2020/07/03

平面駆動ヘッドフォン雑感:FOSTEX T60RP ファーストインプレッション

 XD-05 Plusの導入によりオーディオ環境、特に上流部のクオリティアップが為されたのを機に、
「何か新しく、今までは購入をあんま考えてなかった、如何にも『鳴らし難そうな』ヘッドフォンとか欲しいなあ…」
 と、物欲が沸々と湧き上がってきてしまった。最早病気である

 先日XD-05 Plusの感想を記述した際「DT1990PROとか、或いはエントリーでいいからHiFiMANの平面駆動ヘッドフォンとか欲しい」なんて我ながら宣っていた。
 が、DT1990PROは50kを軽々超える高級機で到底手が出せず、HiFiMANのエントリーモデルであるHE400番台は型番の一新により旧型が大幅値下げされていたものの既に在庫が枯渇しており、理由は違えど何れにしろ入手困難という有様だった。

 何か手頃な機種はないものか…、と価格.comや某有名店の通販で平面駆動ヘッドフォンのリストを眺めていたのだが、偶々(安い方の)価格順でソートし直した折に、目に留まった機種があった。
 ソレが今回取り上げる、FOSTEX T60RPである。


 FOSTEX自体はHP-A3を買った時から知っているメーカーだったが、同社のヘッドフォン/イヤフォンを購入するのは今回が初。
 RP振動板なる独自技術を用いた平面駆動機をモデルチェンジしながらリリースしていることも知っていたが、ぶっちゃけT60RPのことはまるで何も知らず、全く意識していなかった機種である。
 しかし気になって評判を調べてみるとコレが中々高評価で、しかも値段が25k(※記事執筆時点)とかなり手頃で入手しやすいと来た。原型機のT50RPと違ってハウジングに木材を使っている為か、写真越しでも中々洒落た雰囲気を漂わせており、また意外な事にT50RPは海外で相当な人気があるらしい。

 ……此処迄調べた所で、最安で捌けているのが毎度御馴染み密林、しかも公式発送なのを良いことに、またもIYHしてしまったのであった。まる。
 御財布の中身は大丈夫ですか……?(震声


 感想を記述する前に、環境等を少々。

・再生環境
 初っ端:デスクトップPC→(S/PDIF→)HP-A3(with MUSES8920D)
 聴き込み:AP80→(USB→)XD-05 Plus(with MUSES03*2)

・再生ファイル
 FLAC44.1kHz/16bit~96kHz/24bit


 さて、人生初となる平面駆動型ヘッドフォンの感想だが――――雑な表現で大変申し訳無いが、取り敢えず一言言わせて欲しい。びっくりするくらい良い音。

 初っ端、HP-A3で試し聴きした時点でめっちゃ驚かされた。所謂解像感と分離感がとんでもない。
 にも関わらず低音が気持ち良く響く。それでいて密閉型っぽい閉塞感が感じられない。高音は軽く刺さるくらいシャープ。中音域もハッキリくっきり聞こえてくる。どうなってんだこのヘッドフォン。

 そんで上流を本命であるXD-05 Plusに変更。…………うわあ何やねんこの鳴りっぷり。表現力がやっばい。多分現時点に於ける自分の手持ちの組み合わせでは最高クラスの鳴り方してる。
 意味分かんない(※褒め言葉です)のは聞こえ方が極めてニュートラルなこと。モニターヘッドフォンであるT50RPを、木製ハウジングの使用等でリスニング寄りにチューニングしたモノがT60RPらしいが、やはりこのニュートラルさはその出自に拠るモノだろうか。
 尤も、手持ちで「モニター」を標榜するヘッドフォンやイヤフォンにはK701やSRH440、HD25 Originals、MDR-EX800ST等があるが、どれを聴いてもT60RP程ニュートラルな鳴り方ではない。上手く表現する事が難しいのだが、T60RPを初聞きした時の衝撃は「音源や上流機器のグレードを上げた時に覚える感覚」のソレに近かった。一皮剥けた音、と言うか。

 アニメやゲームのサントラを中心にクラシック、テクノ、ロック、ジャズ、ポップスなど色々再生してみたが、このジャンルはダメ、ってのは無さそう。只々ド真ん中の良い音で鳴ってくれるので聞いていてとても楽しい。
 だが、特にギョッとしたのはXD-05 Plusの初聴きで使った「String Theocracy」を再生した時。音の生々しさがホント凄く、96kHz/24bitという真っ当なハイレゾ音源と組み合わせると此処迄リアルになるのかと舌を巻いた。

