久々に引いた大アタリ。元々、あの「黄昏色の詠使い」の細音啓さんの新作だったから結構期待していたのだが、何が何が。一巻読み始めたら手が止まらなかった。
ファンタジー系作品としては極めて王道とも言える流れだが、それをこのようにしっかり巧く描けているところが素晴らしい。
それにしても世界観が中々独特。基本的には王道ファンタジーな感じなのだが、しかしファンタジーで電気文明ってかなり珍しい気がする。
「詠」がキーになる世界、主人公が異端、ヒロインが世界の核に深く関わる存在、って辺りは「詠使い」と同じだが、しかし此方の方が剣戟をメインとしているのでスピード感がある。
何より、「触れたくても、触れられない」というシェルティスとユミィの関係がもう切な過ぎて個人的にツボ過ぎる。思わず背筋がゾクゾクしてしまったw
加えて一巻終盤が反則的。ユトのあの一言から一気に加速してゆく展開はカタルシス抜群。レオンとの再会はかつての友人[ライバル]ならではの掛け合いにニヤリとさせられ、ユミィとの再会は、案の定というか切なさ大爆発状態(←古い)だった。
召喚獣よろしく笑いに特化したコメディは例外として、最近のラノベって萌え萌えなラブコメ&エロコメばかりな感じなので、本作のような王道的シリアス系ファンタジーはホント久しぶりだった。というか久々過ぎてむしろ新鮮な心地すらする。
現在四巻迄読了。「詠使い」譲りの繊細な雰囲気や、しっかりした筋立て、私的にドンピシャなキャラクターたち、読み易い文章、スピード感ある戦闘描写など、かなり楽しめる。特に四巻は、前作との関連性がアリアリでニヤリとした。
ただ一つ不満があるとすれば、少し後味がさっぱりしていることだろうか。尤も、これはつい最近まで「境界線上のホライゾン」や「ウィザーズ・ブレイン」、「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズ、「機動戦士ガンダムUC」といった濃いめだったりリアルだったりする作品(特に境ホラ)を読んでいたこともあるのだろうが……(^^;
他に気にかかる点があるとすれば、…………まぁ、これは作品が悪いのではなくあくまで自分が悪いのだが、ある意味結末がこの上なくハッキリしているせいで、気が急いてしまって仕方が無いということだろうか。無論、此処で言う結末というのはシェルティスとユミィがもう一度触れ合えるようになることである。前作のラストを考えれば悲劇的な結末は先ず有り得ないはずなので、余計に待ち遠しいというか。
しかし、この「想定される結末」がハッキリしているからこそ、物語がしっかりしているのもまた事実で、…………早く結末が見たいような、しかしこれだけ面白いんだから少しでも長く物語を味わいたいような、正直複雑な気分である。
最後に、ふと浮かんだ駄文を以下に。
我ながら厨二病的な気がしないでもないが、自分の感想を凝縮しているので載せてみる。
見上げる天空[そら]に/見下ろす大地に、
想い馳せて/思い焦がれて。
二人、同じ場所にいるはずなのに、
こんなにも、君が遠い。
触れたくても、触れられない。
抱き締めたくても、叶わない。
どうして? なぜ?
こんなにも僕/私の近くに、君はいるのに――
走る光は、拒絶の証。
想い合い、求め合っても、
世の理が、触れ合うことを許さない。
……でも。
「必ず行くよ。今度こそ、塔の一番高いところまで」
――それでも、諦めない。
世の理が阻もうとも、いつか必ず、その手を取ってみせるから。
きっと必ず――――君と並び立ってみせるから。
世界から拒絶された少年と、世界の中心にいる少女が織り成す、重層世界ファンタジー。
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