。
 無論、雑味が殆ど無く、レファレンス足り得るHeliosの鳴りは当然素晴らしい。正直完全にド嵌りしたけども、……しかしソレはソレとして雑味がマシマシなのも良いよね……、みたいな?w

 Heliosをレファレンスとして各機の音を表現するとこんな↓感じ。
・Oracle:高域がちょっとシャリ付いて、中域以下は少し強く 質感滑らか
・SA6:中域以上を盛って主張を強化 全体的に鳴り荒め
・5/COSMOS:中域以下、特に中低域辺り?を増量 中域以上は明瞭で丁寧
 最もHeliosに食らい付けそうなのはOracle。恐らくはESTドライバに由来するであろう、高域のやや細く刺さる感じがもう少し弱ければバッチリだった。

 個人的にHeliosは、日頃常用するより「温存しておいて、基準点として何時でも戻れるようにしたい」ポジションかなー、と。価格的にもガシガシ使う気にゃなれんし。
 他の個性的な機種を散々聞きまくった後で、「嗚呼やっぱコレがレファレンスよなー…」と感覚のリセットに使いたくなる、とゆーか。

 しっかし、モニターヘッドフォンと似た聞き心地のIEMとか、果たしてチューニングにどれ程手間掛けたのやら……そりゃ100k超えるわこんなもん。納得。
 こうなると姉妹機のTritonの音も気になってしまうが、……流石に円安がね……(悲哀
 音以外の点について。能率/抵抗値は104dB/8.5ohmと非力なソースでも鳴らし易い――なんて数値だけ見て安直に考えたら大間違い。むしろ滅茶苦茶鳴らし難い。ADI-2 DAC FSのIEM出力だとギリギリなレベル。えぇ……
 一応、M3Xの4.4mm出力なら、ハイゲインの60/100辺りで確りした音量を取れる。何れにせよ、駆動にかなりの出力を要するので要注意。

 一つ良い知らせがあって、Helios(及びTriton)にはFLATという独自技術が用いられており、多ドラBA or ハイブリッド機ながら「インピーダンス特性が平面駆動型並にフラット」だったりする。大変珍しいというか、何気にとんでもない技術なよーな…
 つまり出力インピーダンスが少々高めのHPAを使っても問題無く駆動出来るワケで、自分の手持ちで言えばXD-05 Plusのようなヘッドフォン向け高出力PHPAでも組合せ易い次第。

 ところで、Heliosと今回聴き比べた機種(と、ついでにUM 3DT)とで音量の取れ方を雑に比較すると、

 Helios[High60]=Oracle[High50]=UM 3DT[High35]=SA6[High33]=5/COSMOS[Low32]
 ※全てM3Xの4.4mm出力で、Heliosのリスニング音量と聴感上同程度になるよう調整

 ……ざっくばらんにこんなトコ。5/COSMOS鳴らし易過ぎィ!
 しかし5/COSMOSって、スペック的には109dB/7.7ohmでHeliosと然程大差無い筈なんだが…

 Heliosに弱点があるとすれば、それはやはり装着感だろう。非常にシンプルなラインで構成されており、CIEMライクで複雑なシルエットを持つOracleやSA6のような、耳介にすぽっと嵌る装着感は残念だが望むべくもない。
 幸いなのは筐体が金属製の割に重さがそれ程な事。金属と言ってもアルミなのが功を奏したのだろう、ステン製筐体で見た目小振りなFD5の方が余程重いくらい。


 とうとう100kオーバーするイヤフォン買っちまったよー、しかもヘッドフォンより先だよどーするよー、……なんてIYH当初は思っていたのだが、実際にその音を体験してみたら「――嗚呼、そりゃこのチューニングならコストも掛かるってもんだわ……」と、あっさり納得してしまう辺りマジで自分チョロ過ぎっつーか。(溜息
 だが流石にこのモニター系な音作りはズルい。どう足掻いても好みまっしぐらで気に入るに決まってるやんけ…

 今回はレビュアーとメーカーがタイアップしたプロモーションイベントのキャンペーンって名目で、ドル換算だと相当値下げられており、それ故円換算でも昨今急激に進む円安の中にあって、ちょっと前の相場くらいの価格でHeliosを入手出来て中々幸運だった。しかもおまけのケーブルが後日発送されるらしいし、ソレも加味すれば尚の事値打ちである。
 ……正直Tritonの方も気になってしまっているが、イベントが終了済でもう正規価格でしか入手出来ず、また海外レビュー漁った感じではHelios程のインパクトは無さそうなので、今は見送るのがベターかなー、と。


  


 此処からは蛇足になるが、上述した「おまけのケーブル」に纏わる話を一つ。
 あんま面白い話じゃないんで、どーしても気になる方のみ続きをどーぞ。

 先ず、当初Heliosに付属予定のケーブルは、香港の「STEケーブル」というメーカーの新作、という話だった。が、色々あってHeliosの開発元であるシンガポールのSymphonium Audio、その代理店である同じくシンガポールのFerra Generationの試作?ケーブル(メールに曰く「我々のラボのケーブル」)に変更された。
 問題は、…………其処に至る迄の経緯が実に奇々怪々と言うか、当初全くと言っていい程関知していなかった身の後追い調べでは、最早惑乱する一方と言うか……