 ……音の感想が大分熱入り過ぎてるので、ここらで一回コーヒーブレイク。

 差し当たっては装着感について。
 T60RPの重量はコード抜きで380gと結構重め。HD25なんかはケーブルとプラグまで含んで166g程しかないことを考えると、コードまで含めて400g以上あるのは結構重量級だろう。
 だがその実、T60RPの装着感は割と良い方だと思う。手持ちのオーバーヘッドで装着感ダントツNo.1は我がファースト・ヘッドフォンであるHD595だと断言出来るが、T60RPはそれに次ぐくらいには付け心地良好。パッドが厚めなおかげで側圧は全く問題無し。眼鏡でも全然大丈夫。
 むしろ気になるのは頭頂部。そこそこ広く当たる為荷重が分散されはするものの、長時間だとちと痛くなってくるかも。……それでもいっぺん付け直すだけでそこそこマシになる辺り、悪名高きK701の凸凹ヘッドバンドなんかと比べたら格段に上等である。(遠目

 見た目や質感。
 ぶっちゃけT50RPのデザインは無骨過ぎるというか正直野暮いというか、そんな好きでは無かったのだが、それがハウジングを木製にするだけでこうも風情良くなるものかと。端的に言って好みの部類。
 付属ケーブルは布巻きの1.5m。かなりクセが付きにくいタイプで中々上等な雰囲気。公式曰く導体はOFCらしい。端子形状は両端共にシンプルなストレート。人によってはリケーブルが捗りそうである。

 付属品。
 3.5mm三極アンバランスケーブルと6.3mm標準プラグ変換アダプター、サラサラした手触りの布製ポーチ。以上。シンプルですな。
 別売品として、交換用イヤーパッドの他、2.5mm・4.4mm・XLRの四極バランスケーブルが存在。当方はバランス出力環境皆無なので当分無関係かな…



 あんま長々書いてもクドくなるんで、取り敢えずファーストインプレとしては此処迄。
 現在XD-05 Plusで鳴らし込み中。エージングで音変わるって声そこそこあるしね。大方ただのプラシーボだろうけど



※追記[200714]:ヘッドフォンカバー「mimimamo」を使ってみた

 季節柄、合皮系のイヤーパッドはどーしても汗ムレっつーか、いやむしろ合皮素材そのものへ汗が侵蝕することによる劣化が気になってしまうワケで。
 替えのイヤーパッド買うのが手堅いっちゃ手堅いが、しかし随分前に買ったSRH440ですら一度もパッド交換せず使い続けてるのに、ついこの間買ったばっかのT60RPで早速スペア手配するのはちょっと…、と躊躇してしまうのは、まあ当然な話っつーか。

 そこで買ったのが、コレ。


 スーパーストレッチヘッドホンカバー「mimimamo」である。

 実は既に家族のヘッドフォン(Fidelio M1)でMサイズを使っているのだが、今回はT60RP用にLサイズを調達した次第。SRH440辺りにも使えるので使い回し利くし、損はせんだろうと。


 んで実際に使ってみた。

 ……………………あ、やべえT60RPとは相性悪いわコレ。


 布地を一枚隔てる影響がモロに出ており、特に低域がブーミー気味になってしまった。素だとかなりタイトで制動利いてるだけに、変化が露骨過ぎて思わず苦笑。
 そんで高域から中域は一応ハッキリ聞こえはするが、伸びっつーか響き方が寸詰まっちまうというか、イマイチもう一歩足らない調子になってしまった。

 特に低域の影響はほんとデカく、カバーの有無でこうも音が変わるなんぞ想像していなかった。ぶっちゃけ誤算もいいトコ。
 夏場の汗ムレを予防するには間違いなく良いだろうが、音の変化が思った以上に大きいので、コスパ的にはちょっと微妙かもしれない…

 しかしこんな薄い布切れ挟むだけで音が激変する辺り、ヘッドフォンってやっぱ繊細に出来てんだなあ…
 だからこそ大切に使い続けたいのに、丁重に保護しようとすると魅力が薄れてしまいかねないという。いやはや、中々ジレンマですねえ……(溜息

(※補足追記[200716]:
 公式のT60RP装着例を見ると、カバーの縁をハウジングとイヤーパッドの間の溝に埋め込んでいる(公式で言う所の「ステルス装着」か?)のだが、それを敢えて止めて、思い切ってハウジングの外縁部辺りまでがぼっと包んでしまった。
 すると生地の張りが強くなったおかげか、低音のブーミーさが随分と治まって高域から中域が大分キレイに聞こえるようになってくれた。ナイスゥ!)

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