 キッカケは恐らく、STEケーブルの日本国内販売代理店を務めていた「飯田ピアノ」(※DAPで有名なHiBy MusicやHidizsの代理店)が、突如としてSTEケーブルの商品を捨て値同然で捌き始めた事だろう。或いはそのちょっと前?の、STEケーブルの線材表記に怪しい箇所が見付かった辺りか、はたまた更に以前の、STEケーブルがSNSで飯田ピアノへの不満をぶっちゃけ始めた事がそもそもの発端かもしれない。
 STEケーブルの製品は全体的に高価格(上限60k!)だったこともあり、飯田ピアノのSTEケーブル大放出にオーヲタは当然の如く食い付いた。……そしてその中から、「折角安く仕入れられたし…」的なノリ?でSTEケーブルを実際にバラしてみるユーザーが現れ、中身の検証が行われたもんだからさあ大変。

 これで中身が真っ当なら騒ぎになんぞならなかっただろう。
 騒ぎになったって事はつまり――――中身が、インチキの可能性が高かったのである。

 厄介な事に、STEケーブルの中身を巡るこの騒動と、Helios&Tritonをキャンペーンで値下げ販売していた先述のプロモーションイベントは時期的にモロ被りしていた。しかもよりによって、プロモーションの仕掛け側である、とあるレビュアーが過去にSTEケーブルをレビューして高評価していたり、試聴会なんかを開いていた事もあって、イベントはおろかSymphonium Audio≒Ferra Generationにまで騒動が飛び火。
 結果として、HeliosにSTEケーブルの新作をおまけする予定は没になり、代わりにFerra GenerationのAT02というケーブルがおまけとして付属される事になったのである。

 これらの情報を追っ掛ける上で面倒なのが、「元々飯田ピアノの評判が芳しくない」事。一応自分は飯田ピアノの取扱商品(Hidizs AP80)を愛用しているものの、今の所サポートの世話になる事無く過ごせているので実感皆無だが、どうも相当に対応が悪いっぽい。
 その上で、当初飯田ピアノへの不満をぶっちゃけていたSTEケーブルへの同情や、高級オーディオ用ケーブルという趣味人の間でも解釈が分かれ易い話題、実際にSTEケーブルを使用した人間がそれなりの評価をしている事とその妥当性等が相俟って、「果たして何処が、何が、誰が悪いのか?」という疑念に対する一定の答えを見出し辛くなっている印象を受ける。

 あくまでも私見、しかも傍観者ですらない後追いの身の考えとしては、Ferra Generationや飯田ピアノ、STEケーブルから出た声明やSNSのTLを色々見た上で、

・STEケーブルの線材詐称は恐らく事実
・それはそれとして飯田ピアノのSTEケーブル(及びFerra Generation)との対応も結構怪し目
・つーかFerra GenerationはSTEと飯田ピアノの双方からとばっちり食らってません??
・Symphonium Audioは無関係(真顔
・某レビュアーは知らん振り決め込んだなら兎も角、一応返金に応じているので、まあ…
・高級オーディオ用ケーブルはある程度リスクを覚悟の上で買いましょう

 ……って感じ。
 多分、Ferra Generation≒Symphonium Audioは完全に被害者なんじゃないかと…

 基本、積極的に「ユーザーを誤魔化していた」のはSTEケーブルのみであって、その点では飯田ピアノも被害者なのだが、その割にどうも代理店対応が案の定甘かったっぽいと言うか、いまいち同情するに値しない的雰囲気が出てるのよなー…

 他方、件のレビュアーは何とも面倒臭い立場になってるとゆーか。折角製品褒めてたのに実質メーカーから裏切られたようなもんだし、それがまさか高級ケーブルというセンシティブなカテゴリーで生じてしまったから尚更タチが悪い事態になったっつーか。
 率直な話、自分は某氏をオーディオレビュアーとしてはさておき、(SNSから僅かなり透けて見える)個人としては好ましく思ってないのだが、しかし今回の件に関しては「いやはや……何ともお疲れ様(苦笑」という一言が思い浮かんでしまったw こんなケース誰だってやり辛いわい。

 自分はHeliosをポチる際ケーブルというおまけ要素は全然気にせず、あくまでもHeliosが円安下の正規価格よりはずっと値打ちに買える事にこそ重点を置いていた。
 なので今回のSTEケーブル騒動は一頻り盛り上がって治まり始めた?辺りからようやく把握し始めたのだが、……調べれば調べる程「うわこの話辛気臭っ」という感情が募る一方である。オーディオってのはつくづく業の深い趣味よな……(乾笑

 高級?ケーブルは自分も直近にEdition XS用としてNOBUNAGA Labsの霧降を16k弱出して購入しているが、少なくともリケの効果を良い方向に実感出来ているので、諭吉以上を切った事にそれ程後悔は無い。尤も「一般人からしたらドン引きだろうなこの買い物…」とは常々思うが。
 ケーブルによる音の変化そのものを否定する気はあんま無いけど、しかし有り体な話、たかが導線如きの為に相当な金額を突っ込むのは、ある種カルト商法に引っ掛かってるようなもんで、やはり日頃から自分の行為や選択を客観視し続けて踏み止まれるようにしておくべきじゃないかなー、とか。

 一つ気を付けたいのは、仮にお高いケーブルを買ってそれを褒めた後で、実は線材詐称でしたーw、となってもそれを外野が「やーい糞耳乙ww」とか言うのは何か違うと言う事。
 自ら茶化し気味に自嘲するなら兎も角、他人がそうやって馬鹿にして囃し立てるのはただの侮辱なのでまー止めた方が良かろうて。オーディオって感性っつー曖昧なモノに振り回されてなんぼな趣味なので、結果として他人の(特に芸術的)感性にやたらめったら喧嘩売るような行為はなるたけ慎むに限ります。
 ――だが政治経済に対する感性、テメーはダメだ。(良識・教養的意味で

 ……何だか本題であるHeliosのレビューよりも蛇足の方が文章量嵩んできてるので、此処等でいい加減御開きにしとう御座います。(仏頂面

